4thシングル『心目当てのオレンジ』特論
【概要】
2023年4月5日に4thシングル『心目当てのオレンジ』をリリースした。カップリング曲「Bittersweet Harassment」(英詩)を含む2曲入りで、昨年の7月27日にリリースした2ndシングル「ベランダ」と対になる作品である。デジタルリリースにともない、表題曲の『心目当てのオレンジ』のMusic VideoをYouTubeに公開している。本論稿では、本作への省察を艶やかに展開する。
🎧サブスク
https://friendship.lnk.to/OrangeforHerHeart…
🎬MV
https://youtu.be/l8hPuU_9P14
🚭グッズ
【宿命】
25歳にもなって、人生で初めて髪を染めた。ブリーチをして、明るいオレンジに。これが『心目当てのオレンジ』という作品の完成を運命付けた。沸々と新しい感覚が湧き上がってくるのを感じた。
▪︎ジャケ画 - 心目当てのオレンジ
▪︎ジャケ画 - 心目当てのオレンジ(草案)
【ジャケットのイラスト】
ジャケットのイラストは、2ndシングルのときと同様、イラストレーターの「ながふち あいり」さんに制作していただいた。
デモ音源の段階から聴いていただき、やりとりを重ね、2ndシングル『ベランダ』と同じ世界線を念頭に置きながらも、どこか、どうしても相容れないような、対になるような絵を描いてほしい、という意図をお伝えした上で、曲の印象を取り入れながら制作をしていただいた。
本当にさすがすぎ笑 僕が期待した通りの完璧なイラストを完成させてくれました。彼女の感受性は、本当に僕のことをよく捉えてくれている。そしていつも超可愛い。
▪︎ジャケ画 - ベランダ
▪︎ふちさんのツイッター
https://twitter.com/fuchi_219?s=20
▪︎ふちさんのインスタ
https://www.instagram.com/a_teddy_chan/
【目論見】
今作が「2ndシングル『ベランダ』と対になっている」というのは、どういうことであるか。これは、2つのシングルが存在論的な意味において、同等の質量、存在としての濃度を有しており、両者は色濃く密接に結びついているが、同時に、無限のエネルギーによって反発し合い、永遠の距離を取っているということである。
まず第一に、作品内における表題曲とカップリング曲の関係性を揃えることで、『曲の重さ』の調整を図った。
2ndでは、1曲目の『ベランダ』に狂気を投げ込み、2曲目の『Sweet Smoker』で、心の中に僅かに残る優しさを探した。
翻って、4thの1曲目『心目当てのオレンジ』では、充満する心中の優しさに支配される自己像を描き、2曲目の『Bittersweet Harassment』には、狂愛を惜しみなく封じ込めた。
こうした目論見により、それぞれのシングルに、全体性として、はち切れぬばかりの二面性を抱えさせることに成功した。この極端な二面性が、それぞれ2曲の間で補償し合い、自然な形で統合されることで、それぞれのシングルが、アンビバレンスを有する複雑な人格を呈している。
第二に、さらにメタ的な視点に立てば、2ndと4thで表現された、2つの人格を入り混じらせた人格者、創造主として、『私』という究極の存在が姿を顕す。
すなわち、2ndと4thが、それぞれ各作品内において、1曲目と2曲目が絶妙に癒着し合いながらも対になっているという意味合いに加え、2ndと4thを、各シングルという大枠で見ても、その2つの作品は、互いに深く溶け合いながらも、永遠の距離を保ったものとして相反しているというわけである。
これらのことから分かるように、「2ndシングル『ベランダ』と対になっている」というのは、二重の意味を持っている。2つのシングルを、行ったり来たりしながら、みなさんには狂気に陥ってもらいたい。
【対構造の略図】
▪︎ 4thシングル『心目当てのオレンジ』
↕
▫︎ 2ndシングル『ベランダ』
▪︎ 4th - track 1 「心目当てのオレンジ」
↕
▫︎ 2nd - track 2 「Sweet Smoker」
▪︎ 4th - track 2「Bittersweet Harassment」
↕
▫︎ 2nd - track 1 「ベランダ」
【アンニュイに向かい合うふたり】
『ベランダ』では、タバコの煙がどろどろとしたハートの複合体で構成されており、これが第一のハートである。そして、女の子の肘とタバコの煙の輪郭をなぞると、第二のハートが浮かび上がる。
『心目当てのオレンジ』では、『ベランダ』の世界から、フッと風に吹かれ流れ込んできた花びらを男の子がキャッチしているが、この指先に第一のハートがある。そして、背景の煉瓦と肘の輪郭をなぞると、第二のハートが姿を顕す。
ふたりがいるベランダを見ていると、僕がハンガリーに住んでいた家のベランダを思い出す。ふちさん、とっても可愛い絵をどうもありがとう!
