トイレでの事件
休日のメローな土曜の昼下がり、トイレで事件が起きた。
トイレで事件と書くと、おもらし系を想像する方が多いと思うが、今回はそうではない。便意ではなく、善意からの事件である。
トイレに入ってすぐ、トイレットペーパーのゴミが落ちているのに気付いた。おそらく娘が手を洗って、拭いて、丸めたものだと思われる。当然拾うのが父親の仕事である。拾おうとしてかがんだ瞬間・・・
ガンッ!!!!!!!!
ペーパーホルダーにおでこを、額を、生え際を強打した。
「チョーイテェー」
金メダル級の痛さであったため、北島康介でもこういうはずだ。
強打後、娘がちらかしたことが原因であるため、怒りが沸いたが、すぐ「40にもなるのに何してんだ、自分」という情けなさと虚しさに襲われた。
トイレの中で、内的要因と外的要因の両者にボコボコにされた。トイレでうずくまり、額を押さえている姿は、うめき声さえ上げなければ、一見、他者からは何かを崇拝している姿に重なるかもしれない。が、
トイレに神様はいない。
血が流れている。鏡で確認する。絆創膏のMサイズでは収まらない傷口。皮もめくれ、深そうな傷口。
「傷口を覗く時、傷口もまたこちらを覗いているのだ」
かのニーチェが言ったとか言わないとか。試されている。傷口をガン見し返す。何も変わらない。
妻を呼び、絆創膏を貼ってもらう。
最近抜け毛が気になっていた右の額の生え際。そこが傷口。絆創膏を剝がす際、さらに抜けるのではという恐怖心を抱きながら、今これを書いている。
今日の一言。
「トイレに神様はいない。いるのは魔物だ。」