「堕天の騎士」第1話
悪魔のような異形が悪魔の死体の山の上で叫ぶ。周りに立っているのは数人の人間(ライチ、サエ、ジン)のみ。
異形「グギャアアアアアアアア!」
ジン「サエさん前衛は任せた。隙さえ作ってくれれば渾身のレーザーで頭を撃ち抜こう」
サエ「ハッ、アタシが頭を落とす。アンタは目眩ましでもしてな。さて、来るぜ」
異形が跳躍。サエに向かって槍を突く。
ライチ「ダメ!」
それをライチが庇う
暗転
『大災害。15年前に起きたそれは人類の3/4を死へ誘った。悪魔と呼ばれる存在が突如として襲来した』
カナタ「ふぅ、腕立て200回終わり、と。次はランニングか……」
小さな部屋で汗を拭くカナタ。二段ベッドの上からモブが起き上がる。
モブ「お前、まだ諦めねえのか? 守護天使と契約できなくてもう何年だよ? いい加減諦めろって」
カナタ「はは、アドバイスありがとう。でも、まだ諦められないんだ。じゃあ、行ってくる」
部屋を出るカナタ。
―――
ランニングをするカナタ
『そして俺の両親もまた大災害の犠牲者。その時俺は悪魔への復讐を誓った』
カナタ「まあ、少しだけ食らった瘴気のせいか体力が全然つかないんだけど。契約してくれる守護天使もいないし……」
『騎士訓練所に通い始めて6年。本来3年程で騎士になれるところを俺は3年もオーバーしている』
カナタ「さてと、帰るか。明日は騎士の認定試験。俺は受験資格さえないが見るだけでも勉強になる。睡眠はしっかりとらないと」
元来た方へと走るカナタ。
―――
グラウンドにて、訓練生たちが並ぶ中、教官が前に立って話す。
教官「さて、今日は実際に悪魔と戦っている騎士との実戦試験だ。契約を済ませている訓練生しか参加はできないが、見学するだけでも大きな学びになると思う。しっかり見て学ぶように」
各自訓練生がグラウンドの端に向かい、一部の訓練生がグラウンドに残る。
教官「今日来てもらったのは花の騎士、来栖(くるす)ライチ。真実の騎士、長山(ながやま)シンジ。この二人だ」
ライチがカナタに軽く手を振る。ムッとするカナタ。
教官「事前に決めた3人でチームを組んでもらい、戦ってもらう。相手は現役の騎士だ。勝ちは望んでいない。各自の動きで評価する、以上。では最初の3人、前へ」
ふと訓練所の塀を見るカナタ。そこには今にもライチに向かって瘴気を射出せんとする小型の悪魔が。
カナタ(なんで悪魔がこんなところに! それよりも今は……!)
ライチへと駆け出し突き飛ばすカナタ。背中に瘴気が降りかかる。
カナタ「ぐぁっ!」
カナタの背中に瘴気が降りかかり、服は溶け、背中は焼け爛れる。
カナタ(背中が焼けるように熱い……死ぬのか、俺は……?)
ライチ「カナタ君!? なんで私なんかを庇って! 私は花の騎士でカナタ君は契約もしてない! 一番食らっちゃいけない存在なのに!」
薄れゆく意識の中でライチの声が聞こえる。
???<生きたい?>
謎の声が頭に響く。
カナタ(なんだこの声……誰だ?)
???<質問に質問で返すのはマナー違反よ。生きたいの? 復讐をするんじゃないの?>
カナタ(当たり前だ……! 何年訓練してきたと思ってる! 両親の敵を討つためならなんだってするさ!)
???<いい心構え。私と契約、してみる?>
カナタ(契約……? まさか守護天使……!?)
???<その通り。契約内容は、週に1回、誰かを殺すこと>
カナタ(殺人、か……)
???(あらごめんなさい。同族殺しは人間でも禁忌でしたわね。安心して。悪魔でもいいわ>
カナタ(それならいくらでもやってやる。ところで、お前は強いのか?)
???<もちろん。その辺の悪魔なんか目じゃないわ>
カナタ(分かった。契約、してくれるんだな?)
???<もちろん。これからヨロシクね>
カナタ(ああ。ところで、お前の名前は?)
???<ルシファーよ。あ、でも他の人には黒の守護天使と言いなさい>
カナタ(どうして?)
