掌編「よみがえるうんこ」@爪毛の挑戦状
仕事終り。いつものスーパーで安くなった惣菜を見繕って出ようとすると、出入り口付近のガシャポンが目に留まった。
赤やら緑やらピンクやら、カラフルなウンコだった。
小学生の頃、みんなで夢中になった記憶が蘇る。
お目当ては、幻の金色だった。毎日放課後は駄菓子屋に通って挑戦したが、なかなか出なくて、カラフルなうんこがどんどん増えて。家の下駄箱の上に並べていたら、母親に呆れられた。
当時、あの駄菓子屋ではガシャポンはひとり1日1回というルールがあって、みんなきちんと守っていた。
いま思えば、ガシャポンの在庫を守る為に店のばあさんが決めたのだろうけれど、あのルールのおかげで俺たちは小遣いを1日で散財せずに済んだんだ。
懐かしさで、鼻の奥がツンとした。
そんなことを考えていたら、いつの間にか小銭を入れて回していた。
出てきたのは、緑色だった。
まあ、こんなもんか。
あの時は結局、ガシャポンに興味がなかった奴が一発で金色を出して、そのまま帰って行ったんだっけな。
あいつ、面白い奴だったよな。家が山の中だったから仙人とか呼ばれてて…。
久しぶりに連絡してみるか。
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