【未婚化・非婚化】 上昇婚志向は女性の本能 日本と海外の研究と統計データ
■ 未婚化・非婚化 ■
上昇婚志向は女性の本能
日本と海外の研究と統計データ
女性の上昇婚志向は世界中に、文化や地域や時代を超えて普遍的に存在する。女性の上昇婚志向は社会的・文化的な構築物というよりは、動物としてのヒトのメスが持つ本能や習性だ。本稿では海外や日本のデータや研究を元に、上昇婚についての現状と議論をまとめる。
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■ この記事の目次
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1:概要
2:国内の統計データ
2.1 少子化社会対策に関する意識調査
2.2 出生動向基本調査
2.3 男女共同参画白書
2.4 厚生年金保険・国民年金事業の概況
3:海外との比較データ
3.1 ISSP 家族と性役割の変化 IV
3.2 世界価値観調査 2017-2022
4:上昇婚志向についての研究
4.1 男女それぞれの配偶選好における男女差
4.2 ジェンダー平等国における配偶選好の男女差
4.3 配偶選好の男女差についての大規模再実験
4.4 アメリカ婚活市場における魅力要因の男女差
4.5 異性評価に対する年収の影響の男女差
4.6 高学歴の女性はより高収入の男性を選ぶ
4.7 貨幣経済のない狩猟採集民族の上昇婚
5:日本国内における上昇婚の割合
6:女性の上昇婚志向は本能か
7:まとめ
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1:概要
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事実として女性の上昇婚志向が存在することは、各種の統計データが示している通りだ。これは世界中で共通の傾向であり、議論はあるものの、上昇婚志向は配偶選好における人間の女性の本能だと言えるだろう。本稿では海外や日本のデータや研究を元に、上昇婚についての現状と議論をまとめる。
【Q】
上昇婚とは?
上昇婚(hypergamy)とは、女性が自分より社会階級や社会的地位の高いパートナーとの婚姻を求める行為または慣習[1]を言う。これが転じて今日では、女性が自分よりも学歴や収入の高い男性と結婚することを指して使用される[2]。いずれの場合も日本の慣用句「玉の輿に乗る[3]」と同じ意味であるが、もう少し気軽な概念として使われる。
【Q】
上昇婚志向とは?
女性の配偶選好において、自分より社会階級や社会的地位や経済的地位の高い男性を選好すること。世界中のあらゆる文化や社会に共通して見られる。女性は妊娠や出産や授乳など子供のためにより大きな生理的投資を行うため配偶者の選考においてより慎重になるという進化生物学上の「親の投資[4]」理論などによって説明されている。
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2:国内の統計データ
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女性の大多数が上昇婚を期待し、実践していることは、各種の統計から明らかになっている。
結婚相手を選択する条件には収入や職業を重視し、安定した稼得と常に自分以上の収入のある男性を求める。
これは海外においても同様だが、まずは国内のデータから紹介する。いずれも国が実施した調査を基にしたデータだ。
【少子化社会対策に関する意識調査】
以下のグラフは内閣府の「少子化社会対策に関する意識調査」[5]からの引用で、結婚経験のない者のうち結婚意向のある者(婚約中含む)に対し、結婚相手の経済力をどの程度重視するかを尋ねたものだ。女性は男性に経済力を強く求め、加齢とともにその傾向が高まる。筆者の感覚では、控え目に言っても強欲だと思う。
以下の表も同調査(少子化社会対策に関する意識調査[6])からの引用で、結婚相手に求める年収を尋ねたものだ。男性は自分の年収に関わらず「相手の収入は関係ない」とする者が一貫して多い(下表青枠)のに対し、女性はそうはならず(下表赤枠)、一貫して自分より多くの年収を相手に求めることがわかっている。
【出生動向基本調査】
下の画像は第16回 出生動向基本調査(2022年)[7]からの引用で、18歳から34歳の未婚者に結婚の利点を尋ねたものだ。赤い矢印に注目してほしい。
女性の回答は1987年の第9回調査時から2021年の第16回調査まで一貫して「経済的に余裕が持てる」が上昇する他方で「愛情を感じている人と暮らせる」が低下し、これらは近年になって逆転している。上昇婚志向は強まっているのだ。
