生活の建築知識.50
おはようございます。
田舎出身の私が初めて東京の水道水を飲んだ時、それはそれはびっくりしました。
とてもじゃないけど、飲む気にならなかったのです。
その数年後、結局東京に行きたくて上京したのですが、その時は思っていたほど嫌な香りはせずにまたびっくりしました。
自分の味覚がおかしいのかと疑ったほどでしたが、調べてみたら時を同じくして東京都の水道は劇的に改善された経緯がありました。
今では、一応ミネラルウォーターも買ってますが、個人的には全然飲めます。
水が安心して飲めるなんて日本は良い国ですね。
しかし、大元の水質が良くなっても実際に出てくる水に問題があるケースがあります。
今回は水道水に関わる問題とその原因点改善策について説明をしていきます。
そもそも水道水は、各地域の浄水場から水道本管を通って各建物に運び込まれています。
主に排水を下水と呼びますが、水道水を上水と呼び区別されています。
戸建住宅や小規模なビルであれば、水道本管から直接水を送る計画となると思われます。
階数が多い建物や、大型の建物となると水道本管からポンプで高架水槽までポンプアップしたり、水槽に貯めた水をポンプで圧送したりして各世帯に送ります。
最近では圧送するケースが増えてると思いますが、高架水槽もまだまだあります。
ここで水圧が問題となることがあります。
先ほど説明した通り、小規模建物は直接水道本管から圧力のみで水が送られますが、距離が短いため水圧が足りないと言うことは少ないと思います。
しかしマンションなどでは、住んでる場所によって水圧が低くなるケースがあります。
高架水槽を利用している場合、位置エネルギーを利用して水を送ります。
つまり水の落下を利用しているわけですが、当然落差が大きいほど圧力は高まります。
逆に落差が小さい高層階ほど水圧が確保されなくなります。
この場合は正直対策があまりなく、高層階には住まないことや、管理組合などの了承を得られれば増圧ポンプを設置するなどが必要です。
ポンプ設置となると大掛かりになりますので、簡単に進む話ではなくなります。
一方、ポンプによる圧送の場合でも水圧が低い場合があります。
これの理由についてはいくつか可能性があります。
圧送しているポンプ自体は、かなり強い圧力で水を送っています。
しかし、建物の設備能力不足が問題を招くケースがあります。
この場合も改善はなかなか難しく、ポンプ能力を上げるのか、新たに水圧が少ない世帯に対してポンプを増設するのか、やはり簡単な話ではありません。
別の理由として、ポンプの能力は十分ではあるが、各専有部に入る際に減圧弁が付けられており、そこで圧力が下がりすぎているケースがあります。
マンションでの水道圧力は圧送している場合、圧力が高すぎることが多く、専有部でわざと下げるように計画されます。
そうすることで、水圧が足りないということが起こらないようにしているのですが、その下げる装置が減圧弁です。
減圧弁は各専有部の水道メーター付近に設置されていますので、もし水圧が足りないと思ったら減圧弁を操作することで解決する可能性があります。
ただ、減圧弁の操作は管理会社に連絡の上、基本的には管理会社が手配した業者によって実施してもらうようにしましょう。
さらに、これは高架水槽の場合も共通ですが、専有部内の各水栓器具付近には止水栓という部材が付いています。
(生活の建築知識.44参照)
本来は各水栓器具に供給されている水を一時的に遮断するために設置されているのですが、水栓から出る水圧調整にも利用できます。
そのため、止水栓で減圧しすぎている場合がありますので、最初の段階で止水栓を操作することが一番手っ取り早く簡単な改善策となります。
水道の問題として、水圧とは違いもう一点大きな問題となることがあります。
それは配管の材質です。
水道管として利用する配管にはいくつか種類がありますが、住宅においては現在ほとんどが樹脂で作られたものが採用されます。
しかし古い住宅である場合や、マンションなどの複数の世帯に送るための配管ですと金属製が採用されているケースが多く見られます。
マンションの複数世帯に水を送るとなると、配管自体に大きな圧力が常にかかり続けることになるため、樹脂では耐えきれず金属を採用するのですが、古い住宅の場合は理由が異なり、当時は金属が主流であったとことにあります。
今では使われませんが、亜鉛菅が多く使われていましたが、水に亜鉛が溶けてしまうことから使われなくなりました。
現在では鉄管・ステンレス菅・銅管が使われていいます。
しかしここに問題があり、今では当たり前に実施しないのですが、異種金属を利用した配管にしてしまうと錆が生じて、水質汚染を起こしてしまいます。
中学校?で習ったかと思いますが、異種の金属同士をくっつけるとイオン化傾向の影響で酸化してしまい、結果錆が発生してしまいます。
私が仕事を始めた頃には御法度の施工として認知されていましたが、古い物件では度々このような状況がありました。
異種金属配管とは断定出来ませんが、もしお住まいで水に赤みがある場合は、錆が発生している可能性があります。
鉄なので少量であれば人体に対して毒ではありませんが、大量に摂取すると嘔吐や下痢などの原因にもなるそうなので、なるべく早い改善をおすすめします。
戸建の場合でしたら、施工業者に問い合わせてみてください。
もし施工業者とやり取りが出来ない場合は、物件取得時に仲介をした不動産屋、もしくは衛生設備業者に連絡して改善方法をご相談ください。
マンションの場合は、管理会社に問い合わせてください。
もし自主管理である場合は、やはり施工業者、仲介不動産屋、衛生設備業者への連絡となります。
毎日使い身体の内部にも取り入れる水は、日本の優れた衛生管理によって、非常に高水準な状態で利用出来ますが、届く直前に水質を汚染しているのはどんな背景であれ建築業界の失態と言えるでしょう。
今現在施工される衛生設備では異種金属配管はまずあり得ませんのご安心ください。
しかし、鉄管を利用している場合は錆の発生はあり得ます。
ここに関しては建物の管理者が定期的に更新する必要があるため、その管理体制にも注意を払う必要があります。
せっかく世界でも稀な水質を実現している環境なので、最良の状態で利用出来ているか気にかけてもらい、これからも水と良い付き合い方を出来るように維持管理にも心掛けてもらえればと思います。
では、また。