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30年の軌跡を噛み締めつつ原点を振り返った染谷俊メモリアルライブ(2023年)
染谷 俊 Debut 30th Anniversary Live〜『在処』再訪ライブ〜
2023年4月16日 湘南江ノ島 虎丸座
※本記事は2023年5月にWEBメディア「BUNCA」にて掲載されたものを転載したものとなります。
2023年4月16日。「染谷 俊 Debut 30th Anniversary Live 〜『在処』再訪ライブ〜」が、江ノ島 虎丸座にて開催された。この日はスペシャルゲストとして、ピアニストの西本明とパーカッショニストの里村美和が出演。2部構成+さらなるサプライズゲストも登場したアンコールも含め、デビューからの30年を思い入れたっぷりに振り返るメモリアルなライブとなった。
まるで同窓会のような雰囲気の中、30年を振り返ったセットリスト。
この日の会場は、夕暮れの江ノ島が見下ろせるライブハウス「虎丸座」。まだ明るい日差しの残るステージに染谷は駆け出すように登場した。「今日は1stから3rdアルバムまでの中から、自分の原点となる歌をたくさん歌います。みなさんもいろいろ思い出しながら聴いてください。大事な、大事な曲をたくさん演ります」と来場者へ伝え、1曲目『愛にあいたかった』からライブが始まった。
染谷のアコースティックギターからイントロが流れると、会場中が一斉に手拍子で応える。その様子はまるで同窓会のようだ。続く『今夜勝ちに行こう』のサビでは会場中の拳が上がり、曲の後半はギターを背中に廻した染谷がエレクトリックピアノを奏でる。
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続いては、今日のスペシャルゲストのひとりでデビュー当初から染谷の曲を多数アレンジしてきた西本明が編曲した『サイコロとマルボロ』。イントロでは染谷のハーモニカが鳴り響き、アウトロでは西本明のピアノと里村美和のドラムのアドリブが白熱。3人の個性が火花を散らすかのようなパフォーマンスを魅せた。
1stアルバムから曲のアレンジをしてくれたという西本へ感謝を告げつつ、続いては2ndアルバムからの『落書』へ。これも西本がアレンジした曲だ。アレンジした本人の奏でるピアノだけのシンプルなイントロ。30年来の思いを馳せるかのように、染谷はその音色に聴き入りつつ声を載せ、自ら抱えたギターで旋律を追いかけてゆく。
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「みんなが曲を口ずさんでくれてるのを見て、ずっとこうして歌ってくれてたんだなって思うとうれしくて」喜びをストレートに伝える染谷。「今日歌いたかった」という『僕の両手』を披露した後には、憧れていた尾崎豊と同じスタジオでレコーディングをし、浜田省吾と出会ったというエピソードを語り会場を和ませた。
第1部の最後は、西本のピアノによるバラード『表参道』。別れた相手を振り返る曲の世界観は、年月を経てより深みを増している。本人もそう感じていたようで、歌い終わった途端「うわぁ、昔の自分にゾクゾクする!」と照れながら口にしていた。
グランドピアノでの連弾、そして疾走するロックチューンへ。
第2部は染谷と西本の連弾による『選んだこと』からスタート。2台のグランドピアノで複雑な音色を競い合うかのような圧巻のプレイで会場を魅了した。さらに2人のアドリブで『トルコ行進曲』の連弾も披露。会場は固唾を吞みつつ、迫力の演奏を堪能した。
染谷がステージ中央に戻ると、里村もドラムの前にスタンバイ。「じゃあ、ロックンロール行きますかー!」染谷のシャウトとともに曲はロックチューン『日々精進』へ。染谷は抱えたギターをアグレッシブにかき鳴らし、里村もヘビーなドラムとカホンの響きでサウンドに彩りを添える。『危険に自由を犯せばいい』では、西本のグランドピアノと立ったまま演奏する染谷のエレクトリックピアノでの連弾が炸裂。サビでは会場にコール&レスポンスを求めシャウトする。
