おじさんはなぜ爆損してしまうのか
こんにちは、日本爆損防止委員会です。
当会は、ここ数年でにわかに盛り上がりを見せる株・暗号資産・FX等の金融商品取引により、取り返しのつかない爆損をしてしまう人を無くすことを目的とし、発信活動をしています。
……といつも書いていますが、これは表向きのレーゾンデートルです。これはこれで真なのですが、もう一つの目的として、爆損という現象の真理に迫りたいというのがあります。
爆損の再現性が高すぎる
市場参加者で爆損を経験したことない人はいるでしょうか?
まだ爆損を経験していない市場経験が浅い人はいるかもしれません…しかし、少なくとも裁量で金融商品のトレードを長くやっていて、「ずっとピンチなく順調っす」という人は本当に少ないのではないかと思います。
暗号資産界隈では「新人研修」という非常に的を得た言い方をされますが、ビギナーズラックで利益が出ても、それを上回る損失が遠くない未来に待っているのがお決まりのパターンです。
なぜ人は爆損してしまうのか?
なぜ爆損の歴史は繰り返されるのか?
自然科学、特に物理や化学は再現性に重きを置きます。ある現象が再現される条件を理解することができれば、その現象を応用した発展が見込め、それは人類の進歩につながります。
同様に、爆損の法則を理解することができたらどうでしょう。
爆損を防ぐことができるかもしれません。爆損を防ぐことができれば市場に長く参加することができ、いずれは爆益を持ち帰ることができるかもしれません。
爆損の法則が本当にあるのだとしたら、それは科学する価値があるのかもしれません。爆損を科学するのであれば、まず爆損の定義から始めなければなりません。
爆損は主観的な部分が大きいため、取り敢えずこの記事では雑に、
「金融商品のトレードで自分の資産に対し相当な割合の損失を出し、メンタルに著しく悪影響が出ることで、チャイナショックおじさんみたいな表情になってしまう」
と定義(?)しておきます。
爆損しているのは誰か
先ほど載せたチャイナショックおじさんは、爆損の象徴的存在と言っていいでしょう。リーマンショックのときも、たくさんのおじさんの悲哀を見た気がします。
Xをやっている方は、目を閉じて、性懲りもなくトレードで爆損を繰り返している人を思い浮かべてください。
…どうでしょう。思い浮かぶのは、何かしらのおじさんではないでしょうか。トレードに関わらず、おじさんは爆損しやすい印象です。
ギャンブルで爆損、嬢に貢いで爆損、ハニトラに引っかかって爆損、不摂生がたたって病気になって爆損、一国一城の主になりたくて会社を辞めて起業してうまくいかなくて爆損etc…。
そこで本記事では、おじさんであることは、金融トレードにおける爆損のリスクファクターであるという仮説を検証していきたいと思います。
おじさんとは
ここで言うおじさんとは、親戚の叔父さんのことではなく、ある程度の年齢の、中高年男性のことを意味します。だいたい30代中頃から60歳代前半までくらいでしょうか。
おじさんはお金にとても興味がある傾向があります。
この記事はマケデコアドベントカレンダー2024に属しているのですが、筆者はかつてマケデコのオフ会的なのに参加させていただいたことがあります。参加者は男性100%、そのうち60%以上はおじさんだった気がします。
本屋で株の本を熱心に立ち読みしているのも、だいたいおじさんです。
株、暗号資産、FX等のオンラインコミュニティに常駐しているのも、だいたいおじさんです。
会社の飲み会で居心地悪そうにしてたのに、株や不動産の話になると急に饒舌になるのも、だいたいおじさんです。
おじさんはトレードで儲けたい生き物のようです。
トレードというのは自分の資産をリスクに晒し、リターンを得るものです。
おじさんはリスク思考なのでしょうか。確かにパチンコ、競馬、競艇などのギャンブルもおじさんは好きな傾向があります。
ギャンブルと爆損は切っても切れない関係ですが、そもそもどうしておじさんはビクトリーロードとは真逆の、爆損へと繋がる方へ突っ走ってしまうのでしょうか。
大逆転を夢見るおじさん
おじさんは人生の折り返し地点におり、前半戦の結果から、おおよそ後半戦がどうなるか良くも悪くも見えてしまっています。
サッカーでは前半に0−2で負けていたけど後半逆転した、などということもありますが、仮に前半で0−10で負けていたら、後半はもうほぼほぼ絶望しかないわけです。
