頭の回転が良くて影響力がある
ひろし氏は逆張りをする手法で世の中を斬って、世の中の一部の人には鵜呑みにされるほどの説得力で、影響力と普段ネットを見ない層までの知名度を手にした。
ネット創生記から活動し、一般層の今の社会的認識は『世知に長けた人』『世の中の御意見番』。
ネット界を超えた彼の影響力は思想を誘導したい層には見逃すはずがない存在で、直ぐに目をつけられた。
初期の頃は黒は危険だと主張していたが、ある時から黒は安全で素晴らしく人類の為になると逆の事を言う様になった。
ひろし氏の対話能力の高さや思考力と言語化能力は、黒いものを白だと主張し対面する相手を納得させる事が出来、また逆も言い切ることも容易い事。どちらでも、どんな内容でも必ず存在する未知な部分や曖昧な部分を引き寄せ自分の意のままに正論に仕切って対話を完了できる。
それでも最近は一部の真実を掴んだ層の入手した証拠が多くなり、少し歯切れが悪くなってきてはいるがそれでも対象層にはまだまだ問題なく誘導効果がある。
彼が黒いものを白だと言うようになるほんの少し前の話し……。
彼の元に表には決して出てはこない、力と金のある絶対的な存在の部下からコンタクトがあった。
「ひろしくん、君には子供がいるね?元気に育っているかい?」にっこりと笑っているような笑顔に見えたが彼には脅しだと理解できる観察力や世の中の真実を知るだけの知識があった。
続け様に「日本に帰る時は飛行機利用は家族でビジネス利用なんだろう?」
とも言ってきた。
それ以上の説明はなくてもひろし氏は逃げ場がなく、従うしかないと理解した。
彼に守る家族がいなかったら世の中の真実を暴き民衆を煽りヒーローのようなポジションも悪くないと思ったかもしれない。
実際にはひろし氏には守りたい家族ができていた。選択肢はなかった。
たった一つの真実を公表しないだけであとはいままで通り世の中を批判し続けて良いと言う。
寧ろ批判を強め、さらなる民衆の心を掴むことで黒の偽の白さが強化される。
美味しいものを食べ、家族が安全に安心して暮らす笑顔を見るうちにたったひとつ、黒を白だと言う心苦しさは消えた。
麻痺している感覚も忘れた。
失った大切なものと引き換えに絶大な存在感から重宝され、あり得ない程のこの世の体験も享受させてもらっている。
たったひとつ黒を白だといっただけで…。
ひろし氏がその場しのぎの幸せと引き換えにどれだけの負のエネルギーを受け取ったのかを知り後悔するのは、ひろし氏本人ではないのかもしれない。家系にまでその影響は続く。系譜の業を背負ってしまった。
ほんの少しの救いがあるとするならば、彼の自らの発信の場の元に集まる多数の人々の意見が真実を探る層に届き、プラットフォームや公開掲示板のような役割となっている事。
ひろし氏がその賑わう場を見てどう思っているかは、彼の良心だけが知っている。
おわり。(このお話はフィクションです)
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