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クドイのよ。
いきなりですが、とりあえず次の2曲を聴いてみてください。
①Boléro【Ravel】
②Symphony No.7【Shostakovich】(リンク開始から21:00あたりまでで)
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みなさんは、ヴォイチェフ・キラールをご存知でしょうか?以前、私が書いた「人のふんどしで相撲を取る」の記事の最初のピアノ協奏曲の作曲者で、現代ポーランドを代表する作曲家です。2013年に81歳で亡くなってしまいましたが。
彼の最も有名な仕事は 、ロマン・ポランスキー監督の映画「The Pianist(邦題:戦場のピアニスト)」の音楽担当です。アカデミー賞やパルム・ドールを受賞したのでご覧になった方も多いと思います、2002年の作品でした。
私も何度となく涙しながら観た作品です。ドイツ軍将校に自分がピアニストであることを証明するために廃屋で弾いた、ショパンの「バラード第1番ト短調」は何とも言えない、強いて言うならば「やるせなさ」を感じる演奏でした。
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このキラールの書いた作品に「Exodus(エクソダス)」という大編成オーケストラに合唱(混成+児童)を伴う曲があります。キリスト教などに詳しい方にはお分かりだと思いますが、エクソダスとは日本語では「出エジプト記」と訳されている、旧約聖書のうちの1冊で、神ヤハウェに半ば無理やり命令されたモーセが、エジプトの迫害を受けていたヘブライ(イスラエル)人を約束の地カナンまで導いていくということをメインにした内容となっています。有名な十戒や過越、モーセ(ヤハウェ)が起こす「海割り」などは全てこの出エジプト記に書かれているのです。
この曲を作曲するにあたりキラールには、①ラヴェルの本家「ボレロ」、②ショスタコーヴィチの交響曲第7番第1楽章の「ボレロ」、に次ぐ「第三のボレロ」を作曲するという意図があったそうです。確かに、同じ旋律を繰り返すという点ではまさにボレロなのです
が、クドイのよ。曲が。しかも大袈裟。
でもです、何度か聴いているうちにわかってきたのです。なぜキラールがこのような手法をとったのかが。
モーセ一行は無謀ともいえる大脱出を成し遂げたのです。本当に存在するかどうかもわからないカナンまでの道のりを、存在したとしてもいつになったら辿り着くのかもわからない道のりを、幾多の困難を奇跡で乗り越えて。一説にはモーセは数十万~数百万という人たちを引き連れて、40年かかってカナンに辿り着いたと言われています。
それに比べたら、高々30分足らずのこの曲を聴くことのなんと楽なことか!
③Exodus【Kilar】
ちなみにですが、キラールはこんな素直な曲も書くんですよ。
Polonase
映画「Pan Tadeusz(邦題:パン・タデウシュ物語)」より
おまけ
こんなボレロも。あの奇天烈なブルガーコフの小説を映画化したものです。
The Master and Margarita(邦題:巨匠とマルガリータ)【Schnittke】
https://youtu.be/Fv78Jd3NSig?t=449