10年ぶりに日本平に試合を見に行った話
忘れもしない、今から10年前のこと。浦和戦の無観客試合が決定して、日本平でパブリックビューイングをやると聞いた私は、こんなことこの先ないかもしれないと思ったのか、暇だったのか、特に理由は今となっては覚えていないけれど、同じクラスの友達を誘って見に行くことにした。というより、友達が断らなかったから見に行くことになったの方が今となっては正しいような気もする。
生まれてからずっと清水で育って、小学生の2年間だけエスパルスのサッカースクールに通っていたけれど、サッカーはそんなに好きじゃなかった。当時なでしこが優勝する前だったからサッカースクールに女の子は1人もいなかったし、何よりも運動が好きじゃないし、覚えてる限り2年間のミニゲームでボールに絡んだのは1回あるかないかくらい。大体サッカーにはろくな思い出がない。人生初観戦は4、5歳くらいの浦和vs清水のアウェーで、見知らぬ土地、殺気だった赤いユニフォームの大人たち、めちゃくちゃ怖かったし、疲れたし、勝ったら流石に覚えていると思うので引き分けか負け。父親はエスパルスが負けると死ぬほど機嫌が悪くなる。人生で初めていじめられた相手がサッカーやっていた(そんな奴が出ていたインターハイ決勝を全校応援とはいえ行ったのは数奇な縁を感じる)。
ただ、父親と弟と一緒にボールを蹴りに公園に行くのだけは覚えているから、少しだけ楽しかったのかもしれない。あと、エスパルスのサッカースクールのイベントで日本平で試合みたいなのがあったのも覚えている。実はあの芝生の上でサッカーしたことがあります。
サッカーに興味を持ち始めたきっかけは、まず1つはイナズマイレブンだった。あれはサッカーじゃないだろと言われたら確かにそうだけど、昭和の仮面ライダーと戦隊にしか興味がなかった弟が高校までサッカーを続けたきっかけがイナイレなのでたかがイナイレと侮ってはいけない。
もう1つは、父親に読めと言われた本、『ストライカーのつくり方 アルゼンチンはなぜ得点を量産できるのか』。アルゼンチン代表を応援するきっかけになったその本は、当時小学生だった私にとてつもないショックを与えた。南米の過酷な環境から生まれるストライカーたちに感銘を受け、高校の面接で尊敬する人間でテベスを答えるくらいにはめちゃくちゃ衝撃的だった。絶対に点を取るという強い気持ち、俺がヒーローになってやるんだというエゴ。かっこいい、かっこよすぎる。
サッカーに興味を持つようになった私が、それから実際エスパルスの試合を見に行くようになったらよかったんですけどね。実際には小学生のときに2、3試合見に行ったきり、無観客のパブリックビューイングを行ったのが最後だった。エスパルスはもちろん好きだし、勝ったら嬉しいし負けたらへこむし、行ってる美容室のおっちゃんがエスパルス好きだからあーでもないこーでもないって話もする。ただ、試合に行くほどじゃないっていうか……。
そんな人間が試合を見に行くきっかけは、ヤーレンズがアイスタに来るとTwitterで見かけたことだった。ヤーレンズを知らない人は今すぐ去年のM-1決勝を見てくれ。今年の3回戦の動画でも可。ずーっとしゃべっていて、ずーっと面白い。
そもそも、どうしてヤーレンズが呼ばれたのかというかというと。今年1月に放送したザ・ベストワンで、楢原さんが観客全員オレンジ色の服を着ているのを見て「君たち、清水エスパルスのフアン?」と言ったところからオファーがかかったらしい。ヤーレンズがエスパルスって言ったあ!!!!とツイートして良かったと心のそこから思いました。もしアルビレックス新潟とか大宮アルディージャとか言ってたら、きっとアイスタに行くことはなかったと思うし、国立まで見に行こうとは思わなかっただろうし、ブンブンジャーにはまることもなかった。
3月に静岡でやったM-1ツアー2023にヤーレンズがいなかったのもあり、本当に嬉しくてすぐに弟を誘った。折角だからSS席とっちゃうか、なんてやっていたら、後援会限定で写真撮影の抽選がある話まであって、ノリと勢いで後援会にまで入ってしまった。残念ながら抽選は外れたけど、試合当日ヤーレンズの二人が田子の月のブースでお菓子を売っていて、中身見てないけど3点セットのお菓子を買ってしまった。ザ・ベストワン見ました。来てくれて本当にありがとうございます。みたいなことを言ったような言わなかったような。