下の画像も同調査からのもので、結婚相手に求める条件が男女別に集計されている。
すべての項目について女性の要求が男性の要求を上回るが、特に「学歴」と「職業」と「経済力」の3項目において男女の要求度に大きな差があり、女性の要求の高さが際立っている。
これらも女性の上昇婚志向が表れたものだ。
【男女共同参画白書】
以下の画像は男女共同参画白書[8]からの引用で、独身男女が結婚相手に求めることを尋ねた結果(下図)では、
ほとんどの項目で女性の要求のほうが高く、特に男性に対して経済力や雇用の安定を強く求めている。他方で、男性のほうが際立って高い要求は「特にない」である。
男性はもう少し慎重になってもよいのではないか。
【厚生年金保険・国民年金事業の概況】
国民年金第3号被保険者とは、会社員や公務員(第2号被保険者)に扶養されている年収が130万円未満の配偶者だ。これらの人々は保険料を納付する義務がない[9]。主として家事育児を担い、無職または家計補助のパート勤務の主婦または主夫が、老後に不利益を被らないようにするための制度だ。
この第3号被保険者になるために性別の制限はないが、厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」[10]によれば、その98.5%は女性である(下グラフ)。これは、妻に扶養されている夫に対して、夫に扶養されている妻が65倍も多く存在していることを示している。この圧倒的な差もまた、女性の上昇婚志向の表れだ。
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■ 海外との比較データ
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女性が経済的な上昇婚を求める傾向は世界中のあらゆる文化や社会で見られる。
とはいえ日本は特に極端だ。結婚する女性のほぼすべてが上昇婚し、その結果として一家の主たる稼得者にならず、家事育児を主に担うという古い女性のジェンダーロールを再生産している。海外と比較することで、日本の異常な状況が浮き彫りになる。
【ISSP 家族と性役割の変化 IV】
国際比較調査グループISSP[11]による「ISSP 2012 家族と性役割の変化 IV[12]」をもとにニューズウィーク日本語版が報じた[13]ところによれば、
日本は夫と対等以上に稼ぐ妻の割合は5.6%と世界最低レベルであり、教育社会学者の舞田敏彦博士はこの状況について「国際的にみるとアブノーマルな部類だ」と述べている。
【世界価値観調査 2017-2022】
世界価値観調査(World Values Survey)[14]の2017年から2022年のデータ[15]によれば、25歳から54歳の有配偶女性のうち「自分が主たる家計支持者だ」と応えた人の割合は、日本ではわずか2.4%に過ぎない。
こちらも先述のISSPと同様、国際比較において日本女性の上昇婚志向が極端なものであることがわかる。
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■ 上昇婚志向についての研究
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女性の上昇婚志向は、配偶選好の性差の問題として社会学や進化心理学、進化生物学のテーマとなっており、世界中で興味深い調査や研究の結果が発表されている。結論から言えば、女性の上昇婚志向は地域や文化を時代を越えて、世界中に存在する。このことから強く推察されるのは、上昇婚志向はヒトのメスの動物的な本能だろうということだ。
以下ではいくつかの研究結果を紹介するが、紹介する論文の選択にあたっては珈琲国王[16]氏の2つのnote記事[17]を参考にした。
【男女それぞれの配偶選好における男女差】
アメリカ心理学会(APA)の「心理学への初期キャリア貢献に対する特別科学賞」や「特別科学者講演賞」などで知られる進化心理学者のデイビッド・バス博士[18]らの研究グループが世界33カ国の30歳未満の若年男女を対象にした研究では、
文化圏を超えて女性は男性よりも結婚相手の経済力や資源獲得能力を高く評価することを明らかにした[19]。
一方の男性の配偶選好では、自分より若いことや肉体的魅力を文化圏を越えて高く評価した。
配偶選好には文化圏を越えた明確な性差があり、女性は男性に経済力を求め、男性は女性に肉体的魅力を求める。
この研究は6つの大陸と5つの島にある33カ国の10,047名を対象とした大規模なものであり、女性の上昇婚志向の普遍性が明らかになった。
【ジェンダー平等国における配偶選好の男女差】
