スパイダーマン、復習してもまた泣ける(後半ネタバレあり)
大ヒット公開中の「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」。
自分の周りでも観た人がとにかく多い。同じ映画観た者同士でこんなに語り合える機会ってそうそう無いぞ。
それだけ観てる人が多いってことなんだろうか?
内容が内容だけに「ネタバレする前にみなきゃ圧」もあるのかもしれない。
■サム・ライミ版を復習したら…
スパイダーマン(2002)
数あるスパイダーマン映画の中でも一番思い入れが強いのがサム・ライミ版の第一作。
その理由は単に映画の出来の良さだけでは無い。映画公開までに紆余曲折あって公開されること自体が怪しい空気すらあったのだ。
特にスパイダーマンの性質上、2001年のアメリカ同時多発テロの影響は計り知れなかった。
●911の影響
テロのニュースを知った時は、現実の出来事とは思えず放心状態になったのを覚えている。
フィクションでも描かれないような事態が現実世界で起こった。当然スパイダーマンはフィクションだが、実際するニューヨークが舞台。フィクションといえど影響は大きかった。
●影響は宣伝からさらに本編へも
下の画像は911の影響で回収された幻のポスター画像。スパイダーマンの視線の先、正確にはその瞳の中にツインタワーが映り込んでいる。
本編の編集、再撮カットの追加も余技なくされた。
ツインタワーに大きな蜘蛛の巣を張るシーンを含め長かった予告編の大部分が幻のものとなった。
●幻の映画ポスター
●幻の予告編
当時、前半の強盗シーンが全く無いスパイダーマンしか登場しない最後の三分の一を編集したショート版しか見た記憶が無い。後々になって、このロング版予告の存在を知った。
公開までのこうした経緯もあって強く印象に残っている。映画が始まってオープニングシーケンスだけで涙ぐんでいたと思う。ど頭のCIから始まるダニー・エルフマンの音楽もとにかくいいんだ…
※ココからはネタバレ注意
〜ここからはネタバレ注意の内容です〜
●セカンドチャンスというキーワード
スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームは、予告編でもお分かりの通りマルチバースのお話しだが「セカンドチャンス」がもう一つの話しの軸になっていた。スパイダーマンと闘って命を落とす宿命だったヴィラン達。今回マルチバースで集結した歴代のヴィラン達にセカンドチャンスを与えようと奮闘するお話しでもあった。
このヴィラン達への「セカンドチャンス」というマルチバースでしか成し得ない設定こそが素晴らしかった。この映画の評価を高めたのは、単なるマルチバース映画で終わなかったそういう点のあるのだろう。
というノー・ウェイ・ホームの感動冷めやらぬまま2002年版を見返す内に前述のような公開前の色々を思い出してしまい…そこに、
あの「セカンドチャンス」
という新作にしか出てこないワードが被さってしまった。
2002年版の公開直前、映画にも大きな影響を及ぼした911、もちろんお話しの中では直接語られることは無い。
だが、後半の橋のシーンで子供達が乗ったゴンドラとMJをギリギリの状況で支えるスパイダーマンにグリーンゴブリンが襲いかかるシーン。
するとそこに…
と逆にスパーダーマンを救うべく奮闘する市民の姿があった。
コレ、よくよく考えると第一作でまだ市民に認知され始めたばかりの新米スパーダーマンに対しては急な展開ではある。シチュエーション的に無理な展開では無いものの別の意図も確かにあったようだ。
このシーン実は当初のシナリオには無かったもので、911の後に追撮で加わったものだという。2002年版は、こういう形で911への追悼と市民の勇気を奮い立たせ鼓舞するような改変が加えられていたのだ。
ある意味2002年版にだけ特別に与えられた最初の「セカンドチャンス」だったのかもしれない。という色んな思いが込み上げて、映画自体を越えて今だからこそ感じられる新しい感動があった。
要はおじさん、今更このスパイダーマンを観て泣いたのである。
別に情緒不安定ってわけではない。はず。
僕が涙もろいだけなのか、スパイダーマンが素晴らしいだけなのか…
きっとその両方だ。
■ブルース・キャンベルを探せ(気を取り直して)
書いててまた涙ぐんでしまいそうだったので、気を取り直して話題を変えよう。
サム・ライミの映画といえばブルース・キャンベル探し。あんまり一般的な楽しみ方ではない…
このシリーズのどこかにちゃっかり出ている。ファンにとっては、これもまた楽しみの一つ。
●ところでブルース・キャンベルって誰?
