2023/7/12 【パラ】浅草の神仏習合施設【一千】
今日は10時に起きた。
11:30からは東洋館の袖当番である。この日記の人気コンテンツというものが、半年以上日記を書いているとわかり始める。
袖当番の日は閲覧数が伸びるのである。閲覧数を追い求めて変になることだけは避けたい。
11時に家を出て、まずは漫才協会の事務局へ向かう。3ヶ月に一度の請求書の提出を昨日の朝まで忘れており今朝、急いで向かったのだ。締切からは2日過ぎている。失礼いたしました。
事務局でお渡ししてすぐに東洋館へ向かう。少し時間に余裕があったので、ドン・キホーテへ行った。お茶とコーヒーを買って東洋館に入る。
すでに漫才56号の宮崎さんがいらっしゃった。今日は漫才大行進のあとにそのまま東洋館で漫才協会の催し物があり、そのお手伝いも任されているとのこと。長い1日になるので、朝から気持ちがダウンしているようだった。もちろん仕事は見事にこなしていた。
開演前の粗方の準備を済ませて屋上に行き、ポッドキャストを録音した。30分ほど喋ったあと、録音マシーンがオーバーヒートし、全く取れていなかったことが明らかになった。
あちゃぱーと思ったが、開演直前なのでひとまず当番をやっていく。
12:30からは漫才56号さんが、12:40からは我々が出番であった。
私達の後ろに野球大好き芸人でおなじみのおくまんさんがいらしたことに気づかず、野球のネタをやってしまった。
我々が野球のネタをやったところで、おくまんさんは実力者なのでまったく関係ない。
しかし、悪い影響を与えてしまったかな。でも謝ると、そんなに実力がないのに天狗になってんじゃねえかと思われそうでまごまごした。
出番を終えて袖に戻った。私はいつもどおりのフワッとした笑い声を頂戴したかなと思った。しかし、田川くんがずっと今日はめちゃめちゃスベった。みんな無表情だった。と盛んに言うのだ。悪い方に捉えて反省し、具体的に対策をとればいいのだが、ただ1日中、スベったと言っていた。なんのメッセージなのであろうか、私は反応に困った一日だった。
我々のお次におくまんさんがいつもどおり野球のネタをやる。この時点で「二組連続ですね〜」でお客様も盛り上がっていた。
お次がキープランニングさんだったので、現在、二組連続野球ネタであることをお伝えした。
キープランニングさんはよっしゃ、俺たちも野球やろうとおっしゃり、野球ネタをやっていた。お客様もふぅ~!と最高潮だ。
お次はもりあきのりさんだ。もりさんへ3組連続で野球ネタであると伝えた。
「わ、わわたしも、野球ネタ。ですね。やります。ふふふ。」と言って舞台に飛び出した。
しかし、もりさんは野球ネタをやらなかった。野球ネタはやらないのかと思った直後、東洋館の照明が落ちた。
舞台上は蛍光灯の明かりだけになった。もりさんは驚いて、袖に戻ろうとする。ひとまず、やっててくださいとお伝えして、引き続き漫談を行った。その姿はさながら怪談師のようであった。
あれはおそらく、野球の神様がお怒りになり、照明を落としたのであろう。
照明についての対応は東洋館の方にお願いし、袖で待機する。お次はJJ京二・たかし師匠であった。京二師匠の怒りが頂点へ向かう。「芸人が頑張っているのにこんな暗けりゃ、よくねえよな」とあらゆる人に声をかけている。
対応をお願いしているところなので、とお伝えするが京二師匠はおさまらない。私は謝罪しながらも心の中で、どうしようもねえじゃんとつぶやいていた。
暗がりのまま、京二・たかし師匠が舞台に飛び出した。「暗くてなんもみえねえよお」としきりにおっしゃって爆笑をかっさらっていた。
それを見た田川くんは「これで爆笑だったら、俺たちの漫才ってくそつまんねえんだな」と言っていた。それはシンプルに私の書いた本が悪いということを私に伝えていることになるが大丈夫か?と思いながらぼやきを聞いていた。今日はやたらとこればっかり言っていた。