配偶選好において女性は男性の稼得能力を高く評価することを明らかにしたデイビッド・バス博士らによる男女の配偶選好における性差の調査データを利用して、グラスゴー大学神経科学心理学研究所のチャン・リンシャン博士らが行った研究では、ジェンダー平等の進んだ国でもその他の国と同様に女性は男性の稼得能力を高く評価した[20]。
以前の研究で明らかにされた「女性は男性に経済力を求め、男性は女性に肉体的魅力を求める」という配偶選好における男女差は、文化的社会的に割り当てられた性役割の影響が示唆された。
しかし今回のチャン博士らの研究では、男女平等が進んだ国とそうでない国で、配偶選好における上述の男女差に有意差がないことが明らかになった。
チャン博士らの研究は、世界中で普遍的に見られる「女性は男性に経済力を求め、男性は女性に肉体的魅力を求める」という配偶選好における性差が、文化的社会的に構築されたものであることを否定した。これは女性の上昇婚志向が本能によるものであることを強く示唆するものだ。
【配偶選好の男女差についての大規模再実験】
ここまで紹介してきたバス博士らの研究もチャン博士らの研究も、元となる調査データは1990年以前のものであり、最新の状況を表していない。そこでカリフォルニア大学サンタバーバラ校のキャスリン・ウォルターらは、より新しく広範な45カ国、N=14,399のデータを用いて、配偶選好の男女差について過去と同様の研究を実施した[21]。
この結果、女性は男性よりも経済的に余裕のある年上の相手を好み、男性は女性よりも魅力的で若い相手を好む、という配偶選好の男女差は普遍的で、依然として強固であることがわかった。
男女間の平等が進んだ国では男女とも自分と近い年齢の相手を選好するようになるが、男女平等の進行度による変化が有意に観測できた選好要因は年齢だけだった。
【アメリカ婚活市場における魅力要因の男女差】
婚活市場では、望ましい特性を持つ人はより強い交渉力を持ち、パートナーを選ぶ際により選択的になることができる。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の心理学教授メリッサ・ファレス博士らは、男女がそれぞれ望ましいとする結婚相手の条件がどのように異なるか、アメリカ人 N=22,815 のサンプルで調査した[22]。その結果が以下の表である。
■ 結婚相手に求める条件について「望ましい」または「必須」と応えた割合
男性 女性
優れた容姿 92% > 84%
細身の体型 80% > 58%
安定収入 74% < 97%
高収入 47% < 69%
自分以上の収入 24% < 46%
仕事上の成功 33% < 61%
望ましいまたは必須とする条件は男女間で異なっており、女性は結婚相手となる男性の収入に厳しい条件を課していることがわかる。男性は女性に対して容姿や細身の体型を求めるが、それは女性も同様であり、その差は大きくない。一方、女性は男性に対して収入や成功を求める割合が大きく、男性が女性に対する場合との差は大きくなる。
【異性評価に対する年収の影響の男女差】
親の投資理論[23]によれば、男性は若さと多産を特徴とする配偶者を求め、女性は自分と子孫のために投資できる資源をより多く持つ男性を選好する。英オックスフォード大学のワン・ガンリン博士らのグループは、アメリカ、中国、ヨーロッパのサンプルで研究を実施し、異性の魅力度を評価するにあたって年収が与える影響を明らかにした。[24]
この結果、男性を評価する女性では、女性を評価する男性に比べ、年収の影響を約1,000倍強く受けることがわかった。この結果は、年収が高い男性では、女性よりもはるかに容易に低い身体的魅力を相殺できることを示している。また、男性の魅力を評価する女性では、評価者のBMIや年齢がこの効果に影響を与えることはなかった。
【高学歴の女性はより高収入の男性を選ぶ】
教育における男女格差が逆転した米国では現在、男性よりも女性のほうが高学歴になっており、これにともなって結婚市場も変化している。加ブリティッシュ・コロンビア大学の社会学准教授ユー・シエン博士らは、1980年の米国国勢調査と2008-2012年の米国地域社会調査のデータを用いて、新婚夫婦の学歴と収入の非対称性を検証した。[25]
学歴においては女性が高学歴男性と結婚する傾向から、女性が低学歴男性と結婚する傾向へと反転した一方、女性が自分より高収入の男性と結婚する傾向は時代を超えて持続していた。さらに、いずれの時代においても、妻の教育水準が夫と同等かそれ以上の夫婦の方が、妻の教育水準が夫より低い夫婦よりも、女性が高収入の男性と結婚する傾向が強かった。
【貨幣経済のない狩猟採集民族の上昇婚】
ここまで紹介してきた女性の上昇婚についての調査や研究はすべて、貨幣経済の元での経済上昇婚を扱っている。タンザニア中北部の先住民族であるハヅァ族[26]は、現代でも伝統的な狩猟採集による自給自足の生活をしている。そのハヅァ族の男女の配偶選好について、英ケンブリッジ大学のフランク・W・マーロウ博士の研究がある。[27]