「死霊のはらわた」シリーズの主人公、アッシュを演じた目力の強い役者さん。画像は当時の写真。
阿部寛ではない。
死霊に乗っ取られて襲いかかる自分の手と闘う超難度の一人芝居。
随所に光る顔芸の力強さ、クドさ。とにかく濃い!
「死霊のはらわた」はもちろん、主演のブルース・キャンベルファンも多く「死霊のはらわた リターンズ」ってドラマシリーズも作られるくらいの人気者なのだ。
なんとフィギュアだってある。で、凄い似てる…
スパイダーマンでもちょい役ながらその濃い演技を見せてくれる。
彼は役者さんだけではなく、サム・ライミ映画では制作も手掛けたり裏方も務めていたりする。その顔の通りバイタリティーあふれる凄い人。
新作にもひょっとして、と思ったが映画が凄過ぎてそんな気持ちの余裕はなかった…
■そしてダークマンも忘れてはいけない
あまり知られていない映画かもしれない。
でもリーアム・ニーソン主演、ヒロインはペイトン・ウェストレイクって今考えると凄い豪華キャスト。
ジャンルが難しくアクションかホラーかレンタルビデオ(今となっては懐かしい)の店員さんを悩ませたタイトルかもしれない。どっちの棚にも1本ずつ置いて欲しい感じの映画だ。
これを見ればサム・ライミがなぜスパイダーマンの監督になったのか分かるはず。似てるシーンも実際多いし、明らかにアピールしてるよね?ってシーンもある。
そして、もちろんブルース・キャンベルもちゃっかり出ている。
ココでか!っていう出方で笑う。
スパイダーマン好きには是非、おすすめしたい映画だ。
■サム・ライミについて
MCUの新作「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」の監督はなんとサム・ライミ!
「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」が発端になったようなお話しと思われる。そこでまたサム・ライミが帰って来るって…凄いなMCU。
さてサム・ライミって何回言ったでしょう?っていうくらいこの記事に登場した監督名。僕が一番好きな映画監督。
撮影現場でスーツ姿っていうのがまたカッコいい。
●きっかけは淀川長治さん
彼を知ったきっかけは日曜洋画劇場での淀川長治さんの解説だった。
失礼ながら解説の内容の方じゃなくて、彼の特有のイントネーションの方だった。
普通なら「サム、ライミ」って呼ぶところ、
彼は「サム、ライ、ミィー」ってライとミィーって不思議な呼び方をした。
それが妙に気になってしまい…それから「サム、ライ、ミィー」が気になり出して、いつの間にか大好きな映画監督になっていた。
●スパイダーマンにたどり着くまで
長編デビュー作「死霊のはらわた」から「クイック&デッド」までは濃いな〜っていう彼の映画ってすぐ分かるクセの強い作風だった。
「ダークマン」もこの濃い時期に作られた映画の一つだ。
POVの先駆けでもあり、ズーム多い、斜めアングル多い、カメラワーク激しい、下からライト当てるの好きっていう劇画タッチな特徴も好きだった。
・急に得意技を封じて別人になる
ところがだ、「シンプル・プラン」で「え、誰ですか?」っていうくらい別人になる。それはもう、事前情報なしで観たらサム・ライミの映画だなんて全く思わない程に。
過剰な演出なしで人に焦点をしぼって、会話劇で人の内面を描くドラマ作りやるぜ!って大人な作風。え、どうしちゃったの?
いつもの説明的なまでのカメラワークを意図的に封じているのが分かる。
カメラ動かしたい欲をすっごい我慢してワナワナしてるのが伝わって来るかのよう。
でも今までの彼の映画に無い精神的な駆け引き、地味だからこそハラハラする緊張感ある展開。技を封じながらも間違い無く面白い映画に仕上げてきてる。
このあたりから虎視眈々とスパイダーマンに向けて、オレできるよアピールに切り替わったような気がする。
という彼の変遷を見てきたファンだからこそ「スパイダーマン」の監督が決まった時はサム、おめでとう!!ってアメリカに花輪を送ってあげたい気分だった。
だからもう「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」は注目せざるを得ない。
ん?で、何の記事書いてたんだっけ?って執筆で一番やっちゃいいけないヤツだ…
サム・ライミ愛を語ってしまった。
今日は日曜日だから許して下さい。
〜おわり〜