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有用

ふとした瞬間に、どういう訳か、なんら現状とは無関係なことが頭に浮かぶことってないだろうか?

このところの暑さのせいなのか、はたまた加齢のせいなのか早朝5時に目が覚めてしまった私は以下の記事の内容が自然と頭に浮かんだのである。

ハリソン・フォードさんが墓石に刻みたい言葉。「簡潔すぎ」とツッコミが入ったその言葉とは?


昨年、この記事を読んだ私は、ひどく(彼らしいな、と)納得したのと同時に俳優としては勿論のこと、人間としても素晴らしいな、と強く思ったのである(それは他者の言動に殆ど興味の無い私にとってはとても珍しいことなのだ)。

どうしてインタヴュアーがこのような質問を大御所俳優に向けたのかはいささか疑問であるが、とにかく、彼の回答はこれ以上なく簡潔で、これ以上なく的確に彼の80年(当時)の人生を表していると感じられたのがとても印象的だったのだ。

(私が思う)彼の言葉の一番のキモは、「有能」では無く、「有用」と答えたところだ。今更ではあるが、有能とは「能力を有している」ということである。対して有用とは「使い勝手が良い」という意味である。私の半世紀に亘る人生においてではあるが、「有能」と「有用」の間には一見すると関係があるように見えて実は殆ど関係ないことが多いと感じている。

有能とはその人の資質、才能などを表わしている言葉だと考えている。対して有用とは有能、無能に関わらず、その場その場の状況に(即座に)適応することができる、ということを表わしている言葉だと理解している。なので私としては有能よりも有用の方が、遥かに人間にとって必要なものだと感じているし、したがって、自分も少しでもそうでありたいと思っているのである。

ただ、(これを読んだ当時もそうだったのだが)この記事を掲載したハフポスト日本版編集部はハリソン・フォードの言葉を正確に日本語に訳しているのだろうか?と思ったのでちょっと調べてみた。私の感覚では少なくとも現在の日本では「有用」という言葉よりも「有能」という言葉の方が日常では遥かに使用頻度が高いと感じるからである。ともすると「有用=有能」になっていると思われるし、これをきちんと使い分けている方が珍しいような気がするからだ。

ネットでこの記事の原文を読んでみると彼はこう言っていた。「Was Useful.」。

ハフポスト日本版編集部さん、ごめんなさい。天下の「HuffPost」がその辺のニュアンスをきちんと訳さないわけがないですよね。


翻って、私自身はどうだろうか?問われることもない質問の回答としては、私のような無能で無用の長物のような人間には墓石などは不要である。したがって刻みたい言葉などは無い。別に土葬して貰っても良いのだが、現在の日本では難しいと思われるので、火葬の後、路傍の木々の根本にでも撒いておいて貰えばそれで良い。ほんの僅かでも草木の栄養分として取り込まれる可能性があるのならばそれで本望だから。



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