夢を追いかけ、もがいていたデビュー前に書いたという曲のエピソードとともに『君が手を振っていた』を歌うと、染谷は再びステージ端のグランドピアノの前へ移動。やさしい弾き語りで『たったひとつ』を披露した。演奏する染谷の後ろには、夕日を背景にした富士山と海岸に打ち寄せる波が光る。この瞬間は、会場へ足を運んだ誰もが忘れられない光景となったことだろう。
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「デビューから30年、もがいたりした時期もあるけど、いろんなことをやってきました。25周年では大きいことをやってきたけど、30周年は“Road of SOMEYA"ということで、みんなと染谷の道を歩いていきたいと思っています」そんなMCとともに、第2部のラストは『崖っぷちの少年』。思い入れたっぷりに歌い上げた後は深々と礼をして、マイクを通さず「ありがとう!」と会場に感謝を告げた。
影響を受けたアーティストの曲を当時のメンバーの音とともに。
アンコールの手拍子が満員の会場に響き渡り、再び染谷が登場。「アンコールをいただけたので、自分が影響を受けた曲を第3部的に演ってみたいと思います」と告げ、ここで染谷はファンや近しいスタッフも知らなかったというエピソードを語った。弟を亡くして茫然自失となってしまった母親を元気づけるため、幼少の頃からクラシックピアノを必死に練習したという話。学生時代に出会った佐野元春の曲を機に、音大に入るもロックンローラーになりたいと思って家出をした話。そして自身の1stアルバムを手に佐野元春の楽屋へ行った時のエピソード。
そんな思い出話の後に歌ったのが、佐野元春の代表曲『アンジェリーナ』。この日のゲスト奏者である西本明と里村美和は佐野元春のバンド「HEARTLAND」のメンバー。彼らが演奏する=オリジナルのサウンドが再現されるということだ。楽曲のイメージそのままの生音と疾走感が実に心地いい。「この方がいなかったら、自分の人生違ってたんで。ありがとう、佐野さん!」笑顔で叫ぶ染谷。
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続いては高校時代のクラスメイトに教えてもらったという尾崎豊のカバーへ。ここでさらなるサプライズゲストとしてベーシストの田口政人が登場。田口は尾崎豊のバンド「Heart Of Klaxon」のメンバーであり、西本と里村も尾崎豊のツアーバンドの一員を務めていたことから、ここでもまさに本家のサウンドが展開した。オリジナルの音色を彷彿させる『I LOVE YOU』、そして『Forget me not』。まるで尾崎が憑依したかのような染谷のボーカルにも熱く込み上げてくる熱量と魅力が詰まっていた。
アンコールのラストは『笑顔』。イントロでは自然に手拍子が沸きあがり、エレクトリックピアノを弾く染谷の顔にも満面の笑みが浮かぶ。だが、ライブはまだ終わらなかった。BGMで流れる『愛にあいたかった』を会場中のファンが口ずさみ、会場は再びアンコールの手拍子に包まれる。2度目のアンコールを受けて、再び染谷はステージに登場。エレクトリックピアノの弾き語りで『ヒーロー』をシャウト。会場中がコール&レスポンスで拳を上げて最後の最後まで熱く盛り上がった。
デビューから30年の時を積み重ねてきた染谷俊。この後も30周年記念ライブはツアーとなって続いた。今までの道のりを踏みしめながら、さらなる先へ進んでいく彼の行く先にこれからも期待していきたい。
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【染谷 俊 Debut 30th Anniversary Live 〜『在処』再訪ライブ〜】セットリスト
1 愛にあいたかった
2 今夜勝ちに行こう
3 サイコロとマルボロ
4 落書
5 僕の両手
6 表参道
7 選んだこと
8 日々精進
9 危険に自由を犯せばいい
10 君が手を振っていた
11 たったひとつ
12 崖っぷちの少年
En1 アンジェリーナ
En2 I LOVE YOU
En3 Forget me not
En4 笑顔
En5 ヒーロー