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【2024版】勤め先選びで爆損するなかれ(「情報通信・サービスその他」編)

こんにちは、日本爆損防止委員会です。

当会は、ここ数年でにわかに盛り上がりを見せる株・暗号資産・FX等の金融取引により、取り返しのつかない爆損をしてしまう人を無くすことを目的とし、発信活動をしています。

2024年第1発目の本稿はいきなり金融取引関係ないのですが、投資や投機をしていなくてもあらゆる人が関係のある話、会社選びの話をさせていただきます。


会社員は勤め先によって爆損しうる

私自身は今でこそ会社員をしていますが、20代のほとんどを薄給多忙のアカデミアで過ごしていたこともあり、当時、金融資産は全く持っていませんでした。

一方、私の兄弟は大学卒業後、日本の超高収益企業に就職し、毎年上がり続ける給料と国内屈指の高額なボーナス、そして積み立てている自社株の天井知らずの上昇の恩恵をおおいに受け、20代としてはかなり恵まれた金融資産を手にしました。OMG

もちろんはっきりした夢や目標を持って、官公庁、アカデミア、スタートアップやベンチャーで働くのは素晴らしいことです。日本経済の衰退は多くの日本人が起業家精神を失い、リスクをなるべく取らないサラリーマンが多数派になってしまったことと無関係ではないでしょう。

しかしながら、もし貴方の心の片隅に

お金に困らず、安定した暮らしをしたいマン

がいるのであれば、あえて赤字企業、衰退企業、負け戦をやってる企業で働く意味は全くありません。

やりがいと給与を二項対立ではなく不可分と考えるのであれば、給料やボーナスの水準が高く、そしてそれが毎年上がり続ける会社を狙って就職しようというのは理にかなっています。

「面接中に話が弾んだから…」
「最初に内定が出たから…」
「親も知っているネームバリューがある会社だから…」
「人事の女性が可愛かったから…」
「先輩社員がイケメンだったから…」

この記事を発見しお読みいただいている貴方は優秀で引く手数多だと思います。ですからこんなしょーもない理由で勤め先を決めてはいけません。赤字衰退会社に入ってしまったが最後、転職するまで最低でも数ヶ月、もしくは数年の貴方の貴重な時間、つまり貴方の人生にふさわしいキャリアと金融資産を築くチャンスをドブに捨ててしまいます。

赤字なので給料は上がるどころか下がり、ボーナスは出ず、自社株は下がり続けるからです。

一方、もし増収増益黒字優良企業に勤めていれば、貴方の給料・ボーナスは(よほどパフォーマンスが悪くない限り)査定のたびに上がり続け、自社株を買っていれば株価上昇の恩恵も受け、恵まれた福利厚生の中で、安定した人生の基盤となる成功体験に満ちたキャリアと金融資産を築くことができるでしょう。

そうです、もし貴方が複数社内定を取れるほど、引く手数多の優秀な人材であるにも関わらず、あえてテキトーな理由で赤字衰退企業に入社してしまうのなら、それはもう自ら爆損を掴みに行っているようなものです。

定量的なデータを使って勤め先候補を調べよう

住む家を決めるとき、多くの人は住まいの定量的なデータ(広さ、場所、間取り等の数字)を検討し、実際に内見して自分に合うかを加味して最終決定をしていると思います。

定量データ50%、フィーリング50%くらいでしょうか。

しかしながらどういうわけか、会社選びでは定量データ3%、フィーリング97%くらい、ほぼフィーリングだけで勤め先を選んでしまう人が多すぎるように思います。

誰だってモテたいのでネームバリューが気になるのはよくわかります。ただ、そういった会社は一昔前の威光を反映しているだけかもしれません。

特に日本では、新卒採用時の給料はどの会社もどんぐりの背比べのことが多いため、給与が意思決定ファクターになりにくく、なんとなくで変な会社に入ってしまった結果、若い貴重な時間を爆損を掴むことに費やしてしまう悲劇の新卒が後をたちません。

これは新卒の方々にとっての爆損であるのみならず、マクロで見れば日本国の爆損です。この人手不足の昨今に若い貴重な労働力を成長事業に振り向けず、ただドブに捨てているのですから。

この状況を打開するには、求職者側が客観的なデータをしっかり参照するしかありません。採用側は「人事に可愛い女性を配置する」「爽やかイケメン先輩と面談を組む」「寿司を奢る」等、求職者の生物的脆弱性を突くことで、客観的で定量的なデータに即した意思決定を妨害してくるかもしれません。しかし、長い年月をかけて進化してきた大脳皮質を持つ人間である以上、そこに屈してはいけません。

特に上場企業であれば、年4回決算があります。客観的、かつ定量的である決算データはいわば企業版通信簿です。これを分析することで、少なくともその会社が優良企業かどうか、競合他社に対してどれくらい優位性があるのかは見えてきます。

本稿では、上場企業の多くが分類される「情報通信・サービスその他」のセクターに属する企業の決算情報を定量的に分析することで、特に(一般的に引く手数多の)ITエンジニアの求職者の適切な会社選びをサポートすることを目指します。

株価・決算データの定量分析

これから示すグラフは、出典があるものを除き全て筆者が独自に作成したものです。

勢いのある産業か?

