渡辺直人選手の人間力
野球に詳しくない人でも、松坂大輔の名前は知っていて、同学年の野球選手を松坂世代と呼ばれているのを聞いたことがあるかと思います。松坂世代のプロ野球選手も年々減っていき、今シーズン途中で、阪神の藤川球児選手が引退を表明しました。
そして先日、同じく松坂世代の楽天イーグルスの渡辺直人選手が、引退を表明しました。
セ・リーグの赤い球団をひいきに見ている自分としては、他球団、特にパ・リーグの選手はそこまで詳しくないのですが、松坂選手が高校時代から脚光を浴び、鳴り物入りで西武に入団したのとは対照的に、渡辺選手は学生時代はそこまで目立つこともなく、社会人野球を経験してから26歳という遅いプロ入りでした。
ホームランや打率でタイトルをとることもなかったので、そこまで記憶に残っているプレーはないのですが、ひとつだけ強烈に記憶に残っていることがあります。
2010年、チームの事情で、渡辺選手がトレードで横浜へ移籍することになりました。
渡辺選手は自分を育ててくれた楽天への思いから、記者会見で泣きました。
すると次の日、契約更改の場で、チームメイトの鉄平、嶋、草野の3選手も号泣したのです。
自分が今季の活躍で、来季提示された年俸で契約しましたって発表の場で、カメラの前で大人が
「なんで直人さんがトレードでチームを出なきゃいけないんですか」って
悔しさをあらわに号泣するのです。
普通、プロスポーツ選手なんて、ライバルに勝って自分が活躍してたくさんお金を稼げればいいんじゃないかと、単純に思ってしまうし(自分も元アスリートのはしくれでそんな人をよく見てきました)、こういう業界なら仕方ないと理解も必要なのですが、他人のためにそこまで泣けるのかって、どんな選手だったのだろうって興味がわいた記憶がありました。
とにかく面倒見がよく、助言を惜しまない。どんな人であれ臆さず自分の意見を伝える渡辺直人という選手は、チームメイトに愛された、人間力にあふれた選手だったということでしょう。
もし、明日、自分が会社をクビになったら、号泣してくれる人はいるだろうか?
全力で救ってくれる人はいるだろうか?
今日もひとり会社を辞めるという連絡が入ってきました。
いろんな感情が巡り寂しいけど、とても泣けるといった状況ではありません。
人間力って何なのかを考えさせる存在が渡辺直人選手でした。