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【短編小説】ヘルプ式

「いやーごめん待たせて。あれ、お前なに読んでるの?」

「これ?夏目漱石の『坊っちゃん』」

「この前読んでたのが芥川龍之介で、次は夏目漱石? ・・・お前、そういうレトロな作品を好む自分をかっこいいと思ってるだろ?」

「別にそういうのじゃないよ、本当に面白いから読んでるのさ」

「まあでも確かに、お前がこの前勧めてくれた夏目漱石の”アレ”、面白かったよ」

「”アレ”ってなんだよ」

「タイトルが出てこないんだよ。『吾輩は猫である』という書き出しで始まる、ってことは思い出せるんだけど」

「・・・タイトルも『吾輩は猫である』だよ」

「あ、そうなの?じゃあ、『吾輩は猫である』は、『HELP!』式なんだな」

「ヘルプ式?」

「あれ、伝わんないか。そうかお前、あいみょんとか髭男とか聞いてるもんな。もっとビートルズとかも聞いておくべきだぜ」

「・・・お前、そういうレトロな作品を好む自分をかっこいいと思ってるだろ?」





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