ルシファー<私は悪魔と似た力を持っているの。変に疑われたくはないでしょう?>
カナタ(……分かった。黒の守護天使だな)
ルシファー<それじゃあ傷を治すわ。サービスよ。万全の状態にしてあげる>
カナタの背中の傷が急激に治る。
起き上がるカナタ。
ライチ「カナタ君!? 大丈夫なの!?」
カナタ「ああ。ごめん、心配かけて。俺、契約したんだ」
ライチ「契約!? 何の守護天使と!?」
カナタ「その話は後だ。悪魔はどこに?」
ライチ「塀の向こうに……もしかして、倒しに行くつもりなの?」
カナタ「もちろん。そのために今まで努力してきたんだ。念願の契約を得た今、使わないでどうするんだよ」
ライチ「力を使う訓練もしてないのに無茶よ! 他の騎士もいるし、任せておけば……」
カナタ「試したいんだ、力を。相手は小型だろ? ちょうどいい」
ライチ「それはそうだけど、一体だけとも限らないのよ!」
カナタ「大丈夫、そんな気がするんだ」
言うや否や跳躍して塀へ上るカナタ。
カナタ「これが騎士の力……とんでもないな。で、悪魔は……アレか」
遠くに数体の小型悪魔を見つけるカナタ。そこへ向かうシンジも見える。
カナタ「よし、行くか」
凄まじいスピードで走り、悪魔の元へ辿り着くカナタ。
手を空中に出すと、赤い宝石が3つ埋め込まれた槍が出現する。
そのまま槍を小型悪魔に突き刺すカナタ。
カナタ(手に馴染む……まるで、物心つく前から触ってたみたいだ。体の一部のように操れる。それに、)
カナタ「脆いな」
2体目の小型悪魔を撃破するカナタ。
そのまま4体の小型悪魔を倒すカナタ。
遅れてシンジがやってくる。
シンジ「君が、やったのか?」
カナタ「あ、はい。これ、弱い個体ですよね?」
シンジ「いや……まあ、弱いんだが、装甲が分厚くて倒すのに手間がかかる個体だ」
カナタ「そう、なんですか?」(一撃で倒せたけどな……アイツ、強いんだな)
シンジ「まあいい。花の騎士はまだ到着していない。手分けして瘴気を吸収しよう」
カナタ「えっと……どうやってやるんでしょうか?」
シンジ「知らないのか? 先ほどの発言といい、初陣だとでもいうのか?」
カナタ「え、ええ、はい」
シンジ「さぞかし相性のいい守護天使と契約したんだな……これだけの悪魔を一気に、となると戦の守護天使だろうか?」
カナタ「ええっと……彼女は黒の守護天使と名乗っていました」
シンジ「そんな守護天使聞いたことないな……ま、まあいい、瘴気の吸収は空中に手を翳し、念じればできる。吸収しすぎには気を付けたまえ」
カナタ「分かりました! 手を翳して……」(瘴気を吸収……!)
ルシファー<あら、いいものをもらったわね>
カナタ(いいもの?)
ルシファー<コレ……瘴気と呼んでいたかしら、は私にとって栄養みたいなものでね。吸収することで強くなれるの>
カナタ(へぇ、そりゃあいい)
ライチが走って到着する。
ライチ「ごめんなさい、遅れちゃって! って、もう終わったんです?」
シンジ「ああ、彼が倒してくれたみたいだ」
ライチ「ええ!? カナタ君、やったね!」
カナタの手を掴んで跳ねるライチ
カナタ「うん、ありがとうライチ姉」
照れくさそうにするカナタ。
シンジ「おっと、連絡だ。……何!? 討伐隊が全滅!?」
シンジが耳に着けた通信機に手を当て、言う。
シンジ「ライチさん。どうやら討伐隊がやられたらしい。進路はここ、西東京群へ向かっている」
ライチ「えっ!? 大変ですね! どうしましょう、とりあえず本部に救援要請を……」
シンジ「もう済ませました。どうにかして時間を稼がないと。カナタ君……だったかな? 初陣を終えたばかりで申し訳ないが、手伝ってくれるか?」
カナタ「ええ、もちろん。どこで迎え撃つんですか?」
シンジ「そうだな……瘴気の事も加味すると、なるべく街からは離れた方がいいな。索敵しつつゲート方面へ移動しよう」
街と逆方向を指さす
カナタ「了解です」
シンジの示した方向へ走る三人。
シンジ「しかしここに来て未契約の守護天使と出会えるとは……君は相当運がいいな」
カナタ「ええ、僕もそう思います。念願の契約です。これから悪魔を沢山殺したいですね」
シンジ「いい心構えだ。だが戦いはチームワークが最重要。君は見たところかなり強いが、無理はせず仲間との連携を取るように」
カナタ「分かりました―――っと、アレ、ですかね」
遠くの方に大型の悪魔が見える。
ライチ「おっきい……」
シンジ「道理で討伐隊が全滅するわけだ。あんなのが町へ行ったらマズい! 命に代えても救援が来るまで足止めをしよう! 僕は障壁を出す。ライチさんは障壁の後ろでサポートを。カナタ君は―――」
シンジがカナタに指示しようと振り返った瞬間、
グワッ
大型悪魔がまるで瞬間移動したかの如く高速で移動し、爪でシンジを貫く。
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