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第24話 エピローグ

「さぁ、これでワシの教えは全部終わりや」

さっきまでルソ夫も目を赤くしながら話していたのに、ふと気付けば嘘のようにケロッとしている。

「それで、いついなくなっちゃうの?」

「んー、そうやなぁ。今から10分後ぐらいちゃうか?」

「『ちゃうか?』ってそんな自分のことも分からないの?」

「ワシ今から少しずつ足から溶けるように消えていくんや。そうやって次のところに行くねん」

「何それ気持ちわる」

「言いな」

「どのくらいで消えるかなんて、毎回の事だから分からないの?」

「いやー、そうやねんけどな」

何か言いたそうなそうな表情だ。

「どうなの?」

「それが気温とか湿度とかでプラマイ5分ぐらい誤差あるみたいやねん」

「何それ。理科の実験じゃん」

「変な言い方せんといてや。んー、この部屋はちょっと寒いから今日は12分ぐらいちゃうか?」

「ほら、中学校でやった理科の実験だよ」

なんでもないような事が面白く感じる。

寂しい気持ちを一生懸命紛らわしているんだろう。

ルソ夫の足元を見るともう足首辺りまで溶けている。

溶けるというよりかは砂になって消えていくって感じだ。

「あ、せやせや。消えてまう前にこれだけ渡しとくわ」

そう言うとルソ夫は1冊の本を私に渡してきた。

「本?」

「まぁとりあえず見てみいな」

言われるがままにとりあえず1ページ目を広げてみる。

「なにこれ。ルソ夫式子育て まとめ?」

そのままパラパラめくってみると、空白ばかりのページにちょろちょろっとずつ文字が書かれている」

「ワシが今日までアンタに言うてきた事や。ぜーんぶまとめておいたで」

「ずいぶん贅沢なページの使い方だね」

「そないようさん書くこともないからな。言うて薄いと寂しい本になるし」

「はいはい、ありがとう。そこの本棚の奥深くに大切にしまっておくよ!」

「最後までそんな意地悪なこと言いな!」

「うそ!ありがとう!」

そう言って私はルソ夫を抱きしめた。

もう腰まで消えている。

「そうだ!最後にアイス食べていきなよ。もっと消えるのが遅くなるんじゃない?」

「この部屋ちょっと寒い言うてんのに…」

「いらない!?」

「うそ!ありがとう!」

私はハーゲンダッチュを持ってきた。
本当は私がこっそり食べる用に買ったやつだ。

サンドになってる私の1番好きなやつ。

「これ、本当に美味しいから食べてみて!」

「ほんまにええのん?」

「うん、最後だからね。今までの感謝の気持ちを込めて!」

「おおきに」

そう言うとルソ夫は勢いよく食べ始めた。
かと思えば、急にゆっくりになる。

「なんかもったいないな。味わって食べたろか」

一口かじってはしばらくモグモグしている。

「キャラメルチョコレートでアイスがコーティングされとるで。めちゃくちゃ美味いがな」

そう話すルソ夫の胸から下はもう消えている。

あと一口で食べ終わる。
というところで、突然アイスを床に落としてしまう。

「あっ」

肩と同時に手まで消えていく。

「最後。最後の一口だけ食べさせてくれ」

落ちたアイスを拾い上げ、ルソ夫の口にそっと入れてやる。

床では落とした時に散らばったウエハースのカケラを藤佳が口に入れているが、まぁこんな時ぐらい好きにさせてていいだろう。

「この調子で頑張るんやで」

「はい!」

ありがとうと言わんばかりにニコッと笑う。

「ほな、さよなら……」

そう話すと、肩から頭までは一瞬にして消えていった。

「行っちゃったね」

藤佳に話しかける。

なんだか藤佳も寂しげな表情だ。

「またいつか会えるといいね!」

そういって私はルソ夫からもらった本を抱きしめた。


〜とある場所にて〜

「きゃーーーーーー!!!」

「おい!ちょっと待ち。なぁアンタ。待ち。待ちぃな。聞いてって…痛ったぁー!!」

「誰ですか!?うちの子に触らないで!出て行ってください!」

「はぁ、はぁ。アンタずいぶん人の話聞かんなぁ」

「しゃべる赤ちゃんなんておかしいでしょ!髭まで生やして気持ち悪い」

「赤ちゃん!?アンタ失礼やな。ワシを誰やと……え!?髭??あぁーこれな、お菓子、いやアイスのカスや」

「ちょっと、そのカス床に落とさないでください」

「ワシはアンタの子育てを助けにきたんやで。なんならワシ、妖精さんやからな。ワシの任務は、世の母親が子育てに困らんように尽くすことや」

「??」

「まだ分からんのかいな。ほんましょうもないやっちゃなぁ」

「そりゃあ急に現れてそんなこと言われてもそうですよ」

「ほんならあの子知ってるか?最近話題になってる『ぐうたらママの素敵な子育て』って本出した…

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