【総論】
4thシングル『心目当てのオレンジ』は、例によって、歪曲に歪曲を重ねた、優しくも過激なラブソングを2曲収めた作品である。私自身、聴くたびにある種の興奮を覚える。レコーディング、ミックスまでは自分で行い、マスタリングは、旧友であり、トラックメーカー/エンジニアとして広く活躍中のBeardにしていただいた。今作も他の作品と同様、宅録での制作である。(ベンジャミン・ミナミと共作した、3rdシングル『一夜にや』のみは、東京の"Cafe au Label STUDIO"でレコーディングしたが、、)
1曲目の「心目当てのオレンジ」は、「Sweet Smoker」と同じように、iPhoneのイヤホンマイクのみでレコーディングを行った。というのも、フッとよぎった僅かな感覚から、一気に完成のイメージが降ってきたので、あとからきちんと録り直すのでは間に合わず、今まさにこの瞬間に完成させる必要があるという強い直観に突き動かされたからである。
録る直前になってもメロディーと詩は確定しておらず、偶然性と運命に委ね、「録りながら作った」という作品となっている。このような制作方法ゆえに生み出された、ある種の不安定性は、聴くとすぐに感じられると思われる。尊くてなかなかいい、、思いの外、ポップなverseが展開された。
カップリング曲の「Bittersweet Harassment」は、リリースした作品としては、初めて、始めから終わりまで全て英語で書いた楽曲である。オーケストラな雰囲気をただ漂わせ、クラシックのサウンドを踏襲し、交響曲のような楽曲を目指した。1曲目の「心目当てのオレンジ」がかなりLo-Fiな感じになってしまったので、その罪意識から、2曲目はしっかりと作り込んだ。
ハラスメントというと、イケないことであるが、それを、こんなにも美しく、エレガントでロマンティックに描くことができるんだ、、、と我ながら自分の実力にやや恍惚な気分になった。これはエゴイズムとナルシズムである。
制作をしながら考えたのは、畢竟、ハラスメント的な行為も、全てはコミュニケーション学でいうところの「コンテキスト」に依存しているということである。Aという行為が、Aという行為自体でBであるわけではなく、その行為の意味は、全て相手との人間関係や取り巻く時間的・空間的状況、パーソナリティーなど、あらゆるコンテキストとの連関において、はじめて意味付けされるのではないか。ここにエロの本質があるような気がする。
英語のメロディーと詩が同時に降りてきたので、日本語が入り込む余地はまったくなかった。試しに、日本語に和訳してみたら、文字通り「卑劣なハラスメント作品」になってしまい、とてもおもしろかったので、下の【補遺】の章にて論ずることとする。
曲の中にある”hell”という単語は、通例、定冠詞のtheを伴わないが、この曲においては、一般的な意味合いではなく、僕自身が作り出した、特有の「地獄」という意味であるから、個人言語として定性が強まると考え、意図的に、いや、必然的に”the”を付すこととなった。この表現に潜む根源的な志向は、きっと、サドマゾヒズムである。
YouTubeで公開している『心目当てのオレンジ』のMVは、素朴なワンカットの作品である。味わいがある映像に仕上がった。映像編集は、2ndシングルの『ベランダ』のときにお世話になった上野大輔さんにしていただいた。楽曲とともに、チェックしていただけると幸いである。
【補遺】
▪︎Track1 『心目当てのオレンジ』 歌詞
僕はオレンジの髪になった
君が僕だけを見てくれるように
僕はオレンジの髪になった
君が僕だけを見てくれるように
僕はオレンジの髪になった
君が僕だけを見てくれるように僕はオレンジの髪になった
君が僕だけを見てくれるように
僕はオレンジの髪になった
君が僕だけを見てくれるように
僕はオレンジの髪になった
君が僕だけを見てくれるように
僕はオレンジの髪になった
君が僕だけを見てくれるように
ルルル
これまでの全ての苦悩が
それでも生きてきた甲斐があったと思えるような
そんな刹那の瞬間
あのとき君がくれたキスは
宇宙が始まるときから
すでに仕込まれてたような
そんな愛の瞬間
僕はオレンジの髪になった
君が僕だけを見てくれるように
君の心
君の身体に閉じ込められている
僕は心目当てだけど
君の身体も目当てにしないとな
そんな顔で僕を見ないで
嘘をつく僕もたまには
嘘をつかないときもある
実はね
僕はオレンジの髪になった
君が僕だけを見てくれるように
僕はオレンジの髪になった
君が僕だけを見てくれるように
僕はオレンジの髪になった
いつまでも君が忘れぬように
僕はオレンジの髪になった
君が僕だけを見てくれるように
ルルル
▪︎Track 2 『Bittersweet Harassment』
和訳付き(段落ごと)
Bittersweet Harassment
Please bring me to your hell
