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CHAT NOIR🐈‍⬛

私は幼いころから、レコードを聴くのが好きでした。それは育った環境によるものが大きいと思います。生まれた時から、音楽を聴いていた(聴かされていた)からだと思います。両親が思い出したように半世紀経った今でも私に言うんです、生後2~3ヵ月のまだ耳が聞こえるか聞こえないかという時期に「口笛吹きと子犬」のレコードが流れると、どんなに泣いていてもピタッと泣き止んだって、私が。だからという訳ではないと思うのですが、私は一早くレコードの聴き方を覚え、暇さえあれば家のレコードを聴いている子供でした。

ただ問題だったのが、家にあったレコードです。基本的にはクラシックがメインなのですが、例えば「白鳥の湖」などが入っているロシア名曲集の25cmLPの隣にバッキー白片のハワイアンのLP(「小さな竹の橋で」が好きだった)、その隣にいしだあゆみの「ブルー・ライト・ヨコハマ」のシングル、の隣に「マンボNo.5」の入ったプラード楽団のLP、のように、まあ、ラインナップがワールドワイドなようでいて、ただの節操の無さ丸出しなのです。

そんな我が家の混沌としたレコード事情に拍車をかけたのが、私が買い足した、スティーヴィー・ワンダー、エルトン・ジョン、ディープ・パープル、アース・ウィンド・アンド・ファイアー、レッド・ツェッペリンなどの所謂、洋楽と呼ばれるものです。これで我が家のレコード棚はもうある意味、酒池肉林、または、魑魅魍魎。

なのですが、私が中学の時の引っ越しを皮切りに、3回ほど引っ越しをしています、両親の家は。そうこうしている内に世の中はCDの時代になったので、私もそれまでに買ったCDは結婚して家を出るときに持って出たのですが、実家にあるレコードのことなどはすっかり忘れていました。両親もレコードを聴くことはなくなったのでしょう、気が付いた時には一切合切、レコードは処分されていました。

それはそれでいいんです、いずれにせよレコードプレーヤーを持っていなかったので。どうしても欲しいものはCDを買い直せば良いのですから。実際、買い直したのはビリー・ジョエルの全アルバムと、あと一枚、小さい頃、種種雑多なコレクションの中でお気に入りだった、アルフレッド・ハウゼ楽団のコンチネンタル・タンゴのベスト盤だけでした。

タンゴはもともとスペインの舞曲ですが、南米、特にアルゼンチンで発展したものです。ラ・クンパルシータエル・チョクロなんかが有名ですね。それをまたヨーロッパに逆輸入した形で発展したものをコンチネンタル・タンゴと日本では呼んでます。アルゼンチン・タンゴが舞曲としてのキレを重視しているのに対して、コンチネンタル・タンゴは旋律の美しさ、優雅さを追求していると言っていいと思います。

今回はコンチネンタル・タンゴの代名詞、アルフレッド・ハウゼ 楽団の演奏の中からです。


①碧空【Blauer Himmel】
子供の頃、漢字が読めなかった。なぜ青空じゃないんだろう。オリジナルはBarnabas Von Geczy Orchestraによるもの。


②真珠採り【The Pearlfisher】
オリジナルはビゼーの同名のオペラの中の第1幕で歌われるアリア(Je crois entendre encore)。現在では滅多に全幕上演されない。


③夜のタンゴ【Tango Notturno】
オリジナルは同名の1937年制作のドイツ映画のテーマ曲。


④ヴィオレッタに捧げし歌【Hör' mein Lied, Violetta】
短調の曲が多い中でひときわ明るい曲。オリジナルは有名なヴェルディのオペラ「椿姫」の第1幕前奏曲。



おまけ
ソ連の現代作曲家、アルフレート・シュニトケ作曲の「タンゴ」。映画「Agony(邦題:ロマノフ王朝の最期)」から。


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