石神井公園の風景とエッセイ
石神井公園の様々な物語
石神井公園には、
四季折々の風景があります。
そして、
様々な物語があります。
かつて、私はここの池の畔で、
毎朝7時から、童謡·抒情歌を歌う
池の会に所属していました🎵
それはーーー
私が、不妊治療で辛い時期が
長く続いていた頃のことでした。
私が、石神井公園の三宝寺池の
ベンチでボーっとしていると、
遠くから、美しい歌声が
聴こえてきました♪
♪ わらべはみたり 野なかの薔薇
清らに咲ける その色めでつ
飽かずながむ
くれないにおう 野なかの薔薇~ ♪
その歌声は、
まるで、天使の歌声が
雲の隙間から聴こえているかの
ように聴こえました。
どこから聞こえるのだろう・・・
私はその歌声の聴こえる方へと
歩いていました。
しばらく池沿いに歩くと、
大きな木々に囲まれた下で、
60代位の人たちが、池に向かって、
楽しそうに歌っている姿を
見つけました。
春のうららの隅田川~♪
少し離れたところから、
その人たちの歌を、
何曲か聞いていました。
♪ 春の小川は さらさら行くよ~
岸のすみれや れんげの花に~
~~~~~
♪ 春のうららの隅田川~
のぼりくだりの 船人が~
童謡、叙情歌、
知っている歌ばかりだったので、
自然と口ずさんでいました。
(年代の違う人でも一緒に歌える
日本の叙情歌って素敵だな~)
すると、
そのメンバーの一人の女性が、
笑顔で近づいてきました。
「良かったら、ご一緒にどうぞ♪」
と歌詞のプリントを手渡され、
私をその輪の中へと誘いました。
―――「いいんですか!?」
「一緒に歌いましょう♪」
私はその方々と一緒に、
大きな声で歌い始めました。
大粒の涙の理由
すると、なぜか涙が出てきました。
そして、大粒の涙が次々とこぼれ、
歌どころではなくなりました。
子供が授からない・・・
このままいつまで続くのか・・・
治療中は仕事にも全力で向かえない・・・
いつになったら将来を決められるのか・・・
でも、今は治療が一番大切だし・・・
ずっと我慢していた状態から、
一気に力が抜けたのでしょう。
きっと、新しい人が来た!と、
(みんな私をチラ見で、
注目しているに違いない・・・)
と思うと恥ずかしくて
仕方なかったのですが、
後から後から涙が溢れだし、
止まりませんでした。
何曲か歌うと、
今日の歌の時間が終わったようで、
皆が自然と紙コップを準備し、
お茶やコーヒーを手分けして配り、
お茶&おしゃべりタイムが始まりました。
私は、急いでハンカチで涙を拭い、
みんなが和気あいあい話し始めている
輪に入りました。
神様からのプレゼント
私の父や母の年代の男女ばかり。
涙を見ていたか見ていないか、
(何か訳ありなのだろう…)
と察して下さっていたのか、
皆、優しく、笑顔で声をかけて
下さったのでした。
「お住まいはお近く?」
「良かったらどうぞ!」
と小さなお菓子を配っている人も
何人かいたり・・・
男性も女性も皆さん、笑顔で
本当に暖かい方ばかり。
出口の見えない不妊治療で、
真っ暗な森を歩き続けている中に、
まるでどこかから急に光が
差し込んできたような出来事。
その日のことは、
神様からのプレゼント
としか思えませんでした。