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ある女子高生の一言から始まった私のウィッグ生活。半年間で見えてきたウィッグの本当の大変さ。

去年の夏休みにこんな記事を書いた。

この記事はかなり反響があり、多くの人がシェアをしてくれた。
これを機に高校の校則プロジェクトの話もいただいた。
そんな中、記事を読んだある女子高生からメッセージが届いた。

「私は人と同じになりたくてウィッグをかぶっています。
その大変さを誰にもわかってもらえません。
髪を染めたい子の話題はよく出ますが、自分の髪を隠したい子が話題に上がることは少ないです。誰とも話し合えないのが、とても辛いです。」

女子高生からのメッセージの一部を抜粋

私は彼女がどこの誰だか全く知らない。彼女がウィッグをかぶる背景もわからない。しかし、勇気を持ってメッセージを送ってきてくれたのだ。
私もウィッグ生活をしてみたら、彼女と同じ景色を見ることができるだろうか。
とりあえず、やってみよう、と思った。

「同情とか気遣っているとかではなく、あなたの感じていることに興味があるので、私もウィッグをつけて生活をしてみます。感じたことや気づきを定期的にお伝えても良いですか?」

尾崎からの返信メッセージの一部を抜粋

そこから、彼女との「気づきメッセージ交換」が始まった。

髪を奇抜な色にした場合とウィッグの場合の違いを知りたかったので、髪は目立つ色に染めた。

風が吹くとすぐズレること、長時間つけると付け根が痒くて痛くなること。暑い日は髪が非常に痒いこと、お辞儀をすると脱げそうで深く頭を下げられないこと。帽子はすごく安心する。オンラインは絶対バレないから、最高。
最初は物理的、身体的なストレスばかりに私は目がいってしまった。

しかし、本当のストレスは全く違うところにあることに3ヶ月目くらいから徐々に気がついていく。

初対面の相手がウィッグに気がつくと、一瞬で空気が変わる。
「この人は何かを隠している」が「触れたらこの人を傷つけてしまうかもしれない」とピリっとした緊張が走るのだ。

人の印象は3秒で決まる。そのうちの視覚情報が50%以上。
私の第一印象は「気を使わなければならない人」になる。

髪を赤く染めている時も相手から警戒されるが、その時の雰囲気とは全く違う。
赤髪で、個性を剥き出しにしている時は「一般常識(TPO)やビジネスルールが通用する人かどうか?」がわからず探っている様子。
ウィッグで何か個性(コンプレックスやセンシティブな状況)を隠している時は「自分が気がついていること、気になることを悟られてはいけない」と目線に気をつけたり、動揺や疑問を隠そうとする様子。

両方とも隠し合いをするので、なんとも奇妙な時間になる。

このような場合「実はウィッグです」と自ら言えば解決するのだが、伝えるタイミングが実に難しい。赤髪は伝えなくても、見たら一瞬でわかるから、こんな悩みはない。

昔から知っている人なら「実は、今ウィッグつけててー」と軽く言えるのだが、初対面の人に「最初にお伝えしておきたいことがありまして。実は私ウィッグなんです」というと非常に重くなってしまう。。
さらに、相手が気づいていないことだってある。

私の肌感覚だと、女性はほぼ全員気がつくが、男性は6割が気がつかない。
気がついていない人にわざわざカミングアウトをする必要があるのだろうか、と悩む。

5ヶ月目にもなると、ウィッグに自分が慣れてしまい、つけていること忘れ、アポが終わった後に「あ!!!伝えるの忘れた!」となる。

「あの人ウィッグだったよね。。。何かあったのかな。。」とアポ後にすごく気を使わせて、心をモヤモヤさせて帰らせてしまうと思うと、申し訳ない気持ちになる。

そんなことを彼女とたくさん話した。

「そーなんですよ!アーティストもつけるし、おしゃれでつけることもあるけど、病気でつけることもあるので、めちゃくちゃ気を使われるんです。
小学校の時は友達が真っ直ぐ「なんでかつらなん?」って聞くから「みんなと違うから」って答えてました。聞かれるのが嫌な時もあったけど、聞いた後でも何も変わらず遊んでくれて嬉しかったんです。でも、大きくなるにつれて、気を使って、距離を取られることも多くて。それが地味に傷つきます」

彼女からのメッセージの一部を抜粋

彼女はこの春、海外の大学に進学した。

みんな違う場所に行ったら、みんなと同じようになりたいと思わなくなるかもしれないという希望を持って行ってきます。尾崎さんとやり取りをしていて、私の心持ち一つで現状を変えられるなんじゃないかと思いました。一度も顔を見せませんでしたが、友達になってくれてありがとうございました。行ってきます。次に帰ってきたときは直接会いたいので、連絡します。

彼女のメッセージの一部を抜粋

私は結局、彼女の顔も名前も知らない。
メッセージやオンライン(声のみ)で半年間やり取りをしただけ。
共感するわけでもなく、寄り添うわけでもなく、ただ考えたことや感じたことを伝え合った。

正直、彼女の容姿にそこまで興味はない。
彼女は聡明で、素敵なキャラクターを持っていて、やり取りはとても楽しかった。ただお互いに考えや想いを語り合っただけだったが、彼女のおかげで「ウィッグをつけた時に人から向けられる視線」を私はほんの少しだけ体験できた。
とても感謝している。

そのことを伝えて、彼女との連絡は終わった。

しかし、「夏がマジでエグい。夏を経験せずにウィッグ生活を語って欲しくない」と彼女が以前嘆いていたから、もうしばらく私はウィッグと赤髪の生活をする予定だ。

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