おじさんは誰と戦ってんの?という話ではありますが…兎にも角にも人生の前半戦が終わって後半戦に入ってしまうと、
「あいつと俺はどこで差がついたかなぁ…高校入ったときは一緒やったのに…」
などと周りとあれこれ比較してしまって、もう大逆転、これしかワイの人生ないんやと思ってしまう。
こうなったおじさんは、理性的な期待値の計算なんてできないです。
特に独身で仕事をしている場合、人に誇れるほどではないが生きていけないほどではない程度の貯金があることが多く、大逆転の道筋が描けようものなら(妄想なのですが)突っ込んでしまって爆損してしまいます。
「大逆転」を夢見るおじさんはカモになりやすいです。
おじさんがショート(空売り)してしまうのも、時間を味方に若い頃からロングを積んで含み益で人生ウハウハに見える「許せないやつ」をやっつけたいからです(もちろんほぼ返り討ちに合います)。
狩る側からしたらこんなに容易い獲物はありません。おじさんが夢見る大逆転をほのめかしてあげれば、理論期待値に(あえて)目を瞑ってお金を突っ込んでくれるのですから。
ここまでは目新しい話でもなかったかもしれません。もう一つ、生物面からおじさんを見てみましょう。
男性消耗品仮説
おじさんはすべからく男性です。
ここからは、「全ての男性は消耗品として生まれてくる」という仮説を元に話を進めます。この仮定をおくことで、男性の人生の折り返し地点であるおじさんへの解像度を上げることができます。
ミツバチのオスは春の繁殖期に生まれ、秋に女王蜂と交尾をし、そのまま死んでいきます。働きバチ含む巣の9割はメスであり、オスは子孫を残す以外の役割は認められていないようで、子孫を残せなくても冬には巣から追い出されて死ぬそうです。働かなくて邪魔だから。
オスは子孫をつなぐ以外の役割を期待されておらず、その役割が果たされたらメスの邪魔にならないように死ねというのは、ミツバチ社会において、オスが消耗品として消費されていると見ても差し支えないと思います。
もちろん我々はミツバチではないのですが、同じ地球に住む生き物として、一定の共通項を有しています。
男性は女性より死にやすい
人間の話をしましょう。
全てのライフステージにおいて、男性は女性よりも死亡率が高いと言われています。
これはよく知られていることですが、日本含め一般的に、出生男女比はおおよそ男 : 女 = 105 : 100であり、男の方が数%多いです。
しかしながら、たとえば日本の自殺者数の分布を見てみましょう。
少なくとも過去10年弱、どの年も男性の自殺者数が女性の自殺者数の倍近くになっています(左図)。令和4年の年齢別分布(右図)を見ても、どの年代でも男性の自殺者数の方が女性の自殺者数よりも多いですね。
特におじさんと呼ばれる年代においては、残酷とも言えるほど顕著に男女差が出ています。
男性と女性が同様の自殺耐性を有しているならば、せいぜい比率は出生時と同じく105 : 100程度になるはずです。しかし、女性の倍近くの男性が自殺しているということは、男性は女性に比べ遥かに死にやすいことを示唆していると言って良いでしょう。
生活習慣病やがんなども、男性の方が死にやすいイメージはあると思います。タバコ吸いすぎて肺がやられるとか、酒の飲み過ぎで肝臓がやられるとか…。その通りで、男性は病気でも死にやすいのです。
平均寿命を見てもそれは明らかですね。どの年でも女性の方が男性よりも平均して5年ほど長生きで、健康寿命も平均して3年ほど長いです。
男性は力強く、たくましいイメージがあります。しかしこれはどちらかというと攻撃力であり、ポケモンでもそうですが高い攻撃力は必ずしも高い防御力を意味しないです。
男性が女性より死にやすいのは、ミツバチと一緒で、役割を果たしたらさっさといなくなってほしいからだと考えられます。
男性は女性より命が軽い
では人間の男性に求められている役割とはなんでしょうか。
例えば、戦争で死ぬのは主に男性であることが多いです。優先的に徴兵されるからです。
軍隊、消防、警察などはもちろん、高所の建設作業も含め、危険が伴う仕事の多くは男性に割り当てられがちです。米国だと、労災で死亡した人の90%以上は男性だそうですが、日本でもおそらくそうでしょう。
この傾向は、人間の祖先が採集狩猟民族であったことを鑑みると自然です。
