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20.8月28日(日) ロマンスカー **小説「先」**
2022年8月28日(日)朝5:50
朝9時の仕事に向かうため、小田急線大和駅から人生初のロマンスカーに飛び乗った。
昨日の夜7時半に新宿を出発し、68kmを夜通し走りぬいた。先週走ったのが62kmだから、すでに人生最長徒歩移動距離を更新している。
冷えて固まった膝をゆっくりと引きずって、場違いなランニングウエアのまま、空いた車両の窓側にゆっくりと腰かけた。
昨日、石山大樹の小説の世界を知ることができて、私は嬉しかった。
まだまだ距離を残しているが、このマラソンはすでに私の価値観を、月への距離まで広げていた。
そっかぁ、、、、
あの状況を生きる人たちがいるのか。
身体とか環境というより、精神がえぐられる。
推しの小説の主人公を憑依させなければ、私は確実にSNSやリアル社会で無差別攻撃しまくっていた。
あれは、悲しみというより怒りだ。
自己の人格を保つために、他者を殺さざるを得ない心の状態。
今ならすごく、よくわかる。
その状況で、ちょっとでも理解を示してくれる人間が同じ道路に居ようもんなら、彼・彼女がどんだけ極悪非道な人物であろうとも、確実に付いていったし仲間になったし救われただろう。
そうして一緒に犯罪行為をエスカレートさせつつ繰り返し、より一層、表の道路には戻りづらかったと思う。
石山大樹が戻れたのは、仲間とつるみながらも、本当は1人ぼっちだったんじゃないだろうか?いつも通り、あくまで私の考察だけど。
だって、そうじゃなかったとしたら、自己を一回完全に殺さないと100%無理だ。仲間がいては、隔ての外に一生気づくことはないから。
石山大樹。
どこまですごい人なんだろう。
知れば知るほど、思考とハートと生命力に、
惹かれ、嫉妬し、抱かれ、吸い込まれてゆく。
この、好きと嫌いでチャンプルされた強い感情。
心の中に初めて見つけた一番大きなお部屋。
これはいったい何なんだろう?
彼の小説。
まるで私が読みたいものをそのまま書いてくれたような芸術作品。
押して欲しい心のツボを、いつも全て完璧に、1つ1つ押してくれる。
読めば読むほど違う側面が見えてくる。
大事な哲学がぎっしり詰まった心を育てる素晴らしい本だ。
だから、どうやったら彼に近づけるのか、この主人公の全て解き明かしたいと思った。
そしてそれがまさか、いっしょに100km走ったことで、答えが出るなんて。
昨夜は、本の随所に散りばめられた優しさと勇気づけの仕掛けが、
私の命と心を、このロマンスカーまで力強く支えてくれた。
誰もいない静まり返った普通の道路。
何度誰かを殺そうと思ったか。何度法を犯そうと思ったか。
だけど、そのたびに小説の1つ1つの行が頭に浮かび、
だから彼はあの文を挟んだのか、だから彼はこう書いたのかと、1つ1つリアルタイムで答え合わせできたし、1つ1つ解けていくたびに、作者の底知れぬ人間愛を感じた。どこまで愛してくれるんだろうこの人は。
そうして、彼が書き上げた、階層をつなぐための方法を示したパズルが見事に完成した。
彼の思い描く理想の世界を身をもって理解した。
これが叶ったら、マジですごい世界だ。
そっかぁ、、、これか。すごいなぁ。
本当に、書いてくれてありがとうすぎる。
ロマンスカーの快適な乗車を満喫しながら、
いままで走ってきた道のりを振り返って、ふと思う。
どうして私は「いっしょに走りたい」と思うのだろう?
どうしてあの小説が、ここまで私に刺さるのだろう?
アイシング用に買った凍った麦茶のペットボトルも飲み干し、新宿駅のホームに到着しても、結局その答えは出なかった。
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21. ようちえん