掌編「うんこ顔」@爪毛の挑戦状
夜の山道は不気味だったが、酒に酔い高ぶった俺の頭はそれどころではなかった。
今夜、あいつの大事なものを奪う。
抑えられない衝動に、驚くほど身体が動く。山道なのに一気に駆け上がった。あいつの顔が思い浮かんで、どうにもじっとしていられない。
家が見えてきたが、暗い。なんだ、誰もいないのか。
ぐるりを家の回りを回る。古いが立派な家だ。時々現れる小屋から生き物の気配がする。この臭い、牛か?
縁側の戸を引いてみたところ、なんと開いた。中に入ると、いまどき珍しい床の間に逆さまの金魚鉢があった。
何かに被せてある。鉢を取ってみると、金色の塊だった。売ったら高いんじゃないだろうか。これを持って帰るか。
突然、外が騒がしくなった。鶏の声だ。流石にびっくりしたが、すぐにあいつの顔が思い浮かんで思考は止まらない。
あんなに騒がれたらバレる。鶏を黙らせないと。
金魚鉢を持ったまま外に出て、地面に叩きつけた。この破片で刺せば死ぬかな。
鶏小屋から出て戸を閉めた。
刺してもなかなか死なないものだな。結局、一羽ずつ首を折ることになった。
静けさが戻ったところで、自分ではない足音に気づいた。
マズイ、あいつが帰ってきた…。
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