僕の憧れだった、アメリカ
西海岸のサンタモニカを目指している。
道の脇にはたまに、バーストしたタイヤの切れ端が転がっている。
15号線から、ルート66に入る。もうすぐロサンゼルスが見えてくるはずだ。サンディエゴフリーウェイも南へ下ったけど、ロスからサンフランシスコへは、ヒッチハイクはしなかった。
車線変更の音に重なるように、浜田省吾が歌を歌う。
We're Looking for America.
最後の国、アメリカを飛べば、世界一周が終わりを告げる。この旅を終え、西海岸のショーウィンドウに映る自分は、どんな目の色をしているのだろうか。
巨大なトラックが音を立てて横切る。
南米から北米へ、チリのサンティアゴからアメリカのロサンゼルスに降り立った朝、その足でレンタカー屋に行った。INFINITYという大きな車を借りた。SUVで、なにより男心をくすぐるその大きさが、アメリカの広い道によく似合う。
ナビに入れた名称は、Death Valley。死の谷デスバレーだ。
きっと、母もここをドライブしたかったろうなと、想いを馳せる。浜田省吾が大好きだから。
死の谷 デスバレーを走る
ロサンゼルスから北上すること4時間。
前にも後ろにも、車はいない。広がる荒野。
地球で最も暑くなる地域のひとつであるこの場所に立つと、パタゴニアとはまた違うその偉大さに、思わず笑みがこぼれる。来てよかった。
道は、どこまでも続いているようだった。
デスバレー国立公園には、砂漠がある。2人でくるのはサハラ砂漠以来だった。
そもそもこのデスバレー国立公園は、米国の国立公園の中で最大だ。加えてアメリカで最も暑く、最も標高が低いのも面白い。
彼女はうっかり(?)、砂漠の斜面を転がっていった。
音楽や芸術などにも造詣も深いのに、こんなことしちゃうあたりが、より素敵だなとシャッターを切る。
ロサンゼルスからラスベガスに向かうなら、デスバレーを通ることをおすすめしたい。こんなに楽しい道はない。運転していて、手に汗握りつつも興奮していたのは初めてだ。アメリカが一気に、大好きになった。
グランドキャニオンは想像を超えた
ラスベガスは、眠らない街だ。光の海が突然荒野の暗闇から現れる。長い距離を運転してきてからの、この景色は格別だった。
この街を拠点にし、さらに車を走らせる。
男のロマンがつまる、グランドキャニオンを目指す。車で5、6時間の道のりだ。(簡単に言うけど、長いよね)
キングスマン、セリグマンという街では、ルート66の起源を見た。この道をいつか踏破したい。旅をして、新しい旅の夢ができた。
そして、いよいよだ。
本物のグランドキャニオンは、スケールが違った。自然がつくったこの巨大な渓谷に、地球の歴史を感じずにはいられなかった。
あまりの高さ(1800mだとか)に、腰がすくんだ。高所恐怖症とか関係なく、高いところって怖くないか?
超有名な観光地も、超有名になるべくしてなっているなと思った。メジャーだから避けるのではなく、自分の五感で感じて決めるべきだなと改めて思ったし、この絶景はやっぱりすごかった。
着いたら、帰らねばならない。あの長い距離を。これが現実。
本場のバーガーを食らって気合いをいれる。オニオンリングでかすぎ。
旅の終着点
ロサンゼルスの西海岸、サンタモニカ。
ルート66の終着点は、多くの旅人の終着点でもありスタート地点でもある。
海で泳ぐ家族や日焼けをするお姉さん。エビの唐揚げに並ぶおじさんににジェットコースターで叫ぶカップル。とにかく人が多く賑やかだ。
この海の向こうに、日本がある。
日本を西へと飛び、大西洋を渡り、あとふた飛びすればこの旅は終わる。旅の終着点の聖地でもあるここで、世界一周の終わりを感じた。あとひとつ、残る都市は、南国のリゾート、ハワイだけだ。
アメリカは、広い。そして僕の憧れが詰まってる気がした。リーバイス、Tシャツ、レザー…。憧れた男らしさがこの国にはあるから、また来て、次はゆっくりと味わいたい。
そういえば、このサンタモニカでショーウィンドウに映った自分は、マクドナルドのポテトを歩きながら食べていた。かっこいい自分なんか別にいなくて、日常の先に旅があった。
桃鉄でしか行ったことのないハワイが、たのしみだ。
最後の国、アメリカの旅。
パッキングが得意というかスキです。