株式会社IHIの財務・業績分析:2024年3月期 第3四半期の詳細な検討
会社概要
会社名:株式会社IHI
事業内容:
資源・エネルギー・環境:原動機(陸用原動機プラント,舶用原動機)、カーボンソリューション、原子力(原子力機器)
社会基盤:橋梁・水門、交通システム、シールドシステム、コンクリート建材、都市開発(不動産販売・賃貸)
産業システム・汎用機械:車両過給機、パーキング、回転機械(圧縮機、分離装置、舶用過給機)、熱・表面処理、運搬機械、物流・産業システム(物流システム、産業機械)。
決算概要
良い点
資産総額の増加。
悪い点
売上収益の8.4%減少。
営業利益の大幅な減少と1037億円の損失。
親会社に帰属する四半期損益が1095億円の損失。
財務活動によるキャッシュフローは主にコマーシャル・ペーパーの発行による収入であり、営業活動によるキャッシュフローは878億円の支出超過。
経営成績(単位:億円)
売上収益:8666億円(前年比 △8.4%)
営業損益:△1037億円(大幅な損失)
四半期損益:△1068億円(親会社に帰属)
財務状況(単位:億円)
資産合計:20894億円(前年比 +7.6%)
資本合計:3438億円(前年比 △24.6%)
親会社所有者帰属持分比率:15.2%(前年比 -7.0ポイント)
キャッシュフロー(単位:億円)
現金及び現金同等物の残高:1235億円(前年比 △1.0%)
営業活動によるキャッシュフロー:△878億円
投資活動によるキャッシュフロー:△434億円
財務活動によるキャッシュフロー:+1266億円
業績予想(単位:億円)
通期売上収益:13300億円(前期比 △1.7%)
営業損益:△800億円
親会社所有者に帰属する当期利益:△900億円
配当情報
2023年3月期:第2四半期末配当 40円
2024年3月期:第2四半期末配当 50円、期末配当 50円、年間合計 100円。
採点方法
財務健全性:15/25
成長性:10/25
市場ポジション:15/25
将来性:10/25
合計:50/100
関係する業界業種の動向と該当企業との比較
世界経済の動向:世界経済は金融引き締めの影響で減速する見通しですが、将来的には緩やかな回復が期待されます。中国経済は不動産部門の低迷が続いており、景気減速感が強まっています。日本経済は雇用・所得環境の改善を背景に回復が期待されます。
業界内での当社の位置づけ:当社の売上収益は前年同期比で8.4%減少していますが、営業損益は1687億円減少し、1037億円の損失を計上しています。これは、民間向け航空エンジンの増加やライフサイクルビジネスでの増収があったものの、売上収益の大幅な減収やアフターマーケット関連費用の増加によるものです。
中期経営方針:当社は2023年度を初年度とする3年間の中期経営方針「グループ経営方針2023」を実施しており、航空エンジン・ロケット分野の成長事業やクリーンエネルギー分野の育成に重点を置き、事業ポートフォリオの変革を通じて継続的な成長を目指しています。
投資判断
現在の財務データと業績予想を考慮すると、株式会社IHIは短期的には投資リスクが高いと判断されます。特に営業損益の大幅な減少と高い債務負担は、将来的なリスク要因となり得ます。長期的な視点では、経営戦略の変更や市場環境の改善によって、業績が回復する可能性があります。しかし、そのためには経営の安定化と財務構造の改善が必要です。投資判断としては、現時点では慎重なアプローチが望ましいと考えられます。市場や業界動向、および経営陣の対応を注視し、定期的に状況を見直すことが推奨されます。