そこで私も感情的に怒るのではなく、なにかがおかしいということを他の方の漫才を見ながら思案していた。
一つ気づいたことがあった。若手の漫才は基本的にスベる。スベるというか、お客様がそもそも聞く気が無いように思えた。ここで言っておきたいのはお客様が悪いわけではないということだ。これは、聞きやすいようにしてあげることが必要なのではないかと言うことだ。
普段のライブでは、我々もめちゃめちゃすべるということは無くなってきた。内容自体が悪いということではないと言っていいだろう。ただ、東洋館のお客様は内容まで興味がある方は少ないのだ。若手は、聞きたいと思わせる段階のところで失敗していると言えるだろう。
若手の中でも、パラダイムシフトさんが舞台に上がるときはお客様がぐっと、パラダイムシフトさんの方に意識がいっているのを感じ取れた。これは何かあるなと思い、渡邊さんが袖にいたので聞いてみた。
パラダイムさんが上がると、お客様がぐっと聞く体制になっているように感じるのですが、なにか対策はあるんですか?
渡邊さんは、「あるけども、それは僕らという人間でしか通用しないことだからね。言ったところで意味ないよ。」との返答だった。素晴らしい!かっこいい!これが渡邊さんの凄いところだ。しかし、私はこの真相を聞きたいので、高倉さんにも同じことを聞いた。
「あ~、あれやね。お客様に聞いていただけるように間をとりまんねん。」内容は端折るが、全部答えてくれた。いや、全部答えるんかい!
さすがお坊さんである。お坊さんは、羊飼いのようなもので我々を正しい道への道筋をお伝えくださるのだ。
この意見をもとに、次々とあらわれる漫才師の皆様の所作について確認した。なるほど、何かを明確にはとらえられてはいないが、確かにウケるひとというのは喋る前からお客様が聞く態勢になっている。
なかでも、一風・千風さんの漫才にはその「聞かせる」術が詰まっているように見えた。いわば、「聞かせること」だけに特化した漫才なのだ。もちろんネタも面白い!(強調しておく)
千風さんが東洋館をうろついていたので、あらためて話を伺った。千風さんは私が質問のための前段階として「こうしてこうだから、こうだと思うのですが」と言っている段階で「なるほど。それは確かにそうだ。」と私の考えについてはおよそ賛同してくださっているようだ。続けて私は「そう考える中で、一風・千風さんはそれをやっているように思ったのですが、いかがでしょう」と聞いた。すると千風さんは「う~ん。わかんない。」とのことだった。うそだい!うそだあ!こうやってのらりくらりと かわしていくのが千風さんの憎いところである。
まあ、よく考えれば漫才はそんなに考えてやるようなことでもないから、言葉にして伝えるというのは難しいことなのかもしれない。もっと言えば、聞かれたところで、それは料理人にレシピを聞くようなもので気持ちのいいものではないだろう。
それもわかっているのだが、私はどうしてもしりたいのだ。多少気味悪がられても、一流の技を盗むために聞きたいことは聞く。そして意識的に実践する。これを繰り返していきたいと思っている。
さて、そんなこんなで、今日もいま思っている漫才論の1/100くらいを話せたと思う。もっと根深くいろいろと考えているのだが(これを言っている奴はだいたい何も考えていない)、これくらいにしておく。
その後は当番をやりながら、日記を書きながら、ラジオをとりながら、様々な仕事を同時並行でこなして、17:15に東洋館を後にした。そして、18時からは高田馬場でバイトをして23時に帰宅した。いやーつかれた。
今日面白いと思ったことは「真心をもってお客様に話しかけなければ、おもしろい漫才はできない」ということだ。漫才って難しいね!
こんなつらい人生。ここに空き缶を置いておきます。