アフターコロナの事業はどうあるべきかなんて全く分からないが、よだれ垂らしながら、馬に乗るのが良いと思ってる。
「アフターコロナでビジネスはどう変わると思いますか?」「自分の事業をどう変化させますか?」「ポイントは何ですか?」とここ数日の取材で何度か聞かれ、ものすごく困ったので、自分の考えを整理がてらつらつらと書いてみることにした。
3月、stayhomeで企業のテレワークが広まりかけた頃、多くの方から「今までテレワークを推進してきたんだから、専門家としてテレワークコンサルの営業したらいいやん!今がチャンスよ。」「やっと皆んながテレワークをやるべきだって理解した。ようやく尾崎さんがやりたいことができる時代がくる」とアドバイスを頂いた。
その時、私は全く逆のことを考えていた。
「あと3か月たてば、私が四年かけて積み上げてきたテレワークのノウハウや課題や解決策は価値を大幅に失う」「みんながやるべきだと思っている中に私の活路はない」
4年前、日本でテレワークをやっている人が少なかったから、テレワーカー育成の教育プログラムを実施し、シェアオフィスでテレワーカーも企業もサポートし、成功事例を複数持ってる私が語るリアルに価値があった。
しかし、みんながテレワークを始めたら、事例はあふれ出し、課題解決方法もたくさん生み出されるだろう。
多くの人が「テレワーク経験者」になり「テレワーク改善者」になり、「テレワーク専門家」を語れるようになる。
いいことだと思った。
でも、だからこそ、私は専門家だと名乗らないほうが良いと思った。
そもそも私はテレワーク専門家でもテレワーク伝道師でもない。そこにモチベーションはないのだ。私が専門家を大々的に語るのは本気でやり抜いてきた人に逆に失礼。
私は「通勤しなくてよい働き方をつくりながら、通勤したくなる場所をつくる」という矛盾したものに面白さを感じてシェアオフィスを運営している。
行かなければならない場所を行きたい場所にすることと、行かなくてもよいけど行きたくなる場所をつくることは似てるようで違う。
一番の違いは「人が先」か「文化が先」か。
嫌々でもその場所に来なければならない人が多いと、空間の文化を作りにくい。先に「既存の人」ありき、だからだ。
私達は空間の文化をつくり、そこに来たい人だけが働きにくる形をとっている。先に「文化や価値観」ありきなのだ。
価値や文化を先に出せるのは強い。
シェアオフィスも企業採用に似ている。
合う人に入居してほしい。そしたら、中で育って、繋がって、新しい事業を一緒に生み出せるから。
私達は様々な企画やプログラムで、その価値観を発信してきた。
おかげで面白い人たちが集まるようになった。
在宅で働ける人を増やし、家から出て仕事してもらう必要がある矛盾したビジネスモデル
もちろん、全てうまく行っているわけじゃない。
テレワーカーを育て、テレワーカーを採用してくれる企業を営業して探して、説明会を実施して、無事採用が決まっても「在宅で」となる方もいる。
私の事業は育成でも仲介でもない(そもそも説明会実施なので、紹介事業していない)ので、マネタイズできるのはオフィス使用料だけなのだ。
つまり、テレワーカーにも企業にも「来たくなる場所」にしなければ、Tristは事業が成立しない。
在宅で働ける人を増やし、家から出て仕事してもらう必要がある。
この一見矛盾しているビジネスモデルこそが、私が四年経っても飽きずに、シェアオフィスTristに想いを持ち、アイディアが湧いてくる理由であり、Tristがコロナ前もコロナ後も驚くほど何も変わらない理由でもある。
ビジネスは安定した方が良い。もちろん私だって安定したいと思って頑張ってる。そのためには専門性を持った方がいいとも思っている。わかりやすさはいつの時代も大切だから。
しかし、安定したら面白くないし、正解があるなら、誰でもできるから私の勝てる見込みはない。
結局Tristはどんな場所かわからないし、いつも不安定で、私は何の専門家でもない。だから、どんなに社会が変動したって、変わらないのだ。そもそも形がないから変わりようがない。
矛盾をなくす、矛盾を正すのではなく、矛盾を生み出し、それを飲み込む事業の方が私は面白いし、実は継続しやすい気がしている。
アフターコロナでビジネスはどう変わりますか?何が大切ですか?とここ数日の取材で何度か聞かれた。
私は情報を常に得ているわけではないし、そもそも知識もないし、考えられる頭もない。雑誌を見て「へー、そうなんやね」と思っているくらい。自分の中で何も変わっていないので、答えようがない。
私は変化や矛盾の中で生きているのが当たり前になっている。
いつだって社会はコントロールできず、変化がなく、矛盾がない世界なんてない。だから、予測がつかない社会から生まれた矛盾に飲み込まれる前に、自分たちが矛盾を生み出し、それを飲み込む事業を楽しみながら作り続けていきたい。
そして、それを可能にするのは「めっちゃ面白いこと」なんやと思う。ビジネス軸でも社会貢献軸でもない。全く別軸の「よだれ垂れるくらい面白いか?」「馬乗りたくなって、走りたくなるくらい興奮するか?」
社会のため、でも経済のためでもなく、まずは「自分がめちゃくちゃ面白い」ことをする。それは全ての変化と矛盾を飲み込むと思う。
あくまで、私の価値観からくる答えやけど。
だから、私はいつもよだれ垂らしながら馬に乗っていたい。
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