掌編「告白雨雲」@毎週ショートショートnote
小学生の頃、自分の名前について親にインタビューする宿題がでたことがあった。
「おまえが生まれた日は、すごい雨だったんだ。母さんの陣痛がきて、病院に移動する間に見た真っ黒い雨雲が忘れられないよ。ずっと降ってたなぁ」
「陣痛が進むにつれて、雨も強くなったのよね」
僕の名前には「雨」という字が入っている。
珍しいね、と尋ねられることが多く、その度にあの宿題を思い出しながら由来を話した。
大学の研究で、過去の新聞記事を探していた。
お目当ての記事は、なんと僕の生まれた年、生まれた日の朝刊の政治欄にあった。
これが僕の生まれた日の新聞か、と愛着が湧き、僕はその朝刊に目を通した。
天気欄を見て、動きが止まる。
『全国的に晴れ 最高気温8月並みも』
え?
僕の生まれた日は雨だったはずだろ?
週間予報の欄もすべて晴れだった。
何故だろう、手の震えが止まらない。
親に電話した。
奇しくも、僕の誕生日だった。
「あちゃー。今夜、おまえに伝えようと…ブッ」
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