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Photo by
ibaraki_nakai
時を司る悪魔の話② バレンタイン
フルーレは寒冷地に来ていた。
雪がしんしんと降りつもる街に足を踏み入れ、さぁどうするかと思いながら来たのだった。
「バレンタインはこの地でもあるんですかね。人々が並んでいます。
…時を止めたら横取りできそうですが、チョコすらも買えなくなりますね。あはは」
時間停止の異能を持つ彼ならではのセリフである。
(まぁそれにしても…)
洋菓子店で、チョコレートのためにずらっと並ぶ人達を見る。
(行列が長すぎる気もしますが、それほど人気なのでしょうね)
流石に並んでいては買えないかもしれないと思い、比較的行列の少ない店でバレンタイン向けの作成キットを買った。
箱には白字で「とろけるトリュフチョコレート」とあった。
(買えないなら珍しいのを作るまでです)
とフルーレは思った。彼は料理はそれなりに上手い。買うより作った方が渡す相手も喜ぶだろうと考えたのだ。
「しかしまぁ…やはり異国のチョコレートも楽しんでおきたいですよね」
そう後になって思い始め、老舗のレストランで他と比べて高額な生チョコを買っていった。自分用である。
「銀世界のチョコレート…。きっと美味しいでしょうね」
そう言って彼はその世界から去っていった。
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