掌編「うんこ道」@爪毛の挑戦状
僕は昔、金魚を死なせてしまった。夏祭りでとった黒い金魚だった。お祭り金魚にしては大きく、親指ほどもあった。貧弱なモナカですくえたのは奇跡に近かったので、とても嬉しかった。
興奮冷めやらぬまま持ち帰り、物置から金魚鉢を引っ張り出してきて水を溜め、金魚を入れて餌もやった。餌を食べる姿が面白くて、たくさんあげてずっと眺めた。
4日目の朝、金魚は死んでいた。口から茶色いモヤモヤが出ていた。
後から考えれば、餌のやりすぎによる腸閉塞だったのだろう。金魚はたとえ満腹でも口の前に餌がくれば食べるらしい。更に胃がないので餌はそのまま腸にどんどん溜まる。口から出ていたモヤモヤは、行き場をなくした糞だったのだろう…。
僕は、この死んでしまった黒い金魚を、家からいちばん遠い畑の片隅に埋めた。もしかしたら、狐に掘り返されたかもしれないがその後一度も見に行っていない。
どうしようもない罪悪感。未だに胸にしまってあるこの一部始終。たぶんこれからも僕の心の片隅にずっとあるだろう。
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