雑記〜水を無視、引越し、メタリックブルー
(バカ公園・夢)
日記2022年1月19日
友達の家に遊びに行った。
彼は水に沈んだ街に住んでいる。
特に最下層の全部水に沈んでしまった地域に彼の家はある。
街に入ると、そこではたくさんの人がたくましく暮らしていた。
あまりにも長時間、水と生活をともにしているためなのか街は水を無視している。
もちろん、街に暮らす人々も同様だ。
水を無視することで、息が苦しくなることもないし、服が濡れることもないそうだ。
僕もコツを教えてもらって、街に少しずつ順応していった。
最終的に、僕は水中でタバコを吸えるほどこの街に順応することができた。
彼の家に着くと、彼のおばあちゃんがご飯を作ってくれていた。
とてもおいしかった。
日記2022年1月20日
明日、引越しをする。
「丁寧な暮らし」とは程遠い生活をしていたので、
荷造りや掃除にかなりの時間がかかってしまった。
「丁寧な暮らし」ってなんだよ。
本気で言ってんのか?
人に見せることを前提とした暮らしだろあれ。
あんなもん全部嘘だろ。
日記2022年1月21日
引越しをした。
朝早くに業者が来て、荷物を旧居から新居に運ぶ。
小さなワンルームから次々に段ボールが運び出され、 ものの15分程度で運び出しは終了。
新居に移動しての搬入も同様に15分程度で終わった。
プロはすごい。
荷解きをする前に、旧居にもどって片付けや掃除をした。
日記2022年1月22日
引越し後の荷解きが進まない。
自分の荷物だけで段ボール20箱。
同居人の荷物も合わせると、段ボールの数は50箱を超える。
そもそも本棚も、衣装ケースもまだ用意できていないので、今はこのまま箱に詰めたままの方がいいのでは、とさえ思てきている。
日記2022年1月23日
「イルカの脱皮を見せてあげる」
彼女は僕にそう言った。
彼女は高校時代の同級生で、イルカのトレーナーになるのが夢だった。
僕は「夢を叶えたんだな」と思った。
彼女に連れられて、イルカのプールに向かう。
プールには、イルカが一頭だけしかおらず、ゆらゆらと水中を漂っている。
「あ、ほら。始まるよ」
彼女が言うと、イルカの身体がくねくねと左右に動き出し、皮がズルッと剥けた。
剥けた皮はイルカの尾びれに辛うじて引っかかったまま、ゆらゆらと揺れている。
脱皮直後のイルカの身体はメタリックブルーで、金属みたいだった。
水面から出ている背中の部分はてらてらと光を反射していて、ぬめりがあるようにも見える。
初めて見る脱皮直後のイルカに目を奪われていると、彼女が異変に気がついた。
イルカの頭がへこんでいたのである。
「あーあ。脳みそがついてこれなかったかぁ。可哀想に・・・・・・」
と、彼女がぽつりと言った。
僕は、イルカって脆くて儚い生き物なんだな、と思った。
彼女は尾びれに皮をぶら下げてゆらゆらと揺れながら、少しずつ死んでいくメタリックブルーのイルカを見つめながら泣いていた。
僕もなんだか悲しくなって、一緒に泣いた。