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第19話 お片付けの魔法

「この部屋やんとかならんのかいな?」

「何とかって?」

「そ・う・じ!掃除や!」

「え?」

自分で言うのもなんだが、私はキレイ好きな方だ。

なんだったらいつも散らかすのはルソ夫のほうで、私はそれを片付けてしている側だ。

「あなたに言われたくないけど、私いつもやってるよ?」

「そう言うと思ったわ」

そう言ってキッチン横のパントリーを開ける。

「これどうやねん」

「ぐぬぬ」

「この部屋も見た目はすごーくキレイやねんけどなぁ。こういうところから心の隙が垣間見えるねんなー」

「そんなこと言うなら、さっきのアイスのゴミをまず捨ててよ」

「ワシはええねん。可愛い妖精さんやから」

「んなわけないでしょー!!」

ダメだこりゃ。



藤佳は最近自己主張が出てきた。

遊んでいても自分のやりたい事が思ったようにできないと、おもちゃを投げたり床に叩きつけたりして大声をあげる。

この前は児童館でもミニカーが自分の思った方向に進まず、そんな事をして周りのお母さんたちから注目されてしまった。

階段に向かっておもちゃを投げるのも相変わらずだが、それ以外にも物を投げる場面がすごく増えてきた。

「ねぇルソ夫、どうしたらおもちゃとか投げなくなるのかな?」

「おっ!ええ質問やな。自分から聞いてくるのはええことやで」

普段あれだけ食べ物は無くなるし、面倒を見ているのだから、こんな時こそルソ夫を有効活用しなくてはいけないと思う。

「ほんなら、有難い教えを授けよう」

「はい」

「投げるのはええ事や。ようさん投げたらええ」

「いや、だから…」

全然質問の答えになってない。

ふざけているのかと思い、ちょっと強めに聞いてみた。

「真面目に聞いてるの!ちゃんと答えてくれる?」

「真剣やで?それが遊びやからええねん」

「それじゃあダメです。困ってるんです」

「ついこの前教えたやろ?願いを叶えようとしたったええねん。自分の中で投げてもええ物ってなんや?」

「んー、ボールかな?」

「ほんならボール買うてきたらええんやないか?」

「あぁ〜」

思わず手をポンと叩いた。

そういえば以前頂いた軽いボールが押入れに眠っているので、それを出してくる。

案の定藤佳はボールに夢中になった。

ボールを入れていた箱はあっという間に空になる。

とってもよく集中している。

私は急いで散らばったボールをかき集め藤佳に声をかける。

「ほら、どうぞ!もう一回やっていいよ」
藤佳も大喜びだ。

家の中でこんなにもキャッキャ言いながら遊ぶ姿は久しぶりで、私も思わず嬉しくなる。

「自分それいつまで続けるねん。」

「え?」

私は耳を疑った。

「いつまでって、藤佳がやりたいだけやらせてあげようと…」

「ほんまにそれでええねんな?」

「遊んであげるのダメなの?」

「あんたぐうたらしたいんちゃうんか?」

「そりゃあそうだけど」

「ほんなら、自分で片付けしてもらったらええんちゃうか?」

なーるほど!いや、そんな事が果たしてできるようになるのか?

「できる?」

「じゃあ全部のボールを投げ終わった後に、『ないない』とか『ないないするよー』って言いながら一緒に片付けしてみ?」

「それでできるようになる?」

「そりゃあ覚えるのが早い子はすぐにやるし、そうじゃなくても毎日やればできるようになるで」

「藤佳はどっちかなぁ?」

「それはやってみてやな」

「投げて終わりじゃなくて、片付けするのも遊びになるから繰り返し遊べるようになるし、ボール踏んで転ぶ危険も減るってわけや。一石二鳥やろ?」

「1人でずっと遊んでくれる。片付けも自分でやってくれる。それなら私も一石二鳥ですね。」

「ただし、片付けを教えるときはめっちゃ楽しそうにやるんやで?これも遊んでるんやと思ってもらうねん」

「ほうほう」

「まぁ完璧な片付けは無理やと思うけど、少しぐらいならできるわ。」

「よし藤佳!ないないするよ!」

「なーいない。がんばれ。なーいない。がんばれ」

「あっ!こら!ぽいじゃない。ちがーう。そっちじゃなーい」

「あっはっは!!これは藤佳ちゃんちょっと時間がかかりそうやな。根気よく続けるんやで」

「ひぇ〜。」


28.片付けは一緒に楽しそうにやる。

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