第7話 出会いに行こう!
「そう言えばこの前の新幹線で思ったんだけど、ルソ夫って私以外の人には見えてない?」
「なんや今更気付いたんかいな。存在に気付かれたらアカン言うてるのに、自分から姿見せに行くわけないやろ?」
「なんで?」
「『なんで?』って、妖精っちゅうのはそんなもんや。ワシらの会話も側から見たらアンタの独り言やからな」
「藤佳は?」
「子どもには誰でも見えるねん。ほら!子どもって訳分からんところ指差して笑うてる事あるやろ?あれ実は妖精と遊んでるんやで」
「何歳まで見えるの?」
「なんや、えらい根掘り葉掘り聞くやんか」
「だって藤佳ってルソ夫が見えてないかのようにいつも静かにしてるからさ、ほら!」
と藤佳を指差すが、こちらが名前を呼んでも気付かないぐらいにおままごとで集中して遊んでいる。
「ワシな、体から子どもを落ち着かせる成分出とんねん。子どもしか分からん香り。絡まれたらしんどいからな」
「どんな成分よ!」
多分これは嘘の話だと思う。
でもルソ夫といつもゆっくり話せるのは、藤佳が静かにしていてくれるからだ。
どこまで本当のことを言ってるのだろう。
「ルソ夫がいなくても静かになる方法があればいいんだけどなぁ」
「……あるで」
「うそ!?」
「知りたいんか?」
「もちろん!」
「この家、絵本あるか?」
「絵本?ちょっと待ってて!」
私はリビングの棚の中に入っていた2冊の絵本をルソ夫に渡した。
1冊は出産のお祝い。
もう1冊は検診の時にもらったものだ。
「これこれ。絵本っちゅうのは有能でなぁ。落ち着かへん時にはこれを読むんが1番や」
「まさか……ただ読むだけ!?」
「せやで?」
「え、なーんだー」
つい期待してしまった。
いや、それもそうだ。
そんなに何もかもが上手くいくはずはない。
「でもなんでアンタは絵本を全く読まへんねんな?」
「藤佳って全然絵本に興味なくてさぁ。読んだ事はあるんだけど、全く見てくれないんだよ」
「そんな事ないやろ。膝の上に乗せたり、床に座らせたりしてるか?」
「そこまではしてないけど」
「絵本は座って読む癖つけた方がええで。後々静かに読めるようになるからな」
「そうなの?」
「それで、他に絵本は無いんかいな」
「この2冊だけしかないや」
「ちなみにこれはどうやって選んだん?」
「これはもらった物だから私は選んでないよ!」
「アンタぐうたらしてんなぁ」
「それ久しぶりに聞いた!」
「そんな事言うてる場合やないやろ!」
「えっ?」
「ええか?絵本っていうのはな?子どもにとって出会いの場やねん」
「出会い?」
「藤佳ちゃん1歳やろ?」
「うん」
「色んな経験させてあげたいやん?」
「そりゃあねぇ」
「だからって毎日世界中、色んなところに出かけるなんてできるか?」
「いやいや!ムリムリムリ」
「でも絵本ならいつでも見たいもの見られて、どんな場所にでも行けるやろ?」
「まさかそれが?」
「そう。出会いや。好きなもん、嫌いなもん、知らない世界、未知なる冒険。何にでも会えるねん。どこにでも行けるねん。どんな出会いを作るかはアンタの決めることや」
「壮大なお話だね」
「それを『もらった2冊だけで』とかよう言うたな」
そこまで言われてしまうと、少し恥ずかしく感じる。
「見せたいもの見せたりいな」
「見せたいもの……動物見せたい!」
「ええやん。探しといで」
「えぇ、でも……」
絵本って高い。
簡単にたくさん買えるものでもない。
「絵本ってやっぱり新品で買った方がいいの?」
「中古でもええけど、すぐに食べよるからちゃんと消毒するんやで。あ、それよりも最近は100均で絵本とか結構あるから、それもかなりええで」
「そんなの売ってたかなぁ?」
「そういう事は見に行ってから言うてくれ」
「そうだね(笑)それだったら明日には行けるよ!」
「それでもっておもちゃと一緒に絵本も並べて置いとくんやな。よし!今から行くんや」
「またそのパターン??」
「100均なんか歩いて5分やないかい」
「たまには行ってきてよ」
「アカン、ワシさっきからちょっとお腹痛いねん。トイレ行ってくるわ。しっかり今行くんやで〜」
「見た目通り子どもみたいな言い訳しかしないのね(笑)」
9.色んな絵本をたくさん読んであげる
10.絵本は子どもが手に取れるところに置いておく
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