新しい発想が潰されないために
仕事し始めて31年と3ヶ月…その間、新しい発想、イノベーションの種が叩き潰され、摘み取られる場面をたくさん見てきたような気がする。勿論、他人事にするつもりは全くなく、多分ぼく自身も間違いなくその首謀者の一人であった、ということ。それらは、組織構造や、この国の慣習や、人口構造や経済の構造なんかに原因があったような気がするのだけど、実は、原因なんかどうでもよくって、何とか今すぐにでも対策を打たなければ!自分にできることから始めよう!というのが今回の主旨。
1.組織とかヒエラルキーがイノベーションの種を摘み取る件について
困ったことに日本という国は1979年のエズラヴォーゲル博士が書いた”ジャパンアズナンバーワン”という本を読んで、必要以上に自信を持ち、未来永劫日本はナンバーワンなんだと思った節がある。確かに、”バックトゥザフューチャー3(1990)”の中で主人公マーティ・マクフライは”何言ってんのドク、いいものはみんな日本製”と言い、”リーサルウェポン3(1992)”の中ではメルギブソン演じるマーティン・リッグスは”ロサンゼルス市警も日本に買い取られたのか?”と言う。
だから何だか、品質が高ければオリジナリティは必要ないし、新しいチャレンジなんかするより利益率の追求の方が大事だし、ITで負けてもモノづくりで勝てばいい、ってな価値観がついこの間まで結構の確率で存在していたような気がする。その結果として、過去の成功の詳細を知っているぼくたちの世代(バブル世代)の発言力が必要以上に強くなり、イノベーションの種を数々つみとってきたような気がするのです。
今でも業界団体の偉いさんの集まりに出ると、そこら中で忖度と阿りの場面を見るし、逆に若手の現状否定の意見には”何も分かってない”の一言で切り捨てられる場面がままある。(←まぁ、ぼくはそういう場面が苦手なので直接見ることは少ないのですが…)
自分自身を鑑みても、一応役員だし、会議なんかに出ると社員たちはぼくの意見にやっぱり反対はし辛いみたいで、なんとなくぼくの意見が最終決定みたいになることが多い。正直それって相当気持ち悪いし、だから、一回言ってみた…”うん、分かった。よく考えると、20代女子向きの化粧品のネーミングやらパッケージやら、50代のおっさんが意見挟んだらいかんわ。好きにやっていいよ”
組織やヒエラルキーがイノベーションの種をつみとる原因を作っていることは間違いないと思うのですが、ひょっとするとシンプルにリーダーやベテラン層が変わるだけで解決するのかも?と思ったのです。
2.利益至上主義経営が会社の中のイノベーションの種を摘み取る
あんまり長々と書きたくないのでシンプルに。利益だけ目指すとそこにあるのは、コスト削減と売れる確率の追求ってな話になって、ついついイノベーションに対する労力と予算は削られる。今売れている商品のサイズ違いとか、別流通の開拓とかはどんどん進むんだけど、モデルナのAI使ったワクチン開発フローなんてな所には行きつかない。
それでも相変わらず日本の上場企業の中期経営計画はあくまでPL主体の売上と利益だけにフォーカスしているものが多い。アメリカS&Pによる企業の平均寿命は12年。イノベーションを起こせない企業の末路はコダックだよ~という価値観は今まさに急速に浸透してきているとは思うのですが…ここについては一応の答はこれのような気がします。
3.自信がないから新しい発想を否定する
これはもう個人もこの国もという感覚がある。スウェーデンのように人口が1000万人を切るような、つまり最初から国外市場を意識しなければ企業が成立しない国と違って、日本は内需だけでも結構食える…からだけじゃないと思うのだけど、例えばガラケー、例えば家電・自動車・部品以外の製造業、例えばAI産業…発展途上のものもあるし、そもそも向かないものもあるような気がするけど、海外、特にアメリカやヨーロッパに向けてビジネスを成功させるつもりがある企業が少ない。海外留学生も2004年をピークに増えていかない。
自分たちの知っている知識だけで運用しようとする。新しい知識の広がりを求めない、結果必ず新しい発想の失敗する理由をあげつらう。そんなことが日常茶飯事になっていると。
これは一歩づつということになるだろうけど、ぼくみたいな国内向け産業に携わる人間でも、最初から海外を意識して起こせるイノベーションがある!という事例を作っていくことが大切な気がするのです。