まず、「情報通信・サービスその他」のセクターは勢いのある成長産業なのでしょうか?会社選び以前に、衰退産業に入ってしまったらその時点で築けるキャリアや金融資産はたかが知れてしまいます。

去年(2023年)の情報通信・サービスその他セクターETFのリターン(騰落率)と、市場平均としてTOPIXのリターンを比較してみましょう。
以下plotしているのは累積リターンで、青がTOPIX、緑がセクターETF、赤がその差(Spread)です。

TOPIXとセクターETFのリターン比較

TOPIXにセクターETFが負けていますね!結構ガッツリ負けています。
去年だけのデータではありますが、市場平均に負けているわけですから、少なくとも勢いのある産業ではないかもしれません。

ITが求められるのは今や情報セクターだけではないので、もしもIT業界で燻っているのであれば、他に勢いのある業界にチャレンジしてみてもいいかもしれません。

売上・利益は出せているのか?

日本の株式市場には、ざっくり企業規模別に「プライム」「スタンダード」「グロース」に分けられます。
「情報通信・サービスその他」セクターの決算データ(2023年当期純利益)を集計したところ、黒字率は以下のように

プライム > スタンダード > グロース

と企業規模順に収まりました。2023年は全体的に企業業績が好調だったこともあり、概して黒字率は高いですね。

各市場の黒字率

よほどの理由がなければ、こんな全体で景気がいいときに赤字ぶちかましてる企業に飛び込むのは、再検討の余地があるかもしれません。

もう1つ、こちらは単純に当期純利益 (Profit)を横軸、売上高 (NetSales)を縦軸に、データを取得できた「情報通信・サービスその他」1,204企業をマッピングしたものです。
赤がプライム、青がスタンダード、緑がグロースです。

売上高と当期純利益

こう見ると、やはりプライム企業(赤)の売上高はすごいですね。実は企業によってあまりにも売上に差があるため、縦軸はlog scaleにしています。

ただし大事なのは横軸の当期純利益ですね。売上から諸経費を引いたものですが、この利益を積み上げられる会社が成長している会社です。
利益が5,000億円超えている化け物みたいな会社(N社)が右上にありますね。

化け物みたいな利益を出すプライム企業

前年度の決算と比べてみると、この会社ってこれでも減収減益なんですよね…圧倒的存在です、日本の宝です。会社選びではフィーリングベースでどっこいどっこいだったりすることが多いと思いますが、当期純利益だけ見ても会社によって非常に大きな差があることがわかります。

圧倒的赤字企業も

4,000億円近い赤字をぶちかましている会社(R社)もありますね…。

貴方は自分が勤める会社がこの図のどこにいてほしいですか?

そういった視点で会社選びをするのも、フィーリングだけにならずいいかなと思います。

稼ぐ力は?財務の健全性は?

生の売上と利益を見るのもいいですが、企業の稼ぐ力をより標準化された形で定量化するために、ROA (Return on Assets: 総資産利益率) を見てみましょう。
ROAは以下のように、資産に対する当期純利益の%として計算されます。資産をどれだけ有効に活用して、利益を作っているか、すなわち企業の稼ぐ力を標準化した形で定量している指標です。

https://doda.jp/companyinfo/contents/finance/013.html

我々の給料は企業の稼ぎから来ているわけですから、企業の稼ぐ力は高い方がいいですよね。

また、企業の財務健全性を図る指標として、自己資本比率を見てみましょう。自己資本比率は、負債含む全体資産のうち、純資産が占める割合です。

https://doda.jp/companyinfo/contents/finance/009.html

貸借対照表に見慣れない方は、負債が資産であるというのは最初よくわからないですよね….。会計上、負債は返済の必要がある他人資本として、資産として計上されます。

自己資本比率が高いということは、金融機関等に返さなければお金の割合が少なく、財務が健全であると言えます。50%を目安にしている方も多いでしょう。

以下は、横軸にROA、縦軸に自己資本比率をとって「情報通信・サービスその他」の企業をマッピングしたものです。

ROA vs 自己資本比率

ROAは5%を超えると優良と言われますが、プライムはもちろん、グロース企業でもROAが高く、自己資本比率も50%を超えている会社がそれなりにあるんですね!こういった会社はもしかしたらネームバリューが低く検討外だったかもしれませんが、存外狙い目なのかも知れません。会社の成長のため配当を出さないところも多いので、従業員を大切にしてくれる可能性もあります。

逆に、入社しようとしている会社が赤字で自己資本比率も低い場合、本当にその会社でいいのか一考の余地があります。

本業で儲けられているか?