試合前にヤーレンズがピッチでトークをする企画があった。その日が5月3日だったから、決勝でやってた引っ越しのネタやってくれたらいいね、なんて話を弟としていたら本当にやってくれてびっくりした。あと、ss席めっちゃ近くて見やすい。すごい。ヤーレンズのyoutubeで、トークが受けてなかったら漫才しようって言ってたのは後で見て笑ってしまった
正直、満足すぎてもう帰ってもいいな、くらいの気持ちでいた。あとはエスパルスが試合で勝ってくれたら言うことなし。そんな風に考えていたのが、選手入場のときにひっくり返されることになった。10年ぶりにするサッカー観戦だったからというのもあるかもしれないけれど、めちゃめちゃカッコいい……!!というのが衝撃だった。こんな二つ名みたいなやつ読み上げありましったっけ……?みたいな。あと、サポーターの所でスタンドの映像映るのめちゃくちゃいいよね。
それから、生で見る試合の迫力。W杯、眠い目をこすりながら研究室の大きいパソコンでライブ中継を見ていたのとは当然わけが違う。ピッチを駆ける選手たち、ペナルティエリア内の攻防、こんなにドキドキワクワクするのなんてないんじゃないか。隣の弟がこういうプレイが大事、みたいな解説をしてくれたのも助かった。何より前半早々に1点入ったから安心して見れたのがデカい。今まで見に行った試合はそんなことなかったような気がする。覚えてないけど。
その日の試合は4-1で勝って、勝ちロコと王者の旗までちゃんと見て帰った。王者の旗を聞くのは清水区役所のエレベータぶりだった。
その後もまた試合を見に行きたいなーとは思いつつ、数ヵ月が経ったある日だった。国立での試合のタイトル(?)、『国立(ここ)は静岡』をみて、ヤーレンズの「ここはパリ」じゃん、と思った。これもしかしたらヤーレンズ来るんじゃないか。流石に来ないか……?とかなんとかTwitterを見てたらブンブンジャーとコラボするらしいと知った。TLのおすすめの方にオレンジの人がエスパルスについてよくツイートしてたなあ、とかバイオレットの人も来るんだ、とか。キングオージャー見てたのにブンブンジャー見ないのはもったいなかったなあと(これはマジでそう)TLを眺めていたら、ヤーレンズが来ることが発表されていた。弟に行くかどうか聞いたら行きたいと言ったので、東京まで試合を見に行くことが決定した。結構後の方で席を取ったので端っこの方だったけど、後援会入っていてよかったと心から思いました。折角ブンブンジャーとコラボをするのだから見ていった方が楽しめるかなー、と思って見始めたら結構面白くて6話くらいでシャーシロ沼に落ちました。ああいうクール系キャラがキャラ崩壊させられるの好き。あと、調達屋さんの衣装のオレンジの部分がエスパルスっぽくて地味にツボに入る。37話が怖いですたすけて。閑話休題。
9月28日、東海道線にも新幹線にも中央線にもオレンジのユニフォームの人がいた。そうなると、なんとなくそわそわしてくる。千駄ヶ谷駅の改札は、最早静岡、否、清水駅レベルでオレンジ色。本当にここは東京ですか?と思ったのもつかの間、国立競技場に来てみれば、見渡す限りのオレンジで染められていた。もちろんあの紺色のかっこいいユニフォームの方もいれば、ブンブンジャーのコスチュームの方もいたし、勿論横浜FCのサポーターもいたけど、あまりにもオレンジすぎて引いていたんじゃないかと思う。マジで静岡じゃん。テンションがバクアガってきた中で、ホームタウンの各市町とエスパルスの選手たちがコラボしたビジュアルを紹介するヤーレンズがいてめちゃめちゃびっくりした。その1週間くらい前にあったヤーレンズのベストネタライブで買った手拭い見せてアピールしたら反応してくれた。良い思い出。試合前のイベントもなかなか凄くて、調達屋さんがサッカーボール持ってきてくれたり、始末屋のボールさばきが見れたり、個人的には甲府にいたシズラがボール持ってきてるのがツボでした。ドローンショーの演出もすごかったなあ。
首位争いの直接対決ということもあって、試合は中々苦しい展開が多かったと思う。あと横浜のキーパーがナイスセーブすぎる。それでも何とか追い付いて、あの瞬間耳が爆発したんじゃないかってくらいの大歓声が響いた。もうだめかもしれないって時に追い付けるのも、エスパルスが強くなったってことなのか……(?)。国立で勝ちロコをしたかったという想いはあるけれど、J2が終わった今、本当に負けなくて良かったと思う。たらればの話は意味がないというけれど、国立以降横浜FCは1勝2分2敗と調子を崩したように見える。勿論負けた2試合はプレーオフ圏内を争う岡山や仙台といったチームだというのはあるけれど、もしあのとき……と考えると恐ろしくなる。一緒に行った弟はすごく悔しがっていて、勝てなかったのが心残りだという話をずっとしていたけど、国立で試合を見る機会があればまた行きたいと言っていた。