The hell I made
Let me kiss your secret
ビタースイートハラスメント
僕を君の地獄に連れて行って
僕が自分で作り出した地獄
君の秘密にキスでもさせて
Bittersweet Harassment
Please bring me to your hell
The hell I made
Let me kiss your secret
ビタースイートハラスメント
僕を君の地獄に連れて行って
僕が自分で作り出した地獄
君の秘密にキスでもさせて
You must be over 20
Now you can smoke legally
Why don’t you join us?
君はもうハタチになったよね
合法的に煙草を吸える
一緒にどう?
If you eat chocolates while smoking
Then you will feel the special taste of love
in you mouth
煙草を吸いながらそのチョコレートを食べたらね、
口の中は、苦くて甘い、恋の味がするだろうね
Bittersweet Harassment
Please bring me to your hell
The hell I made
Let me kiss your secret
ビタースイートハラスメント
僕を君の地獄に連れて行って
僕が自分で作り出した地獄
君の秘密にキスでもさせて
Bittersweet Harassment
Please bring me to your hell
The hell I made
Let me kiss your secret
ビタースイートハラスメント
僕を君の地獄に連れて行って
僕が自分で作り出した地獄
君の秘密にキスでもさせて
My love is very twisted
But no doubt it is true love
The truth is, love just has many aspects
僕の愛はひどく歪んでいる
けど、真実の愛であることは疑いようがない
ただ愛にいろんな側面があるだけさ
If not, this feeling is puzzling
But I can easily prove it
So after getting through this cigarette
Kiss me anyway
もしそうじゃないのなら、
この気持ちに説明がつかない
僕なら簡単に証明できる
だからこの煙草を吸い終わったら
とりあえずキスでもしてね
Bittersweet Harassment
Please bring me to your hell
The hell I made
Let me kiss your secret
ビタースイートハラスメント
僕を君の地獄に連れて行って
僕が自分で作り出した地獄
君の秘密にキスでもさせて
Bittersweet Harassment
Please bring me to your hell
The hell I made
Let me kiss your secret
ビタースイートハラスメント
僕を君の地獄に連れて行って
僕が自分で作り出した地獄
君の秘密にキスでもさせて
Bittersweet Harassment
Please bring me to your hell
Bittersweet Harassment
The hell I made
Let me kiss your secret
The hell I made
Let me kiss your secret
The hell I made
Let me kiss your secret
The hell I made
Let me kiss your secret
La La La La La
Bittersweet Bittersweet
It's Love Love Love
Love Love Love
Bittersweet Bittersweet
Bittersweet Bittersweet
Bittersweet Bittersweet
Bittersweet Bittersweet
▪︎『心目当てのオレンジ』弾き語り音源
【CREDITS】
▪︎MUSIC
All Music & Lyrics : Suzunosuke Nakashima
Recording & Mix Engineer : Suzunosuke Nakashima
Mastering Engineer : Beard
▪︎MUSIC VIDEO
Director : Suzunosuke Nakashima
Editor : Daisuke Ueno
Cast : Suzunosuke Nakashima
【More Info】
中島涼之介オフィシャルリンク