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掌編「ダジャレバナナ」@爪毛の挑戦状

「そんな、バナナ!ってか~っ!ぎゃ~はははは(笑)」
「そんな定番のやつ、久しぶりに聞いたな」
「初心忘るべからずってな!ママ、灰皿」
「はいはい。あたしも久々に聞いたよ」

いちばん奥の小上がりの席。ウーロンハイとポテトサラダをテーブルに据え、本を開く。カウンターの常連たちの話を聞きながら、時々メモをとる。やっぱり、本物のオジサンが勢いで言うダジャレってホントに面白い。だいすき。私のご褒美タイムである。

「ママはよぉ、これでも六丁目のアリエルって呼ばれてっから。そんなん、あり得る~?つって、ぎゃは~~!」
「七奈ちゃん、なんでアリエルなの?」
「小学校の水泳大会でフォームが美しいって表彰されたんだよ」
「へぇ~泳ぎが速いとかじゃないんだ」
「速いわけないだろよ、これで~!」
「あんた、今日はツケないからね」
「え~!今月キビシイんだよぉ頼むよ」

アリエル、あり得るっと。今日の常連さん、絶好調だなあ。娘さんと仲直りできたみたいでよかった。


茂村かすみ25歳。趣味は『居酒屋七奈』で常連客のダジャレを聴きながらのひとり呑み。オジサンのダジャレ好きな私にとっては本当に至福の時間。私は勝手に『ダシャレ場七奈』って呼んでる。

「はい、かすみちゃん。サービスの砂肝」
「え!嬉しい!ありがとうございます。ママ、今度一緒にプール行きませんか」
「楽しそうだけど、あたし泳げないよ」
「え、アリエルなのに?」
「さっきの会話は即興コントみたいなもんだから」

ほんと、ここに通うのは止められない。


(632文字)


かすみちゃん、友だちになりたいです。

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