私はというと、残りのホームの試合を1試合でもいいから見たいと強く思うようになっていた。エスパルスは昇格するし、優勝もする。できるなら昇格する試合見に行きたいなあ、優勝は最終節までわかんないだろうけど、この前の日用事あるから見に行くのは無理そうだな、とか。色々悩んでいたら山形戦のチケットは売りきれていて、いわき戦のチケットを何とかして取ることができた。
水戸戦は引き分け、テレビで見ていた山形戦は負け、それでも次節の栃木戦勝てば昇格決定。一方栃木は負ければ降格、試合は一体どうなるのか。DAZNに入っていないので、Googleの試合結果とTwitterを交互に更新し続ける。弟は課題のレポートがほぼ白紙だった。1点入った!あとはもうなんかなんとかなってくれ、祈るような気持ちで数分おきに更新を続ける。10人になったヤバい!アディショナルタイム長い……。試合終了の文字が見えるまで、ずーっとドキドキしていた。
昇格が決まってから、すぐに順位表の勝点計算をした。横浜FCとの勝点差は2点、次エスパルスが勝って横浜が引き分け以下なら優勝。もしかして、優勝を目の前で見れるのでは……?!
11月3日はニチアサがお休みで起きられず、気がついたらお昼だった。なんかずっとそわそわしていて、日本平の坂上るのがきつかった。前半、かなりヒヤヒヤする場面もあったし、今の入ったかもと思う場面もあったし、かなりドキドキしていた。ハーフタイムには横浜FCの試合結果を調べて、まだどちらにも点が入っていないことを確かめた。ありがとう栃木。今日優勝するかもしれないという期待は、徐々に大きくなっていく。後半、セットプレーから1点が入ったあの瞬間。今日この試合を見に来て本当によかったと、心の底からそう思った。他会場の結果もちらちら確認しながら、横浜と栃木の方は引き分けで終わったという。客席は少しざわついていた。このままいけば優勝だ。主審が時計を確認してるからそろそろ終わるよ、と弟が教えてくれた。笛の音が聞こえる。気がつけば叫んでいた。スタジアムが揺れているみたい。
自分が応援しているチームが、シャーレを掲げる瞬間を目にすることができたことは、本当に嬉しいことだと思う。ずっと夢みたいなふわふわしている気持ちだった。ドリームプラザで優勝報告するというアナウンスがあって、これはもう行くしかないな、と思った。あと、翌日が祝日でよかった。
自分がこんなにも嬉しいのは、きっと生の試合を見に行ったからというのが大きいと思う。そのきっかけになったヤーレンズには本当に感謝しかない。今年のM-1優勝してほしい。別に隣の青いチームをネタにしたコンビがキングオブコント取ったからじゃないよ。
来シーズンも時間があれば見に行きたいし、ユニフォームも買いたいし、ドリプラでシャーレとトロフィーを飾るそうだからこれも行かないといけない。道中エスパルスショップ寄ってカードも買いにいきたいな。
だらだらと長文を垂れ流したいという気持ち半分、エスパルスが優勝して嬉しいという気持ちとこの気持ちに至るまでをどこかに残しておきたいという気持ち半分で夜中書き始めてもうすぐ丑三つ時になる。
『ストライカーのつくり方 アルゼンチンはなぜ得点を量産できるのか』という本の中で、名門が強い理由にはブランド力があるから、という話があったような気がする。強いチームに子供たちが入りたいと思うようになるのは、そのチームの活躍を見て自分もああなりたいと思うようになるから、という話。静岡はサッカー王国というけれど、それは少し昔の話で、清水東や東海が選手権で優勝したり、エスパルスや隣の青いチームが優勝争いをしていたり、というのは、私が子供のころにはほとんどなかった。
大学進学で清水を離れて、地元の名前を言うと、大体の人がちびまるこちゃんか、エスパルス、サッカーで有名だよね、と言ってくれる。卒論発表の前で緊張しすぎて吐きそうだった私に、昔サッカー部だったという教授が清水っていいところですよね、大会で行ったことあるんですよ、と優しく声をかけてくれたこともある。外の人から見れば未だに清水はサッカーの街で、それが私には衝撃だった。
かつてサッカー王国だった街だとずっと思っていた。エスパルスが優勝してくれたことで、またサッカー王国の街だと思えるように、そんな未来に繋げてくれたと思っている。