馬楽の時間 110
馬術部物語
なにしろ経験が足りない。当時は映像もない。ミューゼラーの文章を読んでもイメージがわかない。でも何十年も歴史にさらされて、なお読まれているのだから、書いてあることはきっと正しいはず。
やってみたい。闇夜に目をつぶって一歩踏み出すようなもの。気になる文章をとにかくやってみた。出来ない、読む、やってみるの繰り返し。恐怖と期待、失望と希望。まさに未知の原野を探検する面白さ。
「あっ、こうかも知れない!」。微かな光。光が大きく強くなっていく。
どんどん馬術の深みにはまっていった。これ以上の快感はない。
たまにOBが指導と称して馬場に来る。私は必ず外乗(馬場の外で乗る)に逃げた。自分にはやりたいことがある。余計な口出しは要らない。もちろん乗ってもらうなんてことは絶対しない。アドバイスを受けて、もし、悩んでいることがあっさり出来てしまったら、そんな悔しいことはない。強いOB不信もあった。偉そうなヤツは大嫌い。それは今も変わらない。
経験を積むほどに、ミューゼラーが言っていることが現実に出来ていく。よし、ここもやってみよう、これはどうだろうと冒険の旅を続けた。パートナーはもちろん柏鷹。柏鷹も実によくやってくれた。
2023年12月8日、昨日、乗馬愛好家が4人、お寿司とお酒を携えてやってきた。4時間の馬術談義。読み込んでボロボロになったミューゼラーに感動していた。もちろん学生時代に手に入れたものじゃないが。