どんな企業でも結局ほしい「若さ」や「即戦力」に氷河期世代はどう挑むべきか。
はじめに
日本社会では年齢による制限が強く、特に中途採用の際に「若さ」や「即戦力」が重視される傾向がある。
いくら、中高年向けの職業訓練やキャリア支援の拡充があっても、スキルを身に付けても、歳くっていて尚且つ経験がなければ、そりゃ年齢の若い子をイチから育てる方を企業としては選びたいだろう。
新卒カードを有効利用することができなかった多くの氷河期世代の人々は、スキルや経験を積んでいくという、いわゆる「キャリア」をうまく形成することが難しかった。普通の道とイバラの道があって、イバラの道を歩かざるを得なかった人達が私の世代では本当に多かったのだ。
新卒正社員入社が叶わなかった人、例えば派遣やアルバイトだった人は、正社員と扱いが異なる場合も多く、重要な仕事をさせてもらえなかった人も多くいるだろう。スキルもなく経験も積めていない状態で退職期限が訪れることになると、その後の転職活動もうまくいかず、気づいたら履歴書や職務経歴書に多くの会社名が載っているという人もいる。
そんな感じで現在に至るまで「スキルなし」「未経験」の就職氷河期世代はざらにいるのである。
当時の「女性のキャリア」に対する価値観とITスキル
結婚することを選択したことにより、働くことから離脱せざるを得なかった女性は、当たり前だが出産・育児に自身の時間を使うこととなっていく。一生主婦でいたいと考える人もいたと思うし、それらがひと段落したあとに「また働きたい」という気持ちが出てくることだってある。
子供が小・中学生くらいであっても、まだまだ時間の都合がつきやすい仕事である必要がある。そうするとパートくらいしか選択肢がない、といった状態だ。
ただし、この件に関してはまだ「夫の育休」という概念がまだまだ全然浸透していない時代でもあったし、女性が結婚か仕事のどちらかを選ばなければならないという悪しき習慣が社会構造としてまだまだ強く残っていた時代でもあった。
だんだんと、夫だけでなく妻も働く必要がでてくるような「共働き世帯」が普通であるという世の中になっていく。
その最中で、コロナがあってリモートワークという言葉が公に使われるようになったこの時代においても、氷河期時代におけるそのような女性の多くが「デジタルスキルやITリテラシーが低い」人だったりする。
これは結婚を機に離職をした女性に限ったことではなく、氷河期世代全般に多い傾向にあると感じるところではあるが。
私のまわりの同世代の友人にグーグルドライブでの情報共有ができないという人は驚くほどたくさんいるし、資料は常に紙ベースで仕事をしていた時代でもあったので、これはもう時代的な流れである種、仕方がないことだったりもするのかな、とも。
自宅にいながら仕事をするという選択肢ができたことは喜ばしいことであるが、リモートワーク求人に応募してもこれらの女性たちは結局「スキルなし」に該当してしまうのだ。
・・・
それでも、氷河期世代の人たちの現状を打破するための可能性や戦略を考えてみないことにははじまらない。
まずは一番のハードルとなっている年齢に関して考えていく。私も、40歳前後では、その前の年齢の時と驚くほど書類審査の通過率が変わった、ということを経験している。結局「年齢」なのだ。それを前提として考える必要がある。
1. 年齢を武器にする視点を取り入れる
1-1. 人生経験を強調するポジション探し
若さを重視しない職場や、むしろ人生経験を評価する職種に目を向けてみると良いかもしれない。
とにかく考えてみよう。
教育・研修分野|若手社員向けの教育、キャリアコンサルタント。
地域貢献型の仕事|地域活性化やコミュニティ支援のプロジェクト(自治体やNPOなど)。
カスタマーサポート・コンサルティング|お客様対応の際に人生経験が役立つ職種。
1-2. シニア向け市場の成長を活用
今後、シニア層を対象としたビジネスは拡大すると予測される。自身が40代・50代であることを生かし、「同年代や上の世代の視点」を提供できる立場をアピールできるかもしれない。
高齢者向け商品・サービスの企画・販売。
シニア世代へのIT教育やサポート。
次に、やはり時間はかかるが、もう一度地道に積み上げることにチャレンジしてみよう、という視点から考えてみる。
2. 目先を変える選択肢
2-1. パート・派遣からの正社員登用
正社員にこだわらず、まず派遣社員や契約社員として仕事をスタートし、実績を積み上げてから正社員登用を狙うのも現実的な手法かもしれない、が。今現在の年齢と併せて、正社員登用を狙うに至るまでに時間がかかるというポイントを本人がどう考えるかによってくるところ。
派遣業界では、未経験職種に挑戦しやすいケースもある。
人材派遣大手の求人がやはり有力?
