携帯大手キャリアの「端末タダで貰えるプラン」の収益性を意思決定会計的に読み解く
某大手通信3社で使われている「端末を2年後に返却するなら無料で貰えますよ〜」的なプラン。果たして本当にお得なのかが気になったので、検証してみました。※元楽天社員ですが、携帯プランの売り込みとかは一切狙っていません。フラットな視点で評価しました。
プラン概要
家電量販店にある展示されている携帯を見ているとグイグイ話しかけられるあの地獄のブースで各社のプラン概要を聞いてきました。3キャリアで一番良さげだったのがソフトバンク、3キャリア以外(Ahamo, UQ, etc..)で一番お得だったのが楽天モバイルなので、ソフトバンクと楽天モバイルをベンチマークにします。ソフトバンクのプランの概要は以下。
14万円相当くらいのスマホを48回(4年)分割で購入。最初の24回(2年)分はキャンペーンでほぼ0円の支払い
24回の支払後スマホを返却し、傷等がなければ25回目以降の支払いがチャラに
この時に再度同じプランに申し込めば実質0円で新しいスマホに乗り換えられる
契約期間中は必ずその携帯会社のプランに加入することが必須になる(最低9千円くらい)
端末代払わなくてよいのに2年ごとに新しい端末に変えられるし、めちゃめちゃお得そうですね!ただこのスキーム、よく考えると2つ落とし穴が、、、
①つ目は、「契約期間中は必ずその携帯会社のプランに加入することが必須になる(最低9千円くらい)」ことです。
楽天モバイルとか格安スマホであれば2~3千円で済む支払いが9千円でロックされるの結構厳しくないですか?毎月6千円の差額なので、1年で7.2万円過剰に支払いしています。
②つ目は、これはほぼほぼ「リース取引」になるということです。所有権は一時的にあるものの、借り物になるので雑に扱ったりしたら後でその分を補償しないといけないですし、誰かにあげたり、メルカリで売ったりできません(厳密にはできはしますが、それをした場合は購入価格の50%以上を支払う必要が出てきますので絶対にやめた方が良いです。)
意思決定会計的に読み解いてみる
お得意の会計を活用して、このプランが本当にお得なのか?を検証してみたいと思います。
A: ソフトバンクで最新のiphone 16(14万円)をタダでゲットし、2年間9,000円プラン継続する
B: Apple shopでiphone 16(14万円)を購入し、安さ重視の楽天モバイルで2年間3,300円プラン継続する
以下は補足情報です
⭐️Aプランは2年後また新しい端末もらえますが、永続所有権ではないので資産計上されない
⭐️Bプランの場合、端末を購入しているため、耐用年数3年から試算した購入価格の1/3の47千円の売却益が24ヶ月後に得られる(売らなくても使い続けることも選択可能)
結果こんな感じ↓↓
ぬるっと疑問に思っていたことが数字で表すことで理解しやすくなってきました。つまるところ、
Aプランは他の月額プランと比較して少し高い設定になっており、その差額分が実質のリース料金となったスマホレンタルサービス(5.7千円/月)と捉えられる
Bプランは端末の購入金額で初期的にはマイナスになるが、毎月の支払額は少ないため2年後は端末購入を入れても支払額はAとほぼ同じになり、スマホ売却分が利益になる。※2年以上使えば実質の支払金額はさらに節約できる
ということですね。「常に最新の端末を使っていたい!!」って人も普通にBにして2年ごとに買い替えた方がキャッシュフロー的にはお得です。
今回あくまで2社の今のプランをベンチマークしましたが、以下を加味する必要があります。
大手3社の料金割引が適用されて、"恒常的"に月額7千円以下になればプラマイゼロになります(そんなことしたら赤字になりますがw)。
プランが違うため、格安Simの品質が看過できない水準に低い場合はAになる。(楽天以外にも3社とほぼ同品質かつ格安のMVNOとか選べるので現実的にあり得ないですが)
今手元にお金がないけど絶対に最新スマホが欲しい!人はA(甘いこと言うなたわけ!って感じですけどwあと極論年率14%のローンを組んでもBプランの方がお得)
さいごに
小中高大学生含め、ほぼ全員が当たり前のように15万くらいする最新の iphone を持ち歩いている我が国日本、リッチな国だなぁと思っていたのですが、別に経済がめちゃくちゃ成長しているわけでもないし、一人当たりGDPもめちゃ高いわけでもないので、超わかりづらい一見お得なこのプランがほぼ全国民に最新のiphoneを供給しているのかも?と思っちゃいました。きっと通信キャリアの超絶頭いい人がこのプラン考えたのだろうな〜
一昔前、楽天モバイルのCMで米倉さんが「日本のスマホ料金は高すぎる!」と叫んでいましたが、実質のリース料金を含めての金額だから世界的に見ても高く見えていたのかもしれないですね。
寡占状態であった通信業界に風穴を開けて、超絶シンプルかつお得なプランを提供して社会全体の可処分所得を増やせているという意味では、楽天がモバイル業界へ参入した意義は大いにあったのではないでしょうか。
えげつない速度で増え続ける契約者数を今後も注目していきたいと思います。