ねむねむの森 第六章
(六)
きらきら池からすこしはなれたところにある丘では
カラスくんがリーダーになってちからじまんのふくろうさんたちと
うみちゃんたちをはこぶれんしゅうをしています
鳥さんたちががんばってつくったカゴには
うみちゃんのベッドがすっぽりとおさまり
そこから6本のツルがのびていて
ツルの先はわっかになって
ふくろうさんが足のつめをひっかけやすいようになっています
「よーし これなら このカゴだけでうみちゃんとねむねむさんをはこべるね」
「ふくろうのちからのみせどころだな」
「オイラたちにまかせておくれ」
ちからじまんのふくろうさんたちは
羽をひろげたり のびをしたりして
じゅんびたいそうをしています
そこにおやつをたべおわった
うみちゃんたちがやってきました
「うわぁ 大きなカゴ!」
とおどろくうみちゃんを 一羽のふくろうさんが ひょいっとだき上げ
カゴのなかのベッドのうえにのせました
ねむねむさんがカゴにのるのはカラスくんがおてつだいしました
きらきら池でいっしょにおやつとおしゃべりをたのしんだどうぶつさんたちも
ぞろぞろとおみおくりにやってきます
カラスくんとふくろうさんたちは
なんだかじぶんたちがとってもすごいことをしているような
きもちになって むねをはりました
コンドルのおかみさんが
「カラスくん ふくろうさんたち
たのみますよ」
と声をかけると
へんじのかわりにみんな羽を大きくひろげて
にっこり笑いました
なみだのとまったねむねむさんが
うみちゃんの肩でたちあがり大きなちからづよい声でいいました
「ねむねむの森のみなさん ありがとう
いってきます!」
こんどは
ふかふかのじぶんのベッドにすわったうみちゃんの目に
ほっとしたのか なみだがあふれてきました
でもねむねむさんのちからづよい声に勇気をもらっていいました
「みなさん ほんとにほんとにありがとう
わたしはこの森が大好きになったよ
またあそびにくるから まっててね!」
それぞれのツルのさきをあしでつかんだふくろうさんは
カラスくんのあいずにあわせて
いっせいに羽ばたきました
うみちゃんとねむねむさんとベッドをのせたカゴは
ふわりとうき上がり ゆっくりとそらへ上がり
リーシャ村のほうへむかってとんでいきました
おおきなもみの木さんの木の枝では
ひさしぶりにあった長老ふくろうと
亀のじいさんと白ヘビのばあさんが
きらきら池の水でいれたお茶をのみながら
おばあのことをかんがえていました
「フォッフォッフォ
うみちゃんは はなちゃんにそっくりじゃったの」
と長老ふくろうがいえば 亀のじいさんが
「いやいや はなちゃんのほうがおてんばじゃったわい」
といい 白ヘビのばあさんが
「わたしはこどものころにもどったような気もちになりましたよ
うみちゃんもとってもやさしいおんなのこですよ
いいお友だちになれそうですよ」
と うれしそうに笑いました
カラスくんをせんとうに
カゴをはこぶふくろうさんたち
そのうしろにつづいてとんでいるのは あなほりふくろうさん
そして
やっぱりピクニック気分の鳥さんたちが木のみをたくさんもってついてきます
みんなは
大きな池までやってきました
とおくのほうに小さく丘が見えます
その丘のうえにあるのがリーシャ村です
うみちゃんのむねがどきどきしてきました
(あそこにお母さんお父さんおばあがいるんだ もうすぐあえるんだ)
池にとびこんでおよいでいきたい気もちになっていると
おそらたかくまいあがっておりてきた鳥さんたちがうみちゃんにいいました
「この池 ドーナツのかたちの ドーナツ池だ」
ドーナツ池というおいしそうなかわいいなまえをきいて
うみちゃんは「うふふ」とわらいました
「さあ ここでひとやすみしよう
そうしたらいっきにこの池をこえてリーシャ村までいこう!」
とカラスくんがいうと
鳥さんたちは木のみをたっぷりいれたリュックサックをひらき
それぞれたべたりのんだりしました
赤色の太陽のみ
黄色のおはようのみ
オレンジ色のすっきりのみ
みるくの木のみ コーヒーの木のみ シュワシュワの木のみ
ピクニック気分の鳥さんたちは
このドーナツ池をかんさつしたあと