マーロウ博士の論文によれば、ハヅァ族の男性は女性の選好において妊孕能力と勤勉さを重視し、女性は男性の選好において知性と狩猟採取能力を重視するという。狩猟採取社会における狩猟採取能力は、貨幣経済社会における稼得能力に相当する。資源獲得能力の高い男性が選好されるのは、狩猟採集社会でも貨幣経済社会でも同様だ。
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■ 5:日本国内における上昇婚の割合
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ここまで見てきた各調査を元に、日本における女性の上昇婚の割合を推察してみる。国際調査 ISSP 2012「家族と性役割の変化 IV」で「夫と対等以上に稼ぐ妻の割合」は5.6%、世界価値観調査 2017-2022で「自分が主たる家計支持者だ」と答えた人は2.4%だった。これらを反転すれば、それぞれ94.4%と97.6%だ。また、第3号被保険者の女性比率は98.5%である。
調査名 上昇婚の割合
ISSP 2012 94.4%
WVS 2017-2022 97.6%
年金事業の概要 令和2年度 98.5%
上の表はあくまで参考値であり正確なものではないが、実態は表れているだろう。
日本における女性の上昇婚の割合は90%台後半であり、ほぼすべての結婚において女性は上昇婚していることになる。これは身近な範囲で観測できる肌感覚とも整合的だ。日本の女性は収入を夫に依存し、夫や家族を養わないのが当たり前というのが現状だ。
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■ 6:女性の上昇婚志向は本能か
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ここまで見てきた各種の調査や研究でわかるとおり、女性の上昇婚志向は世界中で、文化や地域や時代を超えて普遍的に存在する。女性の上昇婚志向は社会的・文化的な構築物というよりは、動物としてのヒトのメスが持つ本能や習性であると言える。親の投資理論[28]が説明しているとおりだ。ヒトも他の動物と同じく、本能で配偶選好する。
女性は男性の収入に発情する。男性は女性の若さに発情する。これらは両者とも、ヒトの当たり前の本能であり習性だ。つまり個人の選好の問題ではないため個人の責任に帰すことはできないし、存在を無視することもできない。そして上昇婚は法規制もされていない。そのようなものだと理解するほかないのだ。
・女性が自分より高収入の男性と結婚するのは当たり前。
・それを強欲や傲慢だなどとは考えたことがない。
・むしろ自分より低収入の男性との結婚は考えられない。
・低収入の男性には魅力を感じないし、何ならキモい。
上記は、筆者の周囲の女性に上昇婚志向について質問してみた結果だ。サンプルは少ない(N=3)が、肌感覚にも合う率直な意見であると思う。
筆者は男性なので、大人であるにもかかわず他人の収入を当てにして臆面なくいられる女性の強欲さや、自分が高収入男性と釣り合うと考えられる傲慢な感性を異様なものに感じてしまう。
しかし、当の女性は上昇婚を当たり前のものとして気にもしていないし、そもそも日頃から自分が高収入男性を好んでいる(逆に言えば低収入男性を嫌っている)と意識することもない。自分が強欲や傲慢に見えている可能性にも気付かない。なぜなら上昇婚志向は、誰に習ったわけでもなく自然に身につくヒトの本能だからだ。
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■ 7:まとめ
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上昇婚は女性の本能だ。しかし、女性が本能を抑えて理性で判断し、現状で男性がしているように稼得能力の低い夫を養うようになることは期待できない。なぜならそれは、どんなジェンダー先進国でもごく一部の女性しか達成できていないことだからだ。もちろん、婚姻は個人の自由に属することであるため、他者からの強制もできない。
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あなたが平均かそれ以下の収入しかなく、それでも結婚を望む場合、自分よりはるかに収入の低い女性となら結婚できるだろう。しかしそれでは男性にとって不平等条約に等しい。結婚を避けることと、一人で自由に生きることをおすすめする。
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