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すばらしい朝市の話をしようか。(八戸・館鼻岸壁朝市)

旅行のことを書いたら急にいいねがついたので、調子にのって旅行のことを書くことにした。うーん、なにが喜ばれるか‥‥ならばこの前行った八戸の朝市の話はどうだ。あれは本当にすばらしかった。

青森旅行を決めたとき、もともと八戸はターゲットではなかった(気になったのは青森と弘前)。が、ふと見つけた情報で心が動いた。「毎週日曜に全長800メートルくらい屋台が並ぶ有名な朝市がある」おお、そんなのが! 日本一とも言われることがあるらしい。巨大な朝市なんて、どう転んでも楽しいに違いない。日曜のタイミングで八戸で一泊することに。

八戸は「八食センター」という市場も有名だし、古い飲み屋街が妙にたくさんあって、夜の独特の味のあるムードもすばらしい‥‥で、どっちも寄ったが、今回特に感動したのは朝市なので一気に朝市の話をする。

街の中心部に宿をとり、朝イチで朝市へ。朝イチで‥‥朝市へ! という言い方がぴったりの、ほんとに早朝だった。というのも開催時間は5時半〜9時。しかも中心部から海沿いの会場まで、バスで20分かかる。バスの本数はわずか‥‥ということで早起きをした。で、バス停へ行くと、5時45分くらいなのに30人くらいの行列が。元気そうな年配の人たちが多い。地元の人たちといっしょに乗り込んで(バスは満員!)、のんびりと会場までバスに揺られる。

そして会場について、またびっくりした。朝の6時すぎなのに、わんさか人がいる。わんさか車も停まってる。そして、大量の白テント! 中に入ると、テント通りにぎっしりと人。わりと混んでる神社の参道くらいの人通りがある。早朝と思えない活気。で、両側の屋台ではこれでもかというくらい、おいしそうなものが売られているのだ。メンチカツっぽいものとか、海鮮とか、野菜とか、いろいろ。行列ができている屋台も多い。テントの横に長机があったりして、そこで食べられたりもする。「これはもう、どんどん食っていったほうがいいぞ」と頭のなかで誰かがつぶやく。全部見てから食べるものを決めてたら、乗り遅れる。売り切れるかもしれない。

よし、じゃあ気になったものを買うぞ。じゃじゃーん! ‥‥というわけで、まずはせんべい汁。野菜などがしっかり入っただし汁に、ふにゃっとした「せんべい」がのせられた郷土料理。おだしはおでんの汁のようなやさしい味。そして「せんべい」がもちのようで大変おいしい。正直「せんべい汁」という名前で見くびっていたが、相当うまい。せんべいの噛みごたえがいい。「ここに炭水化物を入れたい‥‥あ、せんべいがあった」と思いついた、昔の青森の誰かに思いを馳せる。すばらしいアイデア。

つづけて、つぶ貝のくし。大きなつぶ貝3つが、長い串にささって大鍋で茹でられたもの。これもまた‥‥うまい。すばらしい。歯ごたえ食べごたえしっかり! 選んだ理由は「つぶ貝がメジャーじゃないから」である。ホタテなどの超メジャーなものじゃないぶん、安くてうまい可能性が高いと踏んだ。有名なもののほうが売りやすいはずなのに売られてるのは、きっと味がいいからに違いないと‥‥大正解である。ものすごい弾力。シンプルな味なのにうまいよ。

地味な感じのおじいさんが、ひとりでマイクを持って放送をしている。声はしっかりしているが、マイクがなければスタッフに見えない頼りない見た目が良い。「八戸はイカの町〜、八戸はイカの町〜」言われてみれば、停泊している大きな船にはランプがたくさんついているイカ釣り船のようである。

そんなわけで、揚げ物のお惣菜テントでイカフライを買って、それも座って食べた。テントの中央に揚げ鍋があって、そこでそのまま揚げている。ソースをつけて、ざくざく食う。ああ、八戸はイカの町。ちょうどテーブルに「鰊切込」という鰊の麹漬けの瓶詰めがあったので、それものせて食べてもみた。正しい食べ方かはわからないが、この鰊、うまい。魚の旨味がむっちゃくちゃに凝縮している。あと茹でコンニャクも食べた。にんじんジュースも飲んだ。宮城のほうから来ているという焼き牡蠣も食べた。どんどん食う。どんどん腹がいっぱいになる。幸せである。

あとうまかったのが、山菜のお味噌汁。きのこやら山菜やら、なんだかいろいろたっぷりはいったお味噌汁。こういうのも狙い目である。地方に旅行に行ったとき「ちゃんとした名前がない感じの、家庭料理っぽいなにか」はだいたいうまい。しかもこの店は、メインの料理がその「山菜汁」である。絶対うまいに決まっている。うまかった。地元の人も次々やってきて、バンバン食べていた。お椀もプラスチックとかではなく、完全に不揃いの味噌汁椀である。こんなの、うまいに決まってる。

そうやって歩きながら食べ、歩きながら食べていると「もう無理だな」くらい満腹になり、時間も気づけば8時前。入口のところに人が集っているので行ってみたら、地元のアイドル3人組がステージ(といっても地面で人が集っているだけ)をやっていて、人だかりができていたので、一緒になってそのトークを聞く。まさにアイドルのイメージそのままのブレザーの変形的衣装で、全体にどこか垢抜けない感じ。高校生のときの同級生にめちゃくちゃいそう。しかも青森弁をしっかり使った仲良しそうなおしゃべり。‥‥なんだかすべてが的を得ていて、すばらしい。トーク内容もたいしたことないが「ゴールデンウィークにやりたいことは?」「わたしはおばあちゃんと車ででかけたい」完璧である。「これはファンがつくなあ」と思った。最後は歌で、アイドルといえば!みたいなコテコテの踊りを「練習したんだろうなー、でもちょっと拙いな」みたいな感じでやり、地元のファンたちもちらほらお決まりの掛け声?みたいなのをやり、ぼくもすっかり「いい子たちだったなあ」という気分になった。旅先の地方で見るアイドルとして完璧であった。

そして最後に、町に戻るバスが来るまでの時間で、屋台のコーヒー。で、ここはここで地元の喫茶店かなにかがやっている感じだったが‥‥これまた絶妙にうまい。地元の人同士がのんびり喋ったりしてるのを聞いたり、ぼーっと港のほうを見たりしながら、ぼーっとする。ああ、最高じゃないか。館鼻岸壁朝市、最高。

バスがやってきてホテルにもどったのが9時過ぎ頃。一日がまだはじまってないくらいなのに、相当充実した日を過ごした気持ちである。一気に八戸が大好きになってしまった。

ゆえに、この話の教訓としては「八戸行くなら、日曜朝市やってるときに行け。そしてちゃんと早めに行け」である。いちおう9時までということになっているが、朝早くからやっているので、8時ころには売り切れもいろいろ出てきてて、店じまいするところも出てくる。せっかくだから、いちばんおもしろい時間帯(6時〜7時半頃)を味わってほしい。で、あとは「いっぱい食べろ」だと思う。うまいものがほんとにいっぱいある。おすすめ。