2-2. 副業・個人事業からのステップアップ
副業やフリーランスで経験を積むことで、キャリアチェンジの足がかりを作る手法も有効である、が。
私自身が現在フリーランスという働き方をしていることもあり、そんな簡単にはいかないことは十分承知の上である。あくまで、方法のひとつとして。
ライティング、オンライン教育、データ入力など、未経験から始めやすい副業を検討。
副業の中で得たスキルや実績をアピールし、正社員雇用を目指す。
副業やフリーランスで経験を積む、ということに関しては、前述した「デジタルスキルやITリテラシー」というスキルが必須になってくるので、どちらにしてもそれらのスキルがなければ、まずはスキル取得することが先決になってくるだろう。いずれにしても、こちらも時間を要する類の手段にはなってくる。
・・・「スキルなし&未経験」は本当に苦労するだろうということがこれだけを見ても予測できる。
一番最初の書類選考をまずは通過する!ということに重きを置いてみる。
3. 自己ブランディングと戦略的応募
3-1. 年齢を理由にしない履歴書作り
経験や成果を強調し、年齢を感じさせないアプローチを取る。←結果を出せる人間であることさえ伝えられれば、年齢は二の次である。
職務経歴書で「どんな問題を解決したか」「何を達成したか」を具体的に記載。←これが書けるだけで「スキルはあるけど経験なし」が覆る。
3-2. 業界特化型エージェントを活用
40代以上の転職支援に特化した転職エージェント(例えばミドルの転職など)を活用する。身の丈にあった土俵で勝負するということ。
専門性を生かせるポジションを紹介してもらえることが多い。
私自身は転職エージェントを使った経験はないのだが、使って転職活動をした経験のある同世代の知人に話を聞くと、やはり企業事情を知っていて適切なアドバイスをしてくれる、いわゆる伴走者的な感じで相談に乗ってくれていい、と言っていた。まぁ、こういった感想は人によるとは思うのだが、その友人はそういう感想を持っていたというエピソードのひとつ。ちなみに、30代前半の時の転職活動の話なので、40代、50代のエージェントの体験談は未収集。
そして、上に挙げた「スキルあり、だけど経験なし」を「経験ありに近い」状態にもっていくための方法も考えてみよう。
4. リスキリング(学び直し)の戦略的活用
資格取得だけでなく、スキルを実践的に活用できる学びを選ぶことが重要。
4-1. プロジェクトベースの学び
プログラミングやデザイン、デジタルマーケティングなど、短期間で成果が見えるもの。
実際の課題に取り組む形式のスクールを活用。ウェブデザイン関連のオンラインスクールなど今はたくさんあったりする。逆に自分に最適なスクールを選べるかどうかも大事。
4-2. 資格+実務体験を提供するプログラム
例えば、職業訓練校や企業と連携したトレーニングプログラム。ハローワークなどで探せるものもあるようだ。
そして結構大事なのは「ひとりよりも仲間がいると気持ちがラクになる」ということだ。
同じような経験、思い、悩みなどがあったりする人同士、もしくは自分のことを応援してくれたり話を聞いてくれたり、相談に乗ったりしてくれる、いわゆる「寄り添ってくれる人」がいることで、無駄に落ち込むこともなくポジティブなモチベーションを保ちやすい。
5. 応援してくれるコミュニティへの参加
SNSや地域の交流会、仕事や勉強している人が集うコワーキングスペースなどで同世代の転職仲間を見つける。
自治体が主催するキャリア相談会を活用。
まとめ
現状の社会構造は不公平に感じる部分も多く、特に年齢による選考での壁は厳しいもの。
ただ、今は副業やリスキリングが認められやすい時代になったことも確か。焦らず、少しずつ「できること」「興味を持てること」からスタートし、次のキャリアに繋がる道を見つけていけるよう、自分から積極的に情報をとっていくことはもちろんだが、自分のこれまでの人生ストーリーを改めて見つめなおし、企業へアピールできるように作りなおすことが重要な気がしている。