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もしトレイルレースがなくなったら

このスポーツに出会わなければ、そこに行かなかっただろうし、その人に会わなかっただろうし、まさか起こらなかっただろう、という様な事柄が、ここ数年でいくつもあります。

三陸・雄勝海の幸トレランNEXTはそのうちの一つになったのかもしれません。石巻市雄勝町、運営者・参加者との交流、今後のトレランのあり方について想ったこと。これらは全て印象深いものとなりました。

そもそもの参加の経緯は、須賀くんからの招待でした。正直言うとレーススケジュールの関係などもあり、都合がつけば参加しようかなくらいの温度感でした。直前まで悩み、セージさんやまるおさんのラブコールもあり半ば押し切られるというか、惹き寄せられるように気づいたら会場入りしていたというような感じです。

仙台から須賀くんの車で、石巻市へ1時間半ほど移動しました。市街地を抜け高速に乗り里山らしい雰囲気を後にするとリアス式海岸が見えてきます。通る車はトラックが多い。聞けば工事用車両がやはり多いとのこと。標識にある「石巻」「女川」の文字が目に飛び込んできます。2011年の事を想い出しました。当時は走るどころか運動なんてするわけもなく、今まさかここに来るなんてと少々信じがたい気分になってました。

会場は防波堤工事をしているような海岸線付近でしたが、降り立ってみると、正直もっと痛々しい雰囲気とか逆に何とか頑張ろうというような気配があるのかと思いきや、淡々と為すべきことを為しているというような空気を感じましたね。

そういえば、元々は(今もかもですが)復興イベント的な位置づけだったようですが、大会の雰囲気自体も、無理に元気付けたり盛り上げるというわけではなく、歴史的背景はともかく純粋にこの町の良さや大会・イベントを自然に楽しんでほしいというような印象を受けました。

星野さんやアミルさんなど、各方面から集まってきた知り合いにも挨拶した後、ブリーフィングが始まると、今日は「レース」ではなく「記録走」であるとのアナウンスが。土曜日は招待選手の30名ほどでエキシビション的に記録走を行い、翌日は大会のマーシャルを務めるというミッションです。記録走って何だろう?と思いつつ、その意味は後から感覚的に把握することができました。

3人ずつのウェーブスタートで、ざっくりとした走力順みたいな目安でしたが、クソ暑い中、鬼ごっこみたいに、遊び半分、本気半分で走るのは、久しぶりにレースやトレーニングという枠組みを取っ払って面白かった!!

走り終わって、心の中で少しほぐれたというか、ほしかったピースが1つ増えたような感じを覚えました。それが何かというのはその時は言語化できませんでしたが、記録走という遊び半分・本気半分な部分に、このスポーツの原点的な部分を垣間見たというか。

その日の夕方からは前夜祭あらため、おがつ横丁。昨年までの立食形式を改め、今年からより楽しんでもらうために提灯横丁的な雰囲気で、その場で知り合った人とワイワイガヤガヤしながら一杯やっていく、いい感じの雰囲気。

もはやこの時点で、盛り上がりはほぼクライマックスだったかと思いきや、招待選手は合同の部屋でそこでも夜遅くまで飲み明かし、元気な選手は当然のごとく朝練に出かけるというパワフルな感じ。

日曜はマーシャルを。隙を見て本人たちも昨日と同じコースなのに走るの楽しんじゃいましたね。

記録走、おがつ横丁、その後の交流、マーシャル、全て通して、やっと体感として知覚的に分かってきたのは、これは「レース」ではないということ。レースでもなくトレーニングでもなく経験したことのないものをやりもしないで理解するのは難しいです。しかし、やってみると何となく分かってくる部分もあります。

最近、トレイルレーサーという単語に表されるようにレースでしか山を走らないという人たちや、トレッドミルだったり低酸素室だったり山を走らなくても効率良くトレーニングをしていく方法論を確立していくような動きだったり、より競技性を求めるような流れがあるように感じます。同時に、山を走りに行って、走ってる人減ったなという印象もあります。

もちろん、自分自身もレースに出ますし競争もするし出るからには目標達成したい。そのためには徹底的に効率良くトレーニングしたい。でもそれだけだとトレイルランニングというスポーツを理解するには片手落ちだという気もします(逆に、単に仲間とゆるゆる楽しくやってるだけでも、良くないなと思います)。

つまりトレイルランニングがトレイルランニングたらしめるものは、トレイルランニング「レース」だけではないのではないか、ということです。

もしトレイル「レース」がこの世からなくなっても、それでも山へ走りに行きますか?

最近自分に問いかけているのは、この手の質問です。競技者として高みを目指すのは当然として、同時にこうした課題にも向き合っていかないと理想とする所には辿り着けないなと思っています。しばらくはこうした問題意識とも向き合っていきたいなと思います。

そうそう、この三陸・雄勝海の幸トレランNEXTは「ファンランイベント」だったんですよね。「レース」という単語はウェブサイトをみても全然でてきません。二日間通して参加して、色々振り返って、ようやく腹落ちできました。余裕があれば飛田さんの動画を是非一度みて頂きたいです。多くの要素が集約されてます。NEXTっていう単語、なるほどなって思いました。

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