「弟子にしてください!」と言ってきた渡邊雄大先生との小学生起業家プロジェクトin北海道
会ったことがない方から毎日平均1人「お話をしたい。」と連絡がくる。
しかし、私のブログや記事を全部読んで連絡をしてくるのは50人・・いや、100人に1人だ。
私のことを知った上で「話したい」と言ってくる人の言葉はラブレターのように熱く、こっちが会わずにはいられない気持ちになるものだ。
渡邊雄大先生もそうだった。
「尾崎さんの弟子にしてください!」
ミーティングの最後に真剣にそう言った。
私は必死にニヤケを押さえた。
だって「弟子になりたい」だなんて、人生で初めて言われたんですもの。
頭の中では亀仙人のような気持ち。ウヒョウヒョとスキップしたい。
だが、今はこの気持ちを隠さなければ。
なぜなら、私は今日から師匠なのだ。
師匠らしく、ドンと構えていたい。
「弟子入り希望は多いんです」「私の修行は厳しいぞよ」くらいの雰囲気を出したいと言う欲まで出てくる。
しかし、
「あの。。。すいません。私、感覚でやっちゃってるんでかめはめ波の出し方はわからなくて。。むしろ、どうやって私が出してるか近くで見て、逆に教えてもらって良いですか?」と情けないことを言ってしまう。
いずれバレる化けの皮は最初から被らない方が良い。
無駄な見栄は自分の時間とエネルギーを無駄に使うから。
そんなこんなで、初弟子の渡邊雄大先生とのプロジェクトがスタートした。
1年間のプロジェクトなので、まだ途中だが、すごく面白いので、ポイントを3つまとめてみた。
場所:北海道 中富良野小学校4年生(28名)
テーマ:「小学生起業家誕生」(係活動を通した形成者育成)
概要:特別活動の学習指導要領の目標の中に、「形成者としての見方・考え方」という言葉がある。「形成者」とは、「自分 で何かを創り出し、生活を楽しく向上させる人」と私は考えている。これは、学級生活で考えると、「学級を楽しくする ためにどうしたらいいかなぁ。」とか「こんなことやってみたいなぁ」と思いながら、過ごすことである。
この単元では、子どもたちが自分たちで楽しいクラスを作るという思いが強くなるようにデザインしていく。係活動を通して、子どもたちの自主性を存分に伸ばすために、「安定したシステムを作ること」「新しいことに挑戦できる機会を与えること」 「褒め合い認め合う時間を作ること」を意識する。
「オセロの角を取った」出会いのストーリー
4月に計画を立てる際、私と子どもたちの出会いのストーリーを作った。
「先生が決めて呼んできたので、尾崎さんにアドバイスをもらいましょう」では面白くない。
子どもたちが「尾崎さんと言う人にアドバイスをもらいたいです」と言わなきゃ。
係活動を会社活動として捉え、より社会に接続した活動を行う中で、まず最初にぶつかる壁は「何から始めたらいいの?」だ。
子どもたちは誰かからアドバイスをもらいたくなるはず。
タイトルを小学生起業家にしたこともあり、「社長さんに相談したい」と子どもたちは言った。
そこで渡邊先生は社長✖︎公務員として活動している「尾崎」という人物を見つけて、呼んでくる。
しかし、渡邊先生は呼んでくるだけ。私を説得するのは子どもたち。
私の動画を事前にみたり、調査をして子どもたちは口説く準備を始める。
1年間関わり続けるかどうか、この時私は本当に決めていなかった。
求められていない所に時間を割くほど、暇ではないので。
6月、初めてオンラインで子どもたちと繋がった。
緊張した面持ちで「アドバイスをしてほしい」と伝えてきた。
私は「なぜ私でないといけないのか?」「私にどんなことを求めているのか?」など質問をぶつけた。
一瞬固まるが、子どもたちは入れ替わり立ち替わりカメラの前で「理由」を語り続ける。
私が普段仕事を引き受ける際の判断軸を紹介し、それを満たしていたことを伝え、「アドバイザーを引き受けましょう」と答えた瞬間、画面の向こうでガッツポーズが見えた。
この子どもたちの選択・決定による出会いのプロセスは半年間の活動を振り返った時に「あの時に実はオセロの角を取っていたのか!」と渡邊先生と言い合ったくらい、活動がスムーズに面白く展開できた重要なポイントだった。
先生を介さず、直接信頼を築くチャット交流
子どもたちの企画や活動はclass cloudというアプリで逐一アップされる。
それに対して私はコメントを残していく。
もちろん、渡邊先生も見ることができるが、介入はしない。
あくまでも私と児童一人一人がやり取りをする場なのだ。
これがものすごく良かった。
先生を介すと、子どもたちは先生を見る。
