接客喃語〜チャセ〜
(バカ公園・花)
先日、名古屋からJRで20分の郊外にあるナンカレー屋さんに行った時の話。
ドアを開けて店内に入ると、日本人ではないお母さんが店内にいた。ナンカレー屋さんなので、恐らくネパールとかその辺の出自と思しき方だった。
そのネパールお母さんは、僕が店に入ってくるのを見つけるなり、こう言った。
「チャセ」
一瞬。
チャセ?
と思ったが、「いらっしゃいませ」と言って迎えてくれたのだろうと状況から察する事が出来た。
もともと「いらっしゃいませ」だった発音が、
・外国の出自による独特の訛り
・長年の営業による慣れ
などが影響して「チャセ」に派生したものだろう。
上記の例のような、いわば“接客喃語”とも言うべき「チャセ」が、僕にはとても魅力的に感じられる。
完璧でない。しかし意味は通じる。そして丁度いい「間に合わせ感」。
サボっているわけではない。でも気負いすぎていない。
進化する過渡期にある言語が孕んだワクワクと危険性が、とても心地よい。
接客サービス業における“接客喃語”は日常に潜んでいる。
今回は、過去に遭遇した“接客喃語”を記憶の許す限りで紹介していこうと思う。
・せー
この接客喃語は僕の職場の店長によるもので、「いらっしゃいませ」の意。
昼時には「せーちゃー=いらっしゃいませこんにちは」が聞けることもある。
・ありあとあす!
ラーメン店を退店する際に添えてくれる一言。
油そば屋のマニュアルには「お客様退店時はありあとあす」と書いてあるに違いない。
・floor?
「(レジ)袋は(ご利用ですか)?」の派生。
僕の住んでいる街のファミマ店員は8割外人なのだが、floor?は日本人の店員によるもの。
・おきゃっさ、おひとぅさで!?
「お客様はおひとり様で?」の意。
会社員時代によく行ってたサイゼリヤのパートのおばちゃんの空回ったやる気が感じられる。
・カシアス島田
青森のコーヒースタンドで遭遇した接客喃語。
ジェントルマンなマスターによる「かしこまりました」は、キナ臭い大物作詞家のような香りがする。
・すえすえすた
厨房で店員さんが何かを落としてしまった時の喃語。
多分「失礼いたしました」なんだろうけど、「すえすえすた」の方が引き締まっててイイ印象がする。
・せーせうあっさー
ガソリンスタンドで灯油を入れようと待っていたら遭遇した喃語。
「少々お待ちください」か「先生の朝」か「正々堂々勝負しろオラ」のいずれかだと思う。
・てんなですか?
トルコケバブやさんで店員の方に言われた「店内ですか?」の喃語。
ちなみに僕は一度、一切の遊び無しでトルコアイスを渡されたことがある。「冗談が通じないヤツ」だと思われたのかもしれない。
・ご寛ぎくだしやせ!
富山は黒部の温泉旅館に行った時の女将っぽい人に言われた喃語。
これは喃語っていうか、噛んでただけかもしれない。
(番外編)
・らーす
「おはようございます」の意。
僕が出勤するときは基本的に「らーす」にお世話になっている。
ちなみに「ありがとうございます」の意でも使える。便利。
ナンカレーの味は普通だった。