大型動物の狩猟は男性に割り当てられていたといいます。当然ですが、大型の狩猟はリターンこそ大きいものの、命を落とすリスクも大きいです。
人類史の始まりから、男性は大きなリターンのために自らの命を犠牲にしてきたのですね。
女性からすれば、というか人間という種から見れば、集団の中の一定の割合の男性が狩りで死んでしまっても、結果として大型動物の狩りが成功し、生き残りが肉を食えて毛皮で冬を越せれば全然ペイするでしょう。
ある程度の数の男性の犠牲は、種の保存という観点で許容できる損切りなのです。
男性は女性より圧倒的に余っている
ミツバチの話と、狩猟の話で、「じゃあ人間も男は生殖だけ、女は狩猟女と女王でトータル男女比1:9にすればええやん」と思われる方もいるかもしれません。
そういう方向性もあったかもしれないですが、人間の女性は出生比以上の希少性を有しているのです。それは性成熟期と関係しています。
まず、男性は70歳になっても精子を作ることが可能です。
一方、女性が妊娠可能なのは一般的に40代前半までと言われています。
つまり、確かに出生数としては男女比105:100かもしれないけれども、人間社会の中で、精子を作れる男性の総数と、妊娠可能な女性の総数の比率はどうか?で考えると、圧倒的に男性過多なわけです。
しかも、ウサギのように妊娠中に妊娠できるような構造に人間の女性の身体はなっていないです。一度妊娠したら出産まで280日、40週程度かかります(ウサギは1ヶ月程度)。
ということで、実際は年齢で見る以上に妊娠可能な女性の総数は少なくなるため、圧倒的男性過多という状況が恒常的にキープされるような仕組みになっています。
そのため、人間社会では特に若い女性は大切にされることが多い一方で、男性は雑な扱いを受けることが多いかもしれません。部活の合宿で、男は雑魚寝な!みたいな…。
そうした状況はなんとなく社会の構成員に伝わるもので、女性の方が自尊心というか、自分を大切にする気持ちを持ちやすく、男性は(SNSなどで)イキがってはいるものの内心自分に自信がなく、何か(爆損など)人生でつまずくと一気に折れてしまう傾向があるような気がしています。
男性はアルファになりたい
ミツバチ社会に比べ、一見、生殖可能な男性を余らせている人間社会。
大きなリターン(大型動物を仕留める)を比較的小さな損失(一部の男性の犠牲)で達成する以外に、このモデルには種の保存という観点でもう一つ強力な利点があります。
男性同士の競争を煽ることができるのです。
日本最古の物語は、諸説ありますが、竹取物語であると言われています。かぐや姫ですね。
ご存知だとは思いますが、ざっくりまとめます。
美しい女性に翻弄される男性の姿が鮮やかに描かれており、男の性の哀れを感じずにはいられません。
男性として生まれた以上、当たり前ですが、狩りで死ぬ側、子孫を残せない側には入りたくないわけです。
そして女性としても、子孫を残す相手は誰でもいいわけではなく、なるべく優良の、選抜された男性であるに越したことはないわけです。
自然と、男性は熾烈な競争に身を置くことになります。
そうして、男性は(意識的にせよそうでなにせよ)アルファになることを目指します。アルファというのは、サル山の頂点に君臨するオスです。
消耗品として生まれ育った男性も、アルファになれれば話は別です。
食べ物や女性といった生物的な欲求を優先的に通せるようになりますし、自分のサル山で起きるあらゆることにコントロールが効くようになります。
アルファになるには競争に勝つしかありません。
かつて、男性には狩猟で動物を取ってくることが求められましたが、今は良くも悪くもそういう時代ではありません。
貨幣が誕生し、資本主義、つまり金を中心に社会が回るようになってからは、男性には金を稼ぐことが求められるようになりました。
かつて命を懸けて動物を狩っていたように、現代では命を懸けて金を稼ぐようになりました。
この、男性同士の競争を促進するモデルは、人間社会の発展に大きく寄与してきたことでしょう。
歴史上の高名な科学者・発明家の多くは男性です。音楽家、料理人、画家もそうでしょう。これは別に男性の方が女性よりも優れているとかではなく、単純に競争によってより良いものが生み出されてきたということではないかと思います。
女性の教育機会が男性と同等にあり、女性が男性を巡って争わなければならないような種で仮にあったとするなら、世界を変える科学者・発明家・芸術家のより多くは女性だったのではと想像します。