先生がいないと、子どもたちは私を見る。
一人一人の自己紹介に返信をし、係活動の企画案にアドバイスをし、実施した際の動画にリアクションやコメントを残していく。
会えないけど、そうやって少しずつ関係を作っていった。
アイデアの面白さとフィードバックの真剣さを感じる対面授業
先週、ついに北海道の中富良野小学校で対面授業をしてきた。
特別活動の公開研究授業ということで、多くの教育関係者や先生たちがいたが、北海道入りした夜、町の方に講演を行ったこともあり、保護者や中学生や教育に興味があるシニアの方も見にきてくれた。
4時間目はアイデア体験。
「もし尾崎が図書係だったら」をテーマに11個の体験展示。
「この11個のアイデア作品は本とあるものを掛け算しています。何を掛け算しているか考えながら、まずは遊んでみてね。」と遊び方を紹介。
その後、30分かけて、各々好きな展示の前で体験を行う。
ずっと同じ場所で遊んでいる子もいれば、色んな展示を周っている子もいた。
30分の自由体験終了後に「何と掛け算しているでしょうか?」と答えを子どもたちに聞いていく。子どもたちが感じたことが全て正解だと伝え、最後に「私の意見としては⭕️⭕️と掛け算しました。」と伝える。
私のアイデアに触れ、ワクワクしながら思考してもらった後、アイデアの掛け算フレームワークを伝え、カードにして各班に配った。
5時間目は「尾崎さんのアイデアを自分の係活動に落とし込むと?」を考え、提案する。
5時間目はアイデアカードを見ながら、自分たちの係活動の企画を考える。
出来上がったら、私の前に立ち、子どもたちがプレゼンをする。
私は企画を聞き、アドバイスを行う。
ここで私は本気でフィードバックを行うため、「楽しく面白い表情」から「真剣な表情」に変える。
子どもたちのアイデアに対して「お金についてはどうするの?」「何をしたいのか?」と伝えていく。
私のアドバイスを受けた後、席に戻って子どもたちはアイデアを練り直すのだが、誰1人心が折れている子がいない。
体験→ワクワク→思考→フレーム→自分の係活動への落とし込み、という2時間の流れの中、渡邊先生のフォローもあり、続々と企画を完成させていく。
研究授業の後、見学されていた他校の先生方から感想をいただいたのだが、
「子どもを子ども扱いしていないことに驚いた。さらに誰も泣いたり拗ねたりしていない。」
「今日のような何度でもチャレンジできる環境を用意しておくと、安心して失敗できるんですね」
「これがこれからを生き抜く力なのだと感じた」
「アイデアの作り方を言葉では説明できるけど、私は作ることはできない。まず触って、アイデアとは何か?を子どもたちが体験できたのが良かった」
「最初に方法のインプットをしがちだが、体験を初めに入れることで子どもたちも理解をしやすかったのではないか?」
と多くのコメントをいただいた。
とはいえ、内心は心配だった。
うまく伝わっているのだろうか。。。
翌日、飛行機に乗る前に子どもたちにこんな文書を送った。
渡邊先生は「尾崎さんからメッセージが来ています」とも「返信を書きましょう」とも、あえて言っていないとのことだった。子どもたちが自ら気づき、自らの意思と言葉で返信を書いてくれた。
※子どもたちのメッセージは途中、少し省略している部分があります。
何に驚いたかって、伝えたいことが全部ストレートに子どもたちに伝わっていること。
私のメッセージが全部、子どもたちの心と頭の器にストンとおさまっていること。
もちろん、渡邊先生と子どもたちとの日々のやり取りや学習、学級経営がうまく行っていることは土台としてありながらも、「自分たちが決めて、口説いて呼んだ来た」という導入で器を作り、先生を介さず、直接信頼関係を結んだチャット交流で器を広げてきたからこそ、対面でのアイデアの面白さとフィードバックの真剣さの衝撃を受け止められる器が出来上がっていたのだと私は考える。
これから残り半年間、子どもたちがどんな活動を作り上げるのか、活動を通して、どんな「知らなかった自分」に出会うのかが楽しみである。
そして来年3月、初弟子の先生が私との活動づくり(修行)にどんな感想を持つのかも非常に楽しみである。
余談ですが。
公開授業は4、5時間目でしたが、1時間目からみんなと一緒に授業を受けました。
転校生のように挨拶し、算数の授業を一緒に受けて、12平方㌢の図形を作りました。
算数って、めっちゃクリエイティブやな、とワクワクしました。先生たちの授業を普通に受けてみたいなと思いました。そこからまた新しいアイデアが生まれそう。