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モーツァルトのピアノ・コンチェルトを室内楽Ver.で聴く

モーツァルトの「ピアノ協奏曲 第12番 イ長調 K.414」「ピアノ協奏曲  第13番 ハ長調 K.415」「ピアノ協奏曲 第14番 変ホ長調 K.449」。

このうち第12番と第13番は第11番と共に、ザルツブルクからウィーンに活躍の場を移したモーツァルトの、挨拶代わりの強烈3連発。
多分、当時のウィーンの人たちは、これらを聴いてハッとしただろうなぁ・・・。

これらを演奏する際、オーケストラの管楽器は省略してもいい、とモーツァルト本人も認めていたし、楽譜も出版されていた。

だから、弦楽四重奏やそこにコントラバスを加えた伴奏で演奏する、という方法が当時はもちろん、今でも時々演奏会やCDで見掛けられる。

オーケストラを雇うのはコスト的にも大変なことで、サロンや家庭でこれらの曲を演奏して楽しむには、とても実利に適ったスキーム。
「実情に合わせての編曲」というのは、再生メディアがない19世紀以前においては当たり前のことで、作る側、聴く側にとっても欠くべからずことだった。
「編曲=オリジナルではない」という現代的認識は甚だ見当違いなものと言ってよい。

このCDでピアノを弾いているのは、アメリカ人ピアニスト、アン=マリー・マクダーモット。
2012年12月、カルダー四重奏団とデヴィッド・J.グロスマン(コントラバス)とのニューヨーク・レコーディング。


マクダーモットは、小説『蜂蜜と遠雷』のモデルとなった「浜松国際ピアノ・コンクール」、その第1回大会(1991)の第2位入賞者。

ピアノ・コンクールの本戦で弾くピアノ・コンチェルトは、ラフマニノフ、リスト、ショパン、チャイコフスキー、ブラームスといった自分のテクニックを披歴でき、演奏効果も上がる難しい曲を選ぶのが普通。

がしかしあの時、マクダーモットはテクニック的には多くを要求しないし、先に挙げた作曲家のコンチェルトより明らかに小じんまりとしているので、見劣り、聴き劣りして当たり前のモーツァルトをチョイスした。

なのに、その結果の第2位。当時ちょっとした話題になった。

テクニックだけでなく楽興の豊かさ。

それを正当に評価した審査員も立派だった。

現在では世界の名だたるピアノコンクールの本戦課題曲には、リスティングされることがほぼない(浜コンも例に漏れず)モーツァルトのコンチェルト。

ちっとその風潮に異論反論オブジェクションしてもみたくなる。

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