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クラスター対策と自粛だけでは、新型コロナウィルスは収束しない
※以下の記事はあくまで私見に基づいたものです。
歯止めがかからない今の日本の状況
4月18日現在、韓国では新規感染者数が10人台(18人)となった。
一方、日本では、東京のみでも181人が新たに感染し、全国でも感染者累計1万人を突破。9日間で感染者数が倍増し、歯止めがかからない状況となっている。
先日の緊急事態宣言では、人との接触を7割極力8割減らしましょうというスローガンが打ち出された。都市封鎖を敷いているところでさえ8割台だ(ニューヨーク▲86%、ロンドン▲84%)。日本は、外出「禁止」ではなく罰則もない自粛要請レベルで、果たして80%削減は達成され得るのだろうか。
さらに経済の動きを止めないという前提であるため、様々な輸送・物資・人は動き続けている。こうした中、ロックダウンしているNYやLDNと数値的に近い削減%を叩き出せるのだろうか?
また、ニューヨークは3月22日夜から外出禁止令を発令してから4月18日現在に至っても大きく収束に向かう状況とはいえない。武漢のような徹底した都市封鎖を行わない限り、1,2ヶ月で収束に向かうことはできないのではないだろうか。
中途半端な施策では、今回のコロナウィルスの強力な感染力を抑え込むことができないと肝に銘じるべきだ。
命のケアは上手くいったが・・・
私は、日本がとる防疫対策の基本である「重症者を重点的にケアし生命を守る」というもののみでは、台湾や韓国のように「ほぼ終息しつつある」という状態には落ち着かせることはできないと考えた。
日本は、基本方針が功を奏し死亡率を極めて低く抑えることに成功している。しかしこの裏側に潜む重大な死角を見落としている。
重症者を重点ケアするということは、
検査すら受けていない(受けられない)『大多数の軽症・無自覚・無症状の感染者が、市中を浮遊し感染を広げ続ける』
ということも意味するのだ。
早急に検査数を拡大すべき
最も重大な欠陥は、検査数が少なすぎることだ。日本は検査数を早急に引き上げるべきだ。4月17日段階で、韓国は累計54万件(アメリカ340万件、イタリア118万件)に比べ、日本は8.6万件(18日現在)に過ぎない。1日当たりの検査数を見ても、韓国が1.8~1.6万件に対し、4月18日現在、日本は4,975件しかPCR検査を実施できていない。
さらに言うと、3月31日段階で、東京都での検査数の累計が3173人だった。これに対しLINEアプリでの調査だけで「37,5度の発熱が4日以上の回答者数」は6139人にも昇る。
数多く感染が疑われる人が相当数出ているにもかかわらず、検査数が全然追いついていないのだ。
ちなみに、東京都の人口は927万人だ。一方、LINE回答者はその一部の348万人のみの回答にすぎない。加えて3月末以前に発熱していた人は含まれないため、実数はさらに膨れ上がっていると考えて間違いない。
したがって東京都が公式発表した検査の実績からすると、実際に発熱しており感染が疑われる人々の大多数が、検査から漏れ出ていることは明白だ。
この検査から漏れ出た発熱者、云わば、感染が疑われる個体への必要な防疫体制を敷かなければ、いつまで経っても収束をみないどころか、これら多くの潜在的感染者が各地に拡散すると全国規模で爆発的感染拡大を引き起こす事態も招きかねない。
4段階の感染拡大レベル
ここで、日本がどういった対策を敷いており、今後どこに重点化していくか私見を述べるうえで、便宜上、感染拡大レベルを4段階に分けることとした。
レベル①;感染した個体が市中に出回っている状態
レベル②;特定の施設内で集団感染が発生している状態
レベル③;感染経路不明の不特定多数に感染が広がっている状態
レベル④;幾何級数的に感染が拡大(数日で倍々)している状態
日本は、②から③になることを抑止するためクラスター対策の防疫体制を敷いていた。
ここで重要なのはそのクラスターを引き起こす『種』が存在する①へのアプローチが効果的にできていないことだ。
また、クラスター対策の限界が見えた現状では、③(もしくは④の兆候も出つつある)のフェーズに移ってしまっている。そこで是が非でも④への移行を阻止するため政府は自粛要請を敷いているのだ。
財政負担を最小化する施策とは・・
さて、当初よりなぜ国が検査に対して及び腰に見えるのだろうか。これには「経済・財務」の観点からこの感染拡大レベルを見返すと見えてくる。
②のクラスター対策では、要所要所で特定の感染集団を押さえていくため、そこに掛ける国の予算は比較的低く抑えられる。
これに対し、①では、すでに広範囲で沸き起こる不特定多数の者に検査していくため、「検査自体の国の健保負担」、「検査拡充にかかる人件費など諸経費」、「陽性者多数に対する休業補償やホテル・自宅療養に関わる費用補償」など、国庫負担は大きく膨れ上がってしまうのだ。
したがって、国としては低予算で効果の高い②へアプローチする防疫体制を選択してきたと言える。さらに、4月に入ってからの③を抑え込むために民間企業へ休業を要請したが、国としてこれら企業の休業による損失を補てんすることに積極的ではないことにも、緊縮財政の姿勢が見え隠れする。
もし5月以降にも思った収束が見られず、この産業の一旦の収縮が長期化すれば、企業の倒産や人員の離散を招き、収縮のみならずその産業構造自体が壊れかねない。
産業の衰退により、まわりまわって税収にも大きく影響しうるし、さらに企業の休業や倒産に対して国が補償をすべきだとする声も強くなるだろう。
まとめとして、①を抑え込むことに予算と人員を割くことが、結果的に③での自粛要請による経済的損失を最小化し、感染の短期収束へ向けて、さらにギアを一段上げて加速できると考えるのだ。
どんな施策が求められるだろうか?