男性の競争は終わらない
競争は一部の勝者と、多数の敗者を生み出します。
サル山でもそうですが、アルファは集団で1人だけです。
幸い現代社会は多様で、学校や会社や家庭など無数のサル山があり、そこで様々なゲームが開催されています。
全てに勝つ必要は全くなく、人生の中でなんらかの競争に勝った経験のある男性は、その成功体験を胸に男性としての自信を持ち、めでたく女性を得ることができることが多いかもしれません。
というのは、これまた幸いなことに日本含め多くの国では結婚という制度があり、一夫一妻制であるため、かつてのようにアルファが女性を総取りすることが社会通念上、デフォルトではないからです。
一方で、残念ながら、競争に負け続けたり、あるいは、そうでなくともずっと競争に勝ち続けていたのに、あるとき大事な競争でひどく負けてしまったりすると、競争自体に疲れ果ててしまって人生の後半戦も競争に参加し続ける気力を失うことになります。
人生の後半にまで競争せんでええのに…と思いますが、現実は厳しく、その時点で競争から降りられるのは、若い頃に競争にすべからく勝ってきた男性だけではないかと思います。
ほとんどの男性は、まだ人生で勝ち取らないといけないものがあったり、より多くのもの、より良いものを勝ち取ってくるように求められてしまうでしょう。
そのため男性は、おじさんになって人生後半戦に自身の夢や希望が見出せないがちです。
絶望して自ら命を断つまでいかなくとも、寿命を犠牲に酒やタバコの一時の快楽でストレス発散したり、自分が確実に「勝てる」相手である子どもや若い女性を攻撃して憂さ晴らしをしたり、他人の人生をことあるごとに否定したり、ギャンブルに自らの天命を見出したり、とにかく周りから見ると狂ったように思われることを色々始めます。
より自己中心的になり、あたかもアルファになったかのように振る舞ったり、周りにそのように扱われることを求めたりします。
自分を欠陥消耗品だと認めることは辛すぎるのです。
大逆転狙いの、期待値無視、爆損トレードもそこから生まれます。
競争で勝つには気の遠くなるような努力が必要ですが、トレードで1発大逆転というのは、そんな努力している、努力してきた勝者の、時間、人生を否定できる点で甘美です。
トレードは、人生で何も積み上げてなくても、運さえハマれば、イケそうな気がするんですよね(気のせいなのですが)。
そして、一世一代の幸運がこのトレードに回ってくる、いや回ってこないとおかしい気がしてしまうのですよね…なぜなら今までずっと「不運」(本当は努力不足なだけですが、おじさんはずっと運のせいにしている)だったのですから。
典型的なおじさんの爆損プロセス
いままでの内容をざっくりまとめました。
男性として生まれる
--> 競争に敗れ続けたり、大事な競争に敗れて、競争に疲れ果てる
--> 人生の後半戦に自信がないおじさんになる
--> 大逆転(勝利)を夢見てトレード(ギャンブル)
--> 狩られる
--> 爆損
終わりに
このトピックは無限に書けることがあるのですが、既に長いのでこの辺りにしておきます。
最後になりますが、この記事はおじさんがなぜ爆損しがちなのかを理解することが目的であり、特定の男女平等云々やジェンダー論に興味があるものではありません。女性を持ち上げたり、男性を貶める意図はありません。
むしろ、私は全てのおじさんは勝ち組であると思っています。消耗品として生まれ、大切にされたり愛される経験をほとんどすることなく、あらゆる場面で競争して疲弊し、病気にも弱く、女性に比べて遥かに死にやすいのに、文字通り40年近くまだ生き残っているわけですから。
そうです、まだ戦いは終わっていないのです…!大逆転して勝ったらみんなのヒーロー、夢を諦めたらそこで試合終了ですよ…!?
<ここに海外取引所のリファを貼って億る>
…煽りはさておき、もし爆損してしまっても本当にまだ終わりではありません。この記事では触れませんでしたが、爆損は連鎖する性質があるため、次の爆損を避けるために失敗から学び、意識的に謙虚でいる必要があります。
長い記事でしたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。次回、第2弾、孤独な人はなぜ爆損してしまうのか(仮)でお会いしましょう。