稼ぐ力をROAで定量していましたが、例えばIT企業が不動産を持っていて、そこからの賃料でIT以上の利益を上げているかもしれません。もしかしたら本業自体は赤字だけれども、金融取引等の黒字で補っているのかも知れません。それはそれで会社経営としてはいいのかもしれませんが、成長する会社というのはやはり本業が伸びていないといけません。

本業で稼ぐ力を定量するため、営業利益率を見てみましょう。売上高から、売上原価と販売費及び一般管理費を引いたものの割合です。

https://biz.moneyforward.com/accounting/basic/44779/

ROAを横軸、営業利益率を縦軸にとった図を見てみましょう。基本的には正の相関が見て取れます。

ROA vs 営業利益率

ごく少数ですが、ROAがマイナスなのに営業利益率がプラス(図左上)だったり、ROAがプラスなのに営業利益がマイナス(図右下)の会社もありますね。
図右上に位置する企業は、少なくとも2023年においては優良企業といってよいでしょう。以下の切り抜きでハイライトした2つの企業は、超優良企業として取り上げて差し支えないと思います。1つはM&Aを仲介するM社、もう1つはVTuberでお馴染みのA社でした。

高ROA高営業利益率企業

決算から見る働きたい企業ランキングTOP100

以下の5つのポイントの合計でランキングを作りました。

  1. 「売上成長率」:過去5年で何回増収があったか (0 ~ 5回)

  2. 「利益成長率」:過去5年で何回増益があったか (0 ~ 5回)

  3. 「稼ぐ力」:直近ROA (6分位: 0 ~ 5)

  4. 「本業で稼ぐ力」:直近営業利益率 (6分位: 0 ~ 5)

  5. 「財務健全性」:直近自己資本比率 (6分位: 0 ~ 5)

どの指標も高ければ良いです。

投資判断をしたいわけではないので、PBRなどの割安指標や、配当利回り、配当性向といった指標は考慮に入れてません。あくまで、こういう会社で働いたらキャリアも金融資産も爆益が期待できるであろう会社を選ぶことが目的です。もちろん「情報通信・サービスその他」セクターに属する企業限定です。

注意点としては、こちらは客観的なスコアリングではありますが、ここでハイスコアの会社に入ることが誰にとっても正解かというと、もちろんそういうわけではないということです。

こういった客観的に優良な企業は、極めて優秀な社員が極めてハードに働いている結果であることも多々あり、もし貴方がキャリアや金融資産を築くよりも、ホワイト企業でのんびりしたいマンであればもしかしたら不向きかも知れません。ただ、明らかに強すぎる競合(GAFAMなど)がいて、もううちじゃ絶対太刀打ちできないよねという空気が社内に蔓延しているような衰退確定企業の場合、何をやっても無駄なので誰もがんばろうとせず、ただ市場シェアは減りつつもまだある程度の収益はあったりすると、結果的に(退廃的な)ホワイトな社内環境が実現されていることがあります。そういった企業にもし興味がある場合でも、決算データを分析することで見つけやすくなるかなと思います。

以下の会社実名が含まれるコンテンツは有料ですが、株式投資のためのデータを出しているWebサイトは多数ありますので、そういったところを見てご自身で集計されても同じような結果は得られるかと思います。

本稿としては、求職者の貴方に上場企業は企業の通信簿ともいえる決算データを公開しているのだから、その定量的なデータを見て会社選びの参考にしようというメッセージが伝われば嬉しいです。

こういった定量的な分析をしていくと、企業に対して興味や疑問が出てくると思います。そうなったら不動産で内見に行くように、HPに行ってIR情報を見たり、選考の中で雰囲気を掴んでいって、解消していくことができるでしょう。

もしすごいいい企業が見つかって、残念ながら選考に落ちてしまっても、昨今は転職も盛んです。再チャレンジの機会は必ずありますし、その会社の株を買ってみてもいいでしょう。その会社が貴方の金融資産のために働いてくれます。

それでは無料パートはここまでです、会社ランキングと投げ銭勢以外の方は、次回の記事でまたお会いしましょう。

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