いろはにほへと
天才的だとは思います。仮名五十音を全て一回ずつ使って歌を作ったのは。
色は匂へど 散りぬるを
我が世誰ぞ 常ならむ
有為の奥山 今日越えて
浅き夢見し 酔ひもせず(ん)
でも、21世紀にはマッチしているとは言い難いと思います。例えば箇条書きなどする時に(それぞれを区別するためにその頭に)、「①、②、③ · · ·」とか「ⓐ、ⓑ、ⓒ· · ·」などど書いたりしますが、私が学生くらいまでたまに(特に年配者)が「㋑、㋺、㋩· · ·」を使ってたりしてましたが、近頃では旧態依然なお役所の作った資料くらいでしか見なくないですか?
昔の人(明治、大正くらいまで?)はイロハが主流だったんだと思いますが、少なくとも私の親ですら仮名を覚えるためにイロハを使ってなかったようです。その息子である私なんかは当然、小学校では習ってないし、なんなら習ったのは中学だか高校だかの「古文」の時間だったのかもしれません(または、習ってないのかもしれない)。
私は自称「an all-rounder in music」ですが、正直言って、いまだに音階名をイロハで表現することに慣れません。私は3歳からヴァイオリンを習い始めたので「ひらがな」よりも「ドレミ」を先に覚えたのです。鉛筆で五線紙の一番下の線のまたその下に上の線と等間隔になるように短い横棒を引いてそこにグルっとしたヤツ(つまり「土星」状態)が(全音符の)「ド」だよ、みたいに。で、音符を書く度にそこに色鉛筆で色を少し添えるんです、音別に。今でも覚えています、ド:赤、レ:水、ミ:橙、ファ:黄緑、ソ:紫、ラ:黄、シ:茶。確か「だんご三兄弟」な和音カードに着色したものもありました、「ドミソ(赤橙紫)」とか「レファラ(水黄緑黄)」とか「シレソ(茶水紫)」みたいな。
だからヴァイオリンの4本の弦の駒付近にも(構えて左から)太い順にG線:紫色、D線:水色、A線:黄色、E線:橙色の刺繍糸を母親に付けて貰ってました。つまり私は音階を「ドレミファソラシ」か「赤水橙黄緑紫黄茶」か「CDEFGAB」のいずれかでしか認識してなかったのです。そこにいつの頃からか「ハニホヘトイロ」軍が攻め込んできたのです、「調性」と共に。
なのでいまだに例えば、「『ソ』を主調とした長調」を見たり聴いたりすると、まず「G-Major」だ、「『シ♭』を主調とした短調」ならば「B♭-minor」だって頭に浮かぶのです。そしてそれを「ト長調」なり「変ロ短調」なりに脳内変換するということをしています。だって、「いろはにほへと」に馴染みが無いから「ほへと」が何番目か瞬時に浮かばないし、「#」も「♭」も無い(ピアノの白鍵だけの)長調は「ドレミファソラシ」な訳で、それはアルファベット3番目の「C」のメジャーキーな訳で、つまりそれは「ハ長調」な訳で、って思わず「母さん…」ってなるじゃないですか。
母さん、ってことでやっぱIWTCは転調しすぎでは無いか、と感じる今日この頃です。