リブラが来た場合(2022リメイク)
「お邪魔するぜ。早速だけどイワタを貰いに来た!」
急に現れたテオと瓜二つの子、リブラが喫茶店に来た。
「えっ!?」
「お帰り願おうかしら!」
イワタさんが驚く中、すかさず私が前へ出る。どいつもこいつも男の子を狙って楽しいかしら?
シチュエーション的には良いけど、それはあくまでも妄想での話よ。
「ベルーチェ!ちょっと待て!トムさんがそう言えって…ちゃんと交渉するから!」
「やかましいわよ。テオの弟なら下がりなさい」
私はモップを構える。全くどいつもこいつもイワタさんを総受け扱いして!
美味しいけど現実では起きて欲しくないのが腐女子なのよ!
「ってもだなぁ。トムさん今、魔力空っぽなんだよ…」
「だったらお店で魔力を与えるアイテムでも買いなさいよ!うちの喫茶店には売ってるわよ」
「あ、あのー…」
イワタさんが指を示せば、先輩の姿が。しかもいつの間にリブラの真後ろに…やるわね、ダニエル先輩。
「うちの従業員に何か御用ですか?」
「うおっ!?」
リブラが現れた先輩に驚いちゃってるじゃない。笑顔が第一のタシトコ喫茶店。でもその店主である先輩が完全に笑ってない。むしろ威圧がすごいわ。
「うちの従業員から魔力を貰うならば、まずは俺に許可取って頂かないと困りますね」
"笑っていない"先輩に対して、引き攣った笑顔のリブラだけど、先輩の手がリブラの肩を鷲掴みにしていたわ。しばらくは逃げれないわね。ご愁傷さまだわ。
「でもアンタは許可出さないだろ?」
「ええ、もちろん。従業員を守るのが店主の仕事ですからね」
その後先輩はリブラを半ば強制的に外へ出し、帰らせていった。
リブラも諦めるしかなかったみたい。でも彼はお兄さんと違って冷静沈着だし、ヨシとしましょう。トムリブの妄想もついでにしておくわね。
それにしても…ここまで来ると、いつ誘拐とか挙句の果てに喫茶店を破壊とかされるか分からないわね。
私じゃダメなの!?
……あ、いけなかったわ。先輩が出てくる前に手足が出ちゃうもの。
イワタさんも男だし、でも自分の身は自分で守って欲しいけど…相手がだいたい強いのばっかりよね。
――そこが厄介ではあるのだけれど。
「ふう…全く。二人とも大丈夫ですか?」
先輩は私とイワタさんを交互に見ながら言った。
「俺は大丈夫です。ベルさんは?」
イワタさんが私を見る。心配してくれたのかしら?ありがたいわ。
「私はヘーキよ。それにしてもアレは仕方なかったのかしら。はーあ…次はヴァンスさんかしら?」
「ああ。あの人ってそういう名前だったんですね…」
あはは、と苦笑いを浮かべて『ヴァンス』という悪魔の名を知ったみたい。悪魔なのにどうして狙うのか不明すぎるわ。
やっぱり大事なので二度言ってしまうけど、妄想には最適なのに、リアルにされるとダメね。
「とにかくこれは移転を考えてもいいかもしれませんね」
先輩は顎に手を当ててそう言った。
「えぇ!?そんな!悪いですよ!わざわざそこまでしなくても…」
「私は構わないわ。だって大事なスタッフを辞めさせていくなんて無理よ」
「流石はベルですね!俺の大事な姫であるユウを手放してまで、喫茶店を運営していく気はありませんから」
自信満々に言ってるけど姫じゃなくて、王子ではないの?まあ先輩って性別不問の考え方を持ってるから、おかしいワケじゃないのよね。
「ユウさん…ってもしかしてイワタさんのこと?」
「ああ、恥ずかしながら…。名前を聞かれたので、そこからあだ名をつけられたんです」
「そうなのね。でも私もテオもみんな愛称で呼ばれてるし大丈夫だわ」
イワタさんはその言葉にうなずいていた。
話し合った結果、郊外なのは変わらず、別の街で運営していくことにした。
後でクシマさんとテオにも言っておかなきゃね。
移転の原因となったリブラと全く同じ顔なのが皮肉だけれど、仕方ないと思ったわ。
※うちよそ設定の皆さまでした