記憶の縛り
(本文)
「ここはどこ?私はだれ?」
中学3年生の秋。
私は脳しんとうで記憶を1時間ぐらい失いました。
今の状況がわからない。自分が誰だかわからない。
夢から覚めて夢と現実のどっち?といった寝ぼけた状態でした。
学校の教室らしき場所に自分がいて、チャイムがなったので席に付こうとしたら自分の席がわからない。そういえば、自分の名前は、、ど忘れ?
「オレってどこの席?」とそこにいた友人らしき人に聞いてみたところ、
その人(友人)が心配そうに
「大丈夫か!これはやばいぞ、保健室に連れて行かな」
と少しフラついていた私に自分の肩を掴ませ、保健室に連れて行ってくれました。親切な人だなぁと冷静に考えながら、保健室まで一緒に歩きました。
保健室につくとすぐにベッドに寝かされて、しばらく寝ていると急に記憶が蘇ってきました。そうか、自分は殴られて脳しんとうを起こしたのか・・そして、クラスメートに連れられて・・・
急に怒りと恐怖と恥ずかしさでパニックになって泣き出してしまいました。
「ここはどこ?私はだれ?」って普通考えたらパニックですが、その時は平静で、逆に『ここはどこで、私は誰か』といった記憶が蘇るとパニックになったのです。記憶って一体何なのでしょう。
場活王ジパングの編集をしてくれているシライシヨシオさんは、息子さんが記憶喪失を経験し、未だ記憶が戻らない状態のようです。シライシさんは息子さんが記憶を失って心がピュアになったことを間近で感じ、その息子さんと過ごす中で「人間の記憶がなくなったら、世界から戦争がなくなるのでは」と思うようになりました。
私もその感覚が少しだけわかります。自分が記憶喪失になったとき、心が平静で外にはただ静かな世界がありました。記憶が戻った瞬間、怒りと恐怖と恥ずかしさが大波のようにどっと押し寄せ、外の世界はガヤガヤとうるさく、私は混乱しました。殴った相手に対して怒り、脳しんとうの後遺症に恐れ、先生や友達に対して恥ずかしい氣持ちがわいて、内の世界にこもりたくなりました。
記憶を失っていく認知症という病気がありますが、この病にかかると怒りやすくなると言われています。私のように記憶を失った自分と、記憶が戻った自分を行ったり来たりするからではないでしょうか。
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場活王ジパング【週刊】
それはちょうどいい!いきあたりバッチリ!が場活の合言葉。 日常を楽しく生きるために必要なメソッドを数千人との対話の中から導きました。いまも…
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