【片手間ダブル;Remasters】⑦初心者向け初手定跡
定跡とは
本記事では「定跡」という言葉を用います。
将棋において、最善とされる決まった動きのことをこのように呼びます。
ちなみに囲碁だと「定石」と表記するのですが、筆者が将棋指しということもありまして、今回は定跡で表記を統一します。
さて、ある程度ダブルバトルを経験しておられる皆様でしたら、多少なりとも選出→1ターン目の動きに関しては頭に入っていることと存じます。
すなわち、有利に進めるための動きが脳内で定跡化しているというわけです。
ですが、特に初心者においては、どのように選出してどのように動き始めるのかがイマイチ分からないまま漠然と対戦している、という状況も珍しくありません。
何となく感覚でやってはいるけど、言葉にするのは難しい一連の動き…これらを上手く言語化し、定跡としてしまうのが今回の試みになります。
【片手間ダブル;Remasters】の④では各ポケモンの役割について、⑤では攻撃技タイプの通りの良さについて、⑥では構築タイプについて言及してきました。
ここまでの理論を総動員し、序盤の考え方を可視化していきます。
(先に④⑤⑥を読んでいただくことをオススメいたします)
なお、手法は以下の通りです。
1. 勝ち筋を決める(=構築の設定)
2. 必要な要員を決める
3. 選出を決める
4. 1ターン目の動きを決める
5. 2ターン目以降の大まかな動きを決める
アグロ系統の勝ち筋と要員
アグロ系統の動かし方はシンプルです。
・序盤に追い風 / トリックルーム等を使用する
・素早さで優位に立ち、攻撃を集中させる
・追い風 / トリルが切れる前に倒し切る or 逆転されないところまで削り切る
・場合によっては再度追い風 / トリルを展開する
※今回は凍える風等の能力変化、及びこだわりスカーフによる素早さ操作は割愛
必要な要員についても、比較的容易に予想することができます。
・追い風役(いたずらごころ、もしくは高い素早さを持つポケモンが好ましい)
・トリル役(高耐久 or 行動保証付きのポケモンが好ましい)
・アタッカー(単体 / 範囲合わせて2~3体、先制技や行動保障があると尚良し)
・サポーター(追い風 / トリルの展開を支援)
また、必須ではないものの構築に搭載されてと嬉しい要員もいくつか挙げられます。
これらは重複するのが好ましいです。
・天候 / フィールド始動役(火力の補強)
・猫だまし役(タスキ潰し、追い風 / トリル要員・その他味方の行動支援)
・メタ要員(特定のタイプ・技・特性等のメタ)
追い風軸の選出例と初手定跡
まずは追い風軸の選出と1ターン目の動き、注意点について考察していきます。
追い風は優先度が0(悪戯心、疾風の翼なら+1)なので、妨害に屈しにくいです。
そのため、基本的には追い風展開→即攻撃の流れが良いと思われます。
追い風展開ターンに強い攻撃をしない場合は、その分のロスを2ターン目以降に回収できるような選出が望ましいです。
追い風は7回分(追い風ターンの相方の1回+2体分×3ターン)の行動が可能です。
相手のマークが厳しい時以外は攻撃性能の高いポケモンを選出しましょう。
トリル軸の選出例と初手定跡
続いてトリル軸の選出と1ターン目の動き、注意点について考察していきます。
トリックルームは優先度が-6なので、非常に妨害されやすいです。
よって基本的にはトリル役の保護が必要です。
トリックルームは展開ターンを除くと実質4ターンの持続期間ですが、追い風よりも1回多い8回分(2体分×4ターン)の行動が可能となっております。
また、素早さに努力値を割かなくてもいい分、トリル下限定ですが高速・高火力・高耐久という本来ならあり得ないスペックのポケモンを2体並べることも可能です。
追い風 / トリルの注意点
追い風とトリックルームを使用する際は、展開後の動きでいくつか注意点があります。
・2回目の追い風 / トリルをしたい場合は、展開要員を温存しておく
・相手の守る、猫だまし、両壁、デバフ、積み技等による時間稼ぎに注意する
(あらかじめメタ要員を選出しておく)
・追い風による素早さ上昇をトリックルームで逆用されるケースを留意しておく
・トリックルームはトリックルームで打ち消すことができることに注意する
最初のうちは1~5ターン目までに決着をつけることだけを考えて戦ってみましょう。
追い風軸なら追い風展開+7回分の行動で、トリル軸ならトリル展開のサポート+トリル展開+8回分の行動で相手を倒し切る…それだけを考えて構築を組んでみると良いかもしれません。
あるいは、レンタルパーティで上記を意識して戦ってみるのもアリだと思います。
まずは完成済みの構築で選出と1ターン目の動きを練習し、慣れてきたら自分で構築を組んで再現できるかやってみましょう。
追い風とトリックルームの最大の弱点…
それは、時間稼ぎによる持続ターン切れです。
例えば、追い風なら2・4ターン目、トリルなら3・5ターン目に守ったりテラスを切ることで、普通に耐えるよりは容易に追い風 / トリルターンを枯らすことができるのです。
ある程度経験を積んだら、
・特化構築にして相手の対策にメタを張る
・サブプランとして追い風 / トリルを組み込む
このどちらかを選んで、更に使用構築を洗練させていきましょう。
ランプ構築の勝ち筋と要員
「ランプ」を簡単に説明すると、序盤は積みエースを他2~3体でサポートし、積み終わり次第そのまま全抜きを狙うという戦い方です。
ランプ構築の方針も比較的簡単です。
