サルバドーレ長谷川の美食探訪記
あっ、ちょっと君、シェフを呼んでくれないかね。
えっ?は、はい。少々お待ちください。
お客様、何かございましたでしょうか?
君かね、このミックスフライ定食を作ったのは?
はい、そうですが・・・。
まずメインのエビ、白身魚、豚ヒレ、どれも素材の良さを壊すことなく、丁寧に衣で囲ってある。揚げ具合も丁度良く、ひと口目の歯の通り具合には何とも言えん感動がある。それにこのソースとの相性も抜群だ!
そして、こちらの白米。コシヒカリを使っているようだが、ちゃんとフライに合うように、絶妙な水量で炊かれてある。ミックスフライさえあれば何杯でも食べられるような錯覚に陥れられる。
さらにこの味噌汁。フライと白米の融合の感動を助長し、喉まで伝えてくれるほどよい濃度。具もメインを邪魔しないように無駄のない少量のわかめと豆腐のみ。
このミックスフライ、白米、味噌汁のトライアングルのバランス、計算して出せるものではない。相当な鍛錬を積んできたと見える。シェフ、この業界は長いのですか?
去年専門学校を卒業して、ここの厨房のバイトは半年くらいです。
その才能、大切にするがいい。今は、普通のファミリーレストランだと言う人もいるだろうが、近いうちにきっと日本、いや世界が気づくまで精進してください。久しぶりに魂のこもった料理を食べさせていただいたお礼が言いたかった。また来させてもらうよ。これ、僕の名刺だ、それではアディオス。
サルバドーレ長谷川?すごい人なのかな?
すごいか、すごくないかは分からないけど、あの人、食事代払ってないよね?名刺にも住所も電話番号も書いていないし、とりあえず警察に電話しよう。
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