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海外に住んでみたいお医者さんへ マイナス面考えてる?

以下の文章は架空の著者という設定で書かれた、医療の内容を含む文章です。本文の内容を臨床応用する場合には、各医療者の判断と責任の下で行ってください。記載をしている本当の著者及び、その関連団体は一切の責任を負いません。ご理解の上、よくできたフィクションとしてお楽しみください。

道はいろいろ。あなたは雇い主に価値をもたらせるか?

医師になる前から海外留学してみたい、国境なき医師団で働いてみたい、アメリカで医師になってみたいと漠然と憧れている人は多い。

島国である日本から世界に出ていつかは海外で活躍してみたいという希望は大変素晴らしい。

医師が海外で生活する道は概ね以下の通りだ。

・研究者
・臨床医
・医師免許がなくてもできる診療の補助
・学生
・家族に帯同
・見学

実は、給料をもらわずに海外にいっている医師がほとんどだ。

海外の企業、大学、研究機関、病院、クリニックで外国人を雇うときに考えるのは、その外国人を雇ってメリットがあるかどうかである。

受け入れ先の立場から考えてみるといい。
「無給か格安の給料ならいいよ。」
「やりたい人がいない仕事だからいいよ。」
「あなたに払う以上に、あなたがお金を稼いでくれるからいいよ。」
だ。

日本には、東南アジアからたくさんの技能実習生が来ている。人手が足りない介護、地方の工場なので安い労働力として活躍している。欧米にある企業にとって、日本人の医師は、現地の労働者よりも格安で雇える。現地の学生のバイトでもできる仕事でも、少しのリスペクトを払って接しているフリさえすれば日本人医師の方が、学生バイトよりも安く働いてくれる。だから受け入れるのだ。まさに、技能を学ぶ機会を提供するという名目の技能実習生と同じシステムだ。

労働者としての市場価値はその雇用契約書に記載されている。もちろんこれは、あなたという人間の価値ではない。あなたが無給で働いているのであれば、あなたは労働者として、それだけの市場価値だということだ。

もちろん、無給でもよいから学びたい。無給でもいいから研究させてもらって、実績を作りたい。そして将来は、自分が目指すポストにつきたい。と無給から入り込んで、ステップアップを目指すという道もある。

しかし、現実的には、ほとんどの人がうまくいかない。一部の成功したキラキラした医師に惑わされてはいけない。そもそもそのキラキラした医師とあなたは同等の能力を備えているのだろうか?そのキラキラした医師は、無給でもチャンスを掴むまで生活に困らない金銭的な余裕があるお金持ちではないだろうか?

海外に出て行ったほとんどの医師は、研究者であれば、給料をもらえるポストにはつけず、臨床であれば、無給でずっと見学のままで、現地の医学生以下の扱いをされ、ビザ切れ、日本にいる家族の傷病、子どもの受験などをきっかけに日本に帰国する。

しかも、海外に出る前についていたポジションは残っておらず、研究にしても臨床にしても第一線からは退くことになり、普通の開業医か勤務医として、むしろ海外に行く前よりもステップダウンしたポジションにつく。

せめて上達した英語を維持しようとするが、日本での生活では英語を使う機会は少なく、2年もすれば忘れてしまう。留学経験があるから英語も堪能だろうと周囲から期待され、英語圏の人が来た時に呼ばれたものの、英語で相手が質問していることに気づかずに、妙な間ができて、愛想笑いで誤魔化し、しかも相手の日本語力が自分の英語力よりも上で、日本語で会話することになる。


では、もう少し現実を見ていこう。

こんなはずじゃなかった。研究者の夫との夫婦関係の破綻

妻の海外留学や海外診療に夫がついていくというケースも増えてきたが、実際最も多いのは夫の海外留学や生活に妻が帯同するというケースだ。おそらく、男性の方がロマンを追ってしまうからではないだろうか。

医師の妻というと医師や看護師などの医療者であるケースが現在でも多い。夫の方は、見学なり、研究なり、自分のキャリアアップを目指して、朝から家を出るのだが、妻の方は、せっかく取った日本での医師免許も専門医の資格も使えずに主婦として家にいることになる。