・エースアタッカーは積む→攻撃する
・サブアタッカーはエースの苦手な相手やすでに削れた相手を仕留める
・サポーターはエースへの支援と相手へのデバフを心掛ける
・エースの生存を最優先する
欲しい要員はこんなところでしょうか。
・メインアタッカー(積み技必須、耐久振りであることが望ましい)
・サブアタッカー(先制技、猫だまし、サイクル技、準備を要しない高火力技など)
・サポーター(この指、回復、壁張り、猫だまし、デバフ、状態異常、行動制限など)
ランプ構築の選出例と初手定跡
ランプ構築の選出と1ターン目の動き、注意点について考察していきます。
なお、ここでは先発で積み役を出すパターンで考えていきます(後発パターンは後述)。
ランプ構築は序盤から攻撃を仕掛けない都合、素早さ操作をあまり必要としません。
するとしても積み終わってからです。
ひたすらエースを強化・回復しながら、反撃のチャンスまで粘りましょう。
ランプ構築の注意点
ランプ構築を使用する際にも、試合全体を通した動きでいくつか注意点があります。
・積む前のエースへの集中砲火に注意する
・序盤はエースが積むための盤面作りを優先する
(相方が猫だましやこの指を使える状況)
・エースが苦手な相手に対応できるサブエースを後発に準備する、もしくはエースの代わりに先発で起用し盤面を整える
触り始めの頃は、「このターンと次ターン、どちらで積むか」だけを考えて技選択や交代を行うことをオススメします。
守る状態を挟みながら、相方をサイクルして積める盤面を作り続けましょう。
ランプ構築は速攻が苦手です
1ターン目から読み間違えて総攻撃を浴びせられて敗戦…なんてことも。
序盤は慎重に動かしましょう。
あるいは、積みの速度以上にデバフをかけられてプラン崩壊というケースも。
ただし、回復を挟めば再度積むチャンスが出てくるため、必要経費と捉えてアグロ対策に振り切ってしまうのもアリだと思います。
仮にある程度積めたとしても、タイプ相性的に倒しにくい相手は必ずいます。
そういったエースの天敵だけは事前に勉強し、対策枠を設けておくべきです。
また、そういうポケモンが相手の構築に複数いる場合は、先に倒したり弱体化させてから積みエースを後発で着地させましょう。
その他の構築について
にゅらら式構築分類をベースにすると、まだ語っていないのは攪乱的アグロ・ミッドレンジ・コントロール・ギミック構築になります。
このうちギミック構築はもっとも単純で、構築段階で想定された勝ち筋を相手の攻撃や妨害を乗り越えて遂行できるか否か、で全てが決まります。
ただ、その勝ち筋は採用ギミックごとに異なるので定跡化もできませんでした。
コンボについてはこちらをご利用ください。
攪乱的アグロは別記事でも示した通り、序盤からエースを立ててその攻撃を周囲が全力でサポートして押し切る、というコンセプトになります。
相手の妨害に対するメタ張りが前提になっているので、選出や技選択も実質相手依存です。
故に、こちらも定跡化は断念しました。
同様に、ミッドレンジ構築・コントロール構築も相手の選出や技構成に適した受け・攻撃・妨害を行う都合、その動きは相手依存と言えます。
やはり定跡化は困難と判断しました。
選出段階から臨機応変さを試されるので、そういった点でも攪乱的アグロ・ミッドレンジ・コントロールの3つは中~上級者向けと言えるでしょう。
余談;攻撃技タイプについて
初級者~中級者にとっては純系アグロ(特に追い風軸)・トリル系アグロ・ランプが使い勝手が良いと考えられます。
これは、上記3つが戦術的行動寄りの構築タイプだからと私は考えております。
戦術的行動とはすなわち「我が道を行く」スタイルで、タイプ相性が多少不利でも高火力を押し付けて勝ち切る、といった考え方になります。
トリル下でコータスに炎テラスを切ったり、追い風下で悪ウーラオスに悪テラスを切ったりするのが良い例ですね。
対戦に不慣れな間は攻撃技のタイプはあまり気にせず、アグロなら時間内に殴り切る、ランプなら一撃で倒せるところまで積んでから殴る、ということを意識するだけで良いかなと思います。
もちろん、慣れてきたら使用率の高い相手をメタるようにする…すなわち刺さり度を意識した技構成にすることで、より広い構築と戦えるようになると考えられます。
また、対処的行動(「相手の出方を伺う」スタイル)寄りの構築は、そもそもその性質上刺さりの良い技構成にしておくことが前提になります。
ミッドレンジ構築が最たる例で、高使用率のポケモン相手に殴り合いを制するつもりなら、刺さり度はなおのこと意識するのが好ましいでしょう。
まとめ
本記事では、特に追い風軸・トリル軸・積みエース軸の初手定跡(+それに伴う選出)について考察してきました。
2ターン目以降の選択に関しては、両者の1ターン目の動きによって変化します。
よって、これ以上の定跡化は今の段階では不可能と言っていいでしょう。
しかし、今後環境が変化して初手の動きが固定化されるようになったり、あるいは新ルールによって特定の動きが制限・禁止されたりすれば…
構築と条件次第では、ひょっとしたら2ターン目の定跡も生まれるやもしれません。
初級者~中級者の皆様におかれましては、まずは素早さ操作で主導権を握るか、自分の信じるエースをさらに強くするか…この辺りを念頭に置いて構築を組んでみてください。
そして、何戦も戦って練度を上げて、オリジナルの戦術を生み出してみてください。
この記事の読者から、バケモノが生まれることを心待ちにしております。