ねむねむの森へかえるようです
あなほりふくろうさんは
「すごいすごい ごちそうがいーっぱい」
と池の中をのぞきこんでよろこんでいます
「鳥さんたちー
しっかりドーナツ池をかんさつしてくださいね
ぼくたちはそろそろしゅっぱつしましょうか!」
とカラスくんがみんなに声をかけると
鳥さんたちとふくろうさんはいっせいに羽をひろげました
どうやらねむねむの森の鳥さんたちは
『いいよ』『わかったよ』のおへんじのかわりに
だまって羽をひろげるのがおやくそくのようです
うみちゃんはみんながやすんだり木のみをたべているあいだ
ずーっとリーシャ村のほうをみつめていました
ねむねむさんもそんなうみちゃんのよこで
しずかにすわっていました
ふたたびカラスくんのあいずにあわせて
ふくろうさんたちがとびたちました
カゴがふわりとうき じめんがとおくなって
池のうえをとんでいきます
おもっていたよりも大きな池です
でも下の池をみるものはだれもいません
カラスくんもふくろうさんたちも
うみちゃんもねむねむさんも あなほりふくろうさんでさえも
みつめるのはリーシャ村のある丘です
だれもなんにも言いません
ただ どんどんちかづいてくる丘をみつめています
丘の上にリーシャ村の水車がみえると
ふくろうさんたちの羽のおとがいちだんとちからづよくなりました
うみちゃんとねむねむさんをのせたカゴがぐぐっと前にすすみました
あともうすこし
水車がどんどん大きくなり
水車小屋や家がみえてきました
そしてカラスくんはふくろうさんたちに
丘のうえの大きな木のそばにカゴをおろすようにいいました
ふくろうさんたちは羽のうごきをあわせて
大きな木にむかってゆっくりゆっくりおりていきます
はやくおりたくて カゴからおちそうなうみちゃんを
ねむねむさんはがんばってひっぱっています
「うみちゃん まだだよ
もうちょっとまって!」
うみちゃんがまてないのもしかたがありません
だって その大きな木の下には
おばあとお母さんがいるのですから!
「おかあさ〜ん おばあ〜
ただいま〜 かえってきたよ〜」
うみちゃんは大きく大きくてをふりながら
さけびました
おかあさんは泣いています
おばあはにこにこわらっています
カラスくんとふくろうさんはさいごまでがんばって
しずかにしずかにカゴをおろしました
おばあはりょうてをひろげてにっこりわらいました
にんげんの声にはなりませんが
カラスくんとふくろうさんたちにはきこえます
『カラスくん ふくろうさんたち
ありがとう ありがとう
おばあはとってもうれしいよ
森のどうぶつさんたちにもどうかよろしくつたえておくれ
かえりもきをつけてかえるんだよ』
そしてさらにおばあはそらをみあげて
『太陽さん太陽さん
みんなをみまもってくれていてありがとう』
と 声にはならないことばをいいました
太陽さんは ぎらぎらっとかがやきました
そしておばあにむかって
『さんさんさ〜ん
うみちゃんがもどってきてよかったね
これからねむねむさんをどうぞよろしくね』
といいました
おかあさんはカゴにかけより
うみちゃんをだきかかえるとほっぺをあわせてすりすりすりすり
うみちゃんのほっぺがおかあさんのなみだでぬれました
うみちゃんはおかあさんにだきつき むねにかおをうずめると
「うわ〜ん おかあさ〜ん」
としばらく泣きました
その泣き声をききつけて
村中からおとなたちがあつまってきました
だれよりもかおと目をまっ赤にしてはしってきたのは
うみちゃんのお父さんです
「おばあの言ったとおりだった!
うみがかえってきた うみがかえってきたぞ ばんざ〜い!」
お母さんとうみちゃんをいっしょにだき上げ
お父さんは「ばんざーい ばんざーい」といいながら
むらのなかまのあいだをかけまわります
うみちゃんは
お母さんとお父さんのあたたかい いいにおいにつつまれて
からだのちからがぬけてきました
おとうさんの声が どんどん とおく小さくなってきて
目の上がおもたくなってきて
いつのまにか ねむってしまいました
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