今現在、各知事や専門家のメディアを通じた熱心な働きかけで、「感染をしないため」『3密』を避けましょう、という国民的な共通理解は拡がった。しかし、
『自分が発熱した時、あるいは周りに感染が疑われる人が出た時、我々にはどんなケアがあり、どんなことに気を付けるのか』
日々の公式発表で見えてこない。
むしろ巷では検査を受けられなかったという不満と不平しか聞こえてこない。
一方、韓国の状況はというと、疑わしい症状が出た場合、「無料」で検査を受けることができ、しかもウォーキングスルーなどの検査では3分ほどしかからず、判定結果は翌日1~2日後にメールか電話ですぐ分かるのだ。このように「万一感染したら…」という国民の不安に明確な指針があり、人々に安心感や政府への信頼を生み出していると考えられる。
従って、「3密」「8割接触削減」の次のスローガンとして、この「感染が疑われる人々に向けた新たなスローガン」が求められていると考える。
韓国をベンチマークとすること
続いて、韓国ではどういった施策がなされているか調査し、取り入れる必要がある。一般的には「ドライブスルー検査」(所要時間10分)が良く知られているが、風通しのよい簡易テントを通じた「ウォーキングスルー検査」(所要時間3分)や、さらに検査数が多いのは、若手の公衆保険医(兵役の一種)2700人以上を動員した「訪問検査」などがあり、より利用者に負荷を掛けず、かつその場での感染リスクが低い形で検査が実施されている。
また、軽症者には生活治療センター(民間施設)への収容、さらに陽性者が多数に広がった月には、自宅療養も取り入れられた。
自宅療養では、まずレトルト食品や水、その他生活用品がセットとなったキットが配布される。また、毎日、市職員から電話で状態の聞き取りがあり、対象者はアプリでの検温の入力報告(GPS管理も含む?)するという仕組みが取り入れられている。
今求められるLINE調査のバージョンアップ
その他、韓国では住民登録制度、監視カメラ、クレカ利用情報、スマホの位置情報など、多様なITに関わるビッグデータ、システムや機器を利用した防疫体制が導入された。
一方、日本では、LINEアプリによるアンケート調査などで得られたビッグデータに基づき流行状況を解析していると考えられる。
このLINEアカウントを持っている人は7300万人で、そのうち84%の6,132万人という実に日本人口の半数が日ごろから利用しているとのことだ。
ここで注目すべき点は、このLINE利用者の年齢別構成と今回のウィルス罹患者の年齢別構成は似通っており、大半が20代から50代の人が占めている。
このことを踏まえると、このLINEを徹底して利活用することで、防疫体制に迅速、効果的かつ大きな影響を及ぼすころができると考える。
例えば37.5度以上と回答した者には、返信として、入力された郵便番号から自動で割り出された最寄りの検査場所や問い合わせ先が通知され、またすぐに検査の日時予約(人数制限あり)ができるなどが考えられる。
最後に、
「5月連休中、若干の拡がりが抑えられ、人々に余暇時間が与えられるタイミングで、東京(もしくは関東圏)だけでもPCR検査を一気呵成に全数検査を行う」
ことが、事態の早期収束への大きな道筋になると考えている。
この検査の人員には、自衛隊の衛生科を動員するなど関東面へ集中配備することも一つの施策ではないだろうか。