はじめは、日本での臨床での生活に疲れていて、主婦生活をエンジョイするのだが、3ヶ月も経てばすっかり飽きてくる。もともと英語がネイティブでもなく、なかなか現地の人のコミュニティに入ることもできない。せいぜい、同じような状況の日本人元医療者のママ友とお茶をして、コストコで買ってきたワインとチーズで乾杯だ。

Netflixの韓国ドラマを片っ端からみて、それにも飽きてきたら、Instagramで日本にいる友人知人に向けて、憧れの海外生活をアップして承認欲求を満たす。

綺麗に加工された写真とは裏腹に、実際の生活は、インフレと、やりがい搾取されている低賃金の夫の収入で、生活はカツカツだ。

専門医維持のために、学会には休職申請してきたが、その期限も終わってしまい、必死にとった専門医も失うことになってしまった。

資格だけでなく、2年、3年と臨床から離れていると、臨床医としての知識もアップデートされず、せっかく身につけた手技もすっかり自身がなくなってできなった。

少しは医師としての仕事がしたいと、オンライン医療相談の会社に登録するが、こちらもAIの台頭で、すでに医師の供給過剰になっており、思っていたほどは予約が埋まらない。そればかりか、たまに入った相談はAIでは解答が難しいような込み入ったもので、返事をしっかりとテキストで書かねばならず、給料に見合わない時間と手間をとられる。

子どもの方は、英語が身につけられるようにと、現地の学校にいれてみたものの、学校では他の日本人の子ども達とばかり群れをなし、思ったほど英語ができるようになっていかない。身体能力で、アジア人はどうしても劣ってしまい、運動でもついていけず、家に帰ってネットゲームだ。

妻は徐々に高まっていく不安感や焦燥感から、少しずつネガティブな発言が多くなり、それは子ども達にも少しずつ波及していく。

そして、たまに日本に帰国し、活躍している研修医時代の同期や後輩、中学受験の準備をしている高校時代の友人の子どもの様子を聞き、留学中の夫にぶつけるのである。

「あなたはいいわよ。好きなことやってるんだから。」

夫としても、日本でのポジションを捨て、無給でのお手伝いとして研究室にもぐりこみ、そこからようやく少しの給料と就労ビザがもらえるポジションを海外で得たのに、今ここで日本に帰国してしまっては、これまでの苦労が水の泡になってしまう、、。

そして言い返すのである。

「今は日本に帰れない。もし限界なら、子どもと日本に帰りなよ。」

海外にある日系クリニックで働いてみたものの、、、

各国の医師国家試験を受けて、研修プログラムを終えて、フルライセンスで海外臨床をするというのは、なかなかハードルが高い。しかし、海外には、その外国の医師免許を持つ医師に、ある程度の制限を設けて診療許可を出す国がある。実は、日本にも外国の医師に診療許可を与える制度がある。これは、海外の医学部を出た学生が、日本での医師国家試験を受けて日本での医師免許を取得するのとはまた別の制度である。

こういった制度を利用して、海外のいくつかの都市には日本人医師がいて日系クリニックと呼ばれるところで働いている。日系クリニックといってもオーナーが日本人や日本企業とは限らず、日本風クリニックのところもかなりある。

そういったクリニックは海外に住んでいる主に日本人患者をターゲットにし、できれば現地の人も受診してほしいと考えている。もちろん、営利目的だ。言葉や文化の違う海外で、日本人医師に日本語で日本式の診療をしてもらえる。海外旅行保険が使えて、異国の地で生活する日本人達にとってみたら、大変便利なサービスだ。

しかし、実際に働く医師にとっては、こうしたクリニックで働く前に、注意することがたくさんある。そしてこの情報は、2025年1月15日現在、私はネットで検索しても、Copilotに聞いても出てこない。

日本で働いていた期間よりも海外での診療期間が長くなって来た著者が経験を